幸せになる事
これからどうするのかと、シルフに私は聞かれた。
だから私は、
「別荘でしばらくゆっくりすることしか考えていなかったわ。そう、しばらくゆっくりして、地味な仕返しをしようかと思うの」
「一番の仕返しは、リズが幸せになる事だぞ」
「分かっているわよそんな事。でも、何をすればいいのか分からないわ」
呟いた私に、シルフは、
「何か好きな事でもやったらどうだ?」
「好きな事、ね。好きというよりはやっていて楽しい事はいっぱいあるわ。でも今はそのどれも、やる気がないの」
「そうなのか……前に貰ったケーキは美味しかったから、また食べられないかなと思ったが……無理か?」
シルフにお願いするように問いかけられて私は、確かに今はすることも無いし、シルフも食べたいし喜んでくれるなら作ってもいいかもしれないと私は思った。
公爵家には専用の菓子職人がいるが、それでも教養という意味で、作り方などを教わったりもしていた。
うちの菓子職人には、筋がいい、公爵令嬢でなかったら弟子にしたいくらいだとお世辞を言われたこともある。
でも菓子職人の人が日々努力をして新しいレシピを考案したりしているのを見て、私はお菓子にそこまで情熱はそそげないと思いながら見ていたのを覚えている。
かといって、私は何をしたいのだろう?
何でも大抵のものはある程度器用にできてしまう分、“どれ”と決めにくい。
けれどこれを機会にお菓子作りを極めてもいいかもと思いながら、
「じゃあシルフ、いつ頃お菓子を渡せばいいかしら」
「明日、リズの別荘に行くよ。その時お菓子を貰う代わりに、遊びに来たここ周辺を案内するよ」
「シルフはこの辺りに詳しいの?」
「全然。でも二日前に来たから、二日分はリズよりも知っているよ」
そう冗談めかして、シルフは私に言うのだった。
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