閑話-メイドは見た
ヘレンはリズ付きのメイドである。
だが公爵令嬢である彼女を守るために、ある程度の体術から魔法の訓練までを受けている。
また危険な状況にリズが陥らないよう、情報収集をするよう申し付けられている。
ただし、今回はこの別荘に来た理由もあり、ある程度はリズの自由にさせるようにと命令を受けていた。
だからある程度ヘレンはリズを自由にさせようと思っており、あのいかがわしい“シルフ”と一緒に行動させたのだ。
それがリズの望みだったから。
あの“シルフ”という人物は都市にいた時から知っていた。
だが、ヘレンがかの人物の素性を探ろうとしても、いつも撒かれてしまう。
そんな怪しい人物がこの場所に“偶然”居合わせるだろうか?
「それは怪しいですね。村おこしのお手伝いはよろしいですが、その“シルフ”とその知り合いというお二方が何者なのか、私の目で確かめさせていただきます」
そう呟きながら、すでに情報を収集済みのその二人の家に、深夜、ヘレンは潜入する。
目的は、その家の人間から話を聞き出す事、ではない。
その家の人間が何者か、持ち物から情報を収集するのである。
だから深夜の方が都合が良く、また、相手との接触がないため危険が少ない……はずだった。
それは、ヘレンがその家に潜入してすぐの事だった。
こぎれいな余り物のない家を見ていると……背後で気配がした。
すぐに距離を取ろうとしたが、片手と口を抑えられ、
「どちら様かな?」
男性の声がする。
またすぐに女性の声で、
「あら、この方、リズのおつきのメイドさんじゃないかしら。ほら、リズと昼間話ていた時に、様子を見に来ていましたから」
その話に、どうしてこの私が気付かれたとヘレンは思うと同時に、そこで拘束が外された。
すぐさま距離を取ったヘレンに、その声をかけたこの家の主達、サナとクロトが、
「こんな深夜に勝手に他人の家に入るのは、あまりよろしい事ではありませんよ?」
クロトが笑いながらヘレンに告げて、それから、ヘレンはクロトとサナから衝撃の事実を告げられたのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




