甘くて美味しいシロップ
こうして家の中に入れてもらった私は、調理場に向かう。
こじんまりとしているけれど、オーブンなどの必要最低限の道具やらなにやらはそろっているようだった。
まさかこんな事になるとは、と思う。
シルフがあんなことを言い出すなんて全然私は予想をしていなかった。
とはいえ試しに私が作ってみれば納得できるだろう。
でも何を作ろうかな、と私は思って、
「調味料などを見せて頂いてもよろしいですか?」
「いいですよ。と言ってもまだそんなに材料は揃っていませんが」
そうサナが言って、冷蔵魔法庫の中にある地元の野菜やら果物、ミルク、卵等々を見せてくれる。
なんでも今朝買ってきたばかりの新鮮なものであるらしい。
他にも挽きたての小麦なども手に入っているようだ。
そこでサナが困ったように、
「ただ砂糖が丁度品切れをしていて、この地方の地元の甘味料である“アクナットシロップ”というものしかないのですがよろしいでしょうか?」
「……どんなものかしら。私も初めて聞くわ」
「私もここに来て初めて知りました。少し癖がありますが、それもいいと言う方もいるようです。私もクロトも結構好きな味ですよ」
との事で、そのシロップを味見することに。
なんでも大きなとげのような形をした植物から採れるシロップだそうだ。
その甘みを利用してお酒などもこの地方では作られているらしい。
そう言った悦明を聞きながら、琥珀色のそのシロップを私は口にする。
確かに微かに香りはあるが、甘くて美味しいシロップだ。
これを使って簡単に作れるお菓子。
丁度、私の目の前には小さなカップ型や蒸し器のようなものがある。
何でも以前この家を借りて行った人が置いていったものだそうだ。
「蒸しケーキなんてどうかしら?」
そう私が提案したのだった。
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