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恋は苦くも荒療治

作者: 鴻山影人

フィクションです(笑)

 何気ない一言は出るけど、大事な時に大事な言葉は出ない。

 そんなことはよくあることだ。


「好きです。付き合ってください!!」


 僕はそんな男になりたくないと心に決めて、君に想いを伝えることができた。

 君はそんな僕に驚いたような顔になって、僕に何か言おうと迷い始めた。


「ごめんなさい!」


 僕の告白に躊躇することなく謝罪をされてしまう。

 あっさりと、バッサリと、しっかりと断られた。


 少しだけ時の流れが止まったような感覚に陥る。

 好きになってどれくらい時間、君に焦がれていたのか。

 きっと君は知らない。


「そっか。なんかこっちこそごめん」


「いいよ。……これからも友達になれたらいいかな?」


 君の謝罪に僕も謝罪を返したけど、君は僕の謝罪に上乗せはしてくれない。

 傲慢な文句なのは分かってる。

 だけど、そうやって気持ちがどこかに当たらないと気が済まなくなっている。


 どこかで上手くいくと信じた自分。

 付き合ってくれないかな、とわずかな可能性でも信じた自分。

 もしも駄目だとしても折れることは無いと自分を信じた自分。

 ここで言わなければ男が廃るという言葉を信じた自分。

 『当たって砕けろ』は決して砕けるための諺ではないと信じた自分。

 どの自分もが現実を思い知らされたこの瞬間に心の支えはどこかへ消えたような気分になってしまうんだ。

 そして、僕が思っているような君ではない君はやはり僕の思うような言葉は返してくれはしなかった。


「もちろん。これからもよろしく!」


「うん! ありがとう」


 君は笑ってくれる。

 でも、その笑顔は本当に感謝を表してるのだろうか。

 もしかしたら、友達になるという建前に応じた僕に改めて嫌悪感を持っているかもしれない。

 聞いてみたい。

 だけど、聞いてはいけない。

 その抑止力は自然と沸き起こって僕のたまらず走り出そうな好奇心を力強く押さえつけてくれる。


「じゃあ、私、そろそろ行くね」


「あ、ああ……また」


 手を振って僕に背を向けて走っていく君。

 そこでもう一度、駄目だったことを自覚する。

 涙よりも力が抜ける方が早い。

 というか涙を出す力も無い。


 これが現実なんだろう。

 そうだよ、頑張っても報われないのが人の気持ちさ。

 僕はそうやって達観した思いに自分の心を浸し始める。

 現実を見ているようで見ていない。

 まるで、というか現実逃避そのものを都合よく現実逃避と解釈しようとしたくない。

 一種のプライドかもしれない。


「はぁ~!」


 大げさに、まるで誰かに聞いて欲しいような音量で溜め息をついてみるが、どうせ僕一人だ。

 誰も反応するような人間は居やしない。


 きっと、僕の思い込みだったんだ。

 僕は僕の思ったよりも君のお気に入りにはなれていなかったんだ。

 仕方ない、そう仕方ない。


 今度、恋をする時は慎重になろう。

 もっと相手のことを考えてあげよう。


 とりあえず、この失敗はとっとと反省して気持ちを捨てるんだ。


 負の感情に溢れた自分の心を抉り、救済を求める。

 生きるってそういうことかもしれない。

 哲学は時に僕を慰めてくれるのだと知った。



ご感想、お待ちしてます(汗)

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― 新着の感想 ―
[良い点]  錯覚を起こすことはあります。 [一言]  友達になろうは相手の気持ちを最大限に汲み取った、そういう発想はなかったです。
2016/05/01 10:08 退会済み
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