Mな彼と腐れ縁な私 2
続編です。
「ずっとハルアキ君の事が好きでした。」
放課後の学校、人気のない校舎裏。
天気は快晴で空にはいくつか雲が浮いている。
風も涼しくそよいで、まさに、絶好の告白日和だ。
こんな気持ちの良い日ならどんな事もうまく行くような気がする。
「ハルアキ君、今恋人いないって聞きました。私と・・・付き合って下さい!!」
潤んだ瞳と赤くなった頬、胸の前で固く握りしめられた両手が彼女の緊張を伝えてくる。
声も僅かに震えているように聞こえた。
「ねぇ、『ずっと』ってどのくらい?」
「えっ・・・・?。え・・・・っと、1年の頃から・・・。」
「1年のいつ?」
「え・・・あの・・、入学式でハルアキ君を見た時から・・・。」
「今、7月だから・・・1年と3カ月の間好きって事だよね。」
「あ・・・・・・そう、です。」
「それって、『ずっと』とは言わないよね。」
「え・・・?あの・・・?」
ハルアキの質問の意図が分からなくて、彼女は戸惑っているようだ。
ほとんど『え』と『あの』しか言えてない。
「1年と3カ月なんて『最近』のことで、『ずっと』とは言えないんじゃないかな。」
「そ、そうかもしれないけど、私はハルアキ君の事が好きで・・・。」
「うん、その気持ちは有難いけど。俺、そんな短い期間の『好き』な人とは付き合う気ないんだ。ゴメンネ。」
清々しい笑顔と軽い言葉からは、謝罪の気持ちが1ミクロンも籠ってないことが伺える。
「それなら、どのくらいハルアキ君を思っていたら良いの?」
大きな瞳に涙を溜めながら彼女は聞いた。なかなかガッツのある子だ。
彼女のが振られた理由。
短い時間の『好き』がダメなら、どれくらいの期間『好き』なら良いのだろうか。
3年・・・とか?それなら、入学から卒業まで好きでいたらギリギリ3年経過できる。
つまり、卒業式に告白すれば可能性があるかもしれない。
頑張れ彼女!
「15年。」
「えっ?」
「15年。」
大事な事だから2回言いましたってか。
いやいや、常識的に考えて無理でしょう、その年数は。
だってハルアキ現在17歳だし。
2歳の時から好きでしたなんて、いるわけない。
実現不可能な数字を聞いた彼女はとうとう泣きながら走り去ってしまった。
「さてと・・・。トウカ、今日はもう帰れるの?」
「・・・・・・あんた、最低ね。」
私が、覗いていたのに気付いていたのだろう。ごくごく普通にハルアキは声をかけて来た。
どうしてだか、ハルアキは私が近くに来るとほぼ100%感知されるのでセンサーでもついているのかと疑っている。
だから、ハルアキは私が盗み聞きしている事に気付いていると思っていたので驚きはしない。
「15年好きとか現時点で付き合える可能性0じゃん。」
「まあ、そうだけど。それくらいの年数を乗り越えられないようじゃあねぇ。」
「15年を『それくらい』って・・・。」
「だって、俺ならもっと長い間でも思い続けられるよ?」
「あんたはそうだったとしても、他は違うんだよ。毎回毎回、告白して来た相手を泣かせて、少しは罪悪感を感じなさいよ。」
そう、ハルアキが告白されるのは今回が初めてではない。
幼稚園・・・いや、保育園からかな。最低でも月2回。多い時は週1ぐらいで告白されていた気がする。
年上のお姉さまから幼女、ギャルから清楚、たま~にメンズなど、ありとあらゆる人から告白をされているが、容赦なく断っている。そして高確率で泣かせている。
あまりの酷さに、こいつドMどころか真性ドSなんじゃないかと思う事もあるくらいの言葉の暴力を行使している。
こんなデリカシーの欠片もない男を好きになるなんて彼女ら(彼ら)も可哀想に。
「罪悪感ねぇ・・・。」
しかし、本人に悪びれた様子は一切ない。
説教している私が、バカみたいだ。
「・・・・もういいや。帰る。」
家時に着く為、歩き出した私にハルアキが着いてきて隣に並んで歩く。
「まったく、ハルアキに彼女が出来る日は来るのかね。今日の子だって可愛かったのにもったいない。」
「どんな人でもトウカの魅力には敵わないよ。」
そうだった、ハルアキはドMだったね。
確かに今日の彼女は守ってあげたくなるような雰囲気で、踏みつけて罵声を浴びせ、虐げるような気質は欠片もなさそうだった。
「私も好んで暴力振るっているわけじゃないんだけど。」
そう、私はSではない。いたってノーマルだ。
しかし、大抵ハルアキに根負けし、願いどおりに暴力や暴言を言う事になってしまう。
「そうだとしても、俺はトウカが好きだよ。」
結果的にこの綺麗な顔の持ち主を痛めつけることが出来たのが幼馴染の私だけだったってことなんだろうね。
(・・・・くそ変態ドM。)
そう思ったが、言ったら喜びそうなので黙って心の中だけに留めておいた。
次はハルアキ君の視点での話を書きたいと思ってます。