もう少しだけ
シルフが水の音がするといった。
だから私も耳を澄ませる。
さらさら、こぽこぽ。
微かに風の音に紛れて音がする。
小さな小川のようなものがあるのだろうか?
そう思っているとそこでシルフが私の手を引いて歩きだした。
「この先に池か湖があるかも。そういったものがあるらしいって話は昨日、クロトから聞いた」
「そうなの。湖……見てみたいかな」
「だったら水の音を追いかけて行けばいいよ。きっとその湖か池に辿り着けるよ」
こうして私達は手を繋ぎながら、音のする方に歩いて行く。
風が爽やかに通り過ぎる中、水の音に耳を澄ませて進んでいく。
段々に音が大きくなっていく感覚を覚えると同時に、“水”の匂いがする。
うっすらと湿った冷たい空気が頬を撫ぜる。
もうすぐ水辺だろうか?
そんな疑問を浮かべた所で目の間が開ける。
木々が湖との境界を現すように伸びているも、湖の中までは進めないでいる。
だから湖の上には大きな空が広がっている。
降り注ぐ日差しは柔らかく、風に起こされたさざ波を白く彩っている。
けれどそれは中央の一部で、他のなだらか水面は雲一つない青空を、岸辺は木々の緑を鏡のようにも映しこんでいる。
鮮やかに彩られたそれを、私は茫然と見てしまう。
「都市の景色と全然違うわ」
「自然は雄大だね。……あそこに細い道があって、この湖を一周できるようだ。それにあそこの辺の岸では釣りもできそうだ。美味しい湖の魚が手に入る」
「それは楽しそうかも。……あそこには“カルドベリー”に小さいけれど黄色い“ルナの実”もあるわ。こんな水辺にあるのね」
「じゃあまずは、あそこにある果実を先に摘みに行こうか」
といった話になり果実を摘みに行く。
よくしている果実ばかりだが、もしかしたなら目を凝らすと私の知らないこの地方の果実もあるのかもしれない。
後で村長さんに聞いて、この地域の珍しいものがないかを聞いてみた方がいいかもしれない。
そう思って周りを見回すと、所々に見覚えのある香草などがあるのに気づく。
キノコの類も沢山見かけたが、どれが食用なのかは分からなかった。
ピンクと紫の縞模様であったり、水色と白の縞模様であったり……どことなく、毒のありそうな物が多々あった。
こういったキノコの類も食事系のケーキに使えるので、食べられるものであれば手に入れたい。
だが素人が手にするのは危険だろうから、市のような場所で購入した方がいいだろう。
来週は市でキノコの類を探してみよう、そう私は思いながら進んでいくと、“カルドベリー”が見える。
水際に、特にうれた果実が実っている。
うっすらと青いその果実。
私はその一粒に手を伸ばした。
だがあともう少しの所で届かない。
「うーん、もう少しだけ」
「リズ、危ない。湖に落ちるよ!」
「その時はシルフにお願いするわ、というのは冗談で、ほら、採れたわ。美味しそうな……あ……」
そこで、これくらいならば大丈夫だろうと思っていた水際の私が踏みしめた場所が崩れ落ちる。
慌てて私はその場から引こうとして、そんな私に驚いたようにシルフが手を伸ばす。
けれど、その時にはもうシルフも湖の方に倒れ掛かっており、そのまま私達は、湖の中に落ちてしまったのだった。
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