お願いが気になるから
こんこんとこの家の扉を叩く音がした。
新たな人物の登場に、クロトがびくりと体を震わせる。
「ま、まさか、父や母達が……」
「シルフさ……まさか今までのはただの時間稼ぎだったのですか!?」
サナが非難するようにシルフに言うも、シルフは首をかしげて、
「俺はまだ伝えてないぞ」
「では、誰が……こんなこの村に来たばかりの人間の家を訪れるというのですか!?」
クロトが悲鳴を上げるように言うが、すぐにシルフは呆れたように、
「ここは無人の村じゃないだろう? 誰か村の人が来たかもしれないじゃないか」
「う、うぐ、だが、変装している可能性だって……」
「相変わらず慎重すぎるな、クロトは。だからこうすればいいんだ。『どちら様ですか~』」
そこでシルフがそのドアの方に向かって、声をかけた。
あっさり誰かと聞いたシルフに、サナとクロトがまたしても凍り付いたように動かなくなる。
駆け落ちらしいので連れ戻されるのが嫌なのかもしれないが、少しびくびくしすぎなのではと私は思った。と、
「こんにちは、私は村長のカルです。今日は新しく引っ越してきた、サナさんとクロトさんに、お願いがあってまいりました。今はお忙しいですか? 客人がいるようでしたが……もしお忙しいようでしたら後でもう一度参りますが」
その言葉にサナとクロトが顔を見合わせて、サナが、
「知人が遊びに来てくれているだけです。え、えっと、まずはお茶の用意を……クロト、村長さんを迎えてあげて。シルフさ……とリズ様はどうしましょうか」
「様付けはいらないわ。普通に他の人と話したいし」
「わ、分かりました、どうしましょうか」
と、サナが焦ったように言うとシルフが、
「お願いが気になるから一緒に聞いていてもいいかな?」
こうして私達は一緒に話を聞くことになったのだった。
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