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 あまねとは家が近かった。

 家が近いから、小学校の集団登校でいっしょだったのだ。同じ地区で同い年が彼女だけだったから、私達は自然にしゃべるようになっていた。


 あまねは昔から、明るくて気が利くこどもだった。まわりをよくみている。

 一方、私はそんなあまねの影に隠れる、地味で引っ込み思案なこどもだった。よくこれで、友情が続いたものだ。

 高校が別だったのがよかったのかもしれない。

 思春期のあの、とくに面倒な時期にほどよく距離があったから、大学がまたいっしょになったいま、こうしてそばにいれるのだと思う。


 今の私はそこそこに垢抜けた、清楚そうな外見をしている。

 そして、平均的な顔立ちだった。可愛すぎず、美しすぎない。声をかけやすい顔。

 身の丈を弁えた明るさと、計算した素直さ。それは、目立つ美人やかわいい子に声をかけられないくせに、平均より劣った容姿の女の子を馬鹿にしている男子大学生に、ちょうど良かったようだった。


 簡単に手に入る彼女。美しすぎず、連れ歩いて恥ずかしくない程度の。


 お陰で付き合う相手に事欠かなかった。


 男の人に触れるたび、あまねの柔らかさと比べてしまう。

 骨ばった大きな手に、彼女の細くてやわらかな手を重ねる。

 震えながらついばむ唇がかさついていれば、あまののふっくらとした唇を思い出した。

 撫でた髪の毛の固さに苛立ちながら、あまねの猫っ毛を思い浮かべて微笑んだ。

 

 どうしたって、彼らはあまねに似ていなかった。似ていないから絶望するけれど、抱きしめることはできた。

 だって彼らになら、嫌われようとかまわなかったから。


 あまねが私のそばから居なくなること、それだけが私は怖かった。


 私はずっと、あまねが好きだったのだ。だから彼女が私に向けるものが、友愛でしかないことが悲しかった。

 だって、彼女は同性が好きなのに。

 私だけを、私としてしかみてくれない。


 あまねにとって、私は特別なのだろう。けれど、いくら願ったって、いちばんにはなれないのだ。

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