ケーキを作る
こうしてシルフと別れた私は、久しぶりにケーキを焼くことにした。
そこで私付きのメイドであるヘレンが、
「今の方はどなたですか?」
「……都市でこっそり家を出て街に出て遊びに行った時に出会った、シルフというお友達よ」
「……なるほど、彼が」
小さく呟いたメイドのヘレン。
後ろで一つに三つ編みした銀髪に、薄い水色の瞳をした彼女は、無表情……の傾向がある美少女である。
だがこう見えて彼女は負けず嫌いな所があり、その気質故に努力を怠らず、完璧なメイドである。
それこそ彼女一人いれば料理から、服の裁縫、魔法まで、全てこなせてしまう。
だがここしばらくずっと彼女は悔しい思いをしていたらしい。
それは私を悪役令嬢にしてしまった事も含まれる。
ただ、このヘレン、その前から何か悩んでいたようだが、私にはよく分からない。
と、そこで、
「それで明日彼が私の家の前に来るから、その時、ケーキを渡そうと思うの。材料は別荘にあるかしら」
「料理人に地元の食材をそろえるよう伝えてあります」
「それなら大丈夫ね。久しぶりに作りましょうか。もちろん、ヘレンの分もあるわよ」
そう私が告げると無表情ながら嬉しそうなヘレン。
こうしてついて早々、エプロンをして私は、ケーキを作り始める。
この地方特産の“マレレオレンジ”という果実の香るふわふわのケーキがいいかなと、卵白をせっせと泡立てて(この時は青い光が出る)、小麦粉などを混ぜて(この時は虹色の光が出る)、オーブンで焼く。
魔力の炎でこんがりきつね色に焼けたケーキを覚まして切り分けて、
「出来たっと。まずみんなで味見をしよう」
私は出来上がったケーキを見ながら、そう呟いたのだった。
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