球技大会決めごと?
「おはようございます」
私は、玄関を開けて中に入る。
「詩織、どうしたの?」
お母さんが慌てて出てきた。
「お母さんにお願いがあるの」
「何?」
「突然なんだけど、家の鍵を変更してもらって欲しいんだ」
私がそう伝えると。
「本当に急だね」
「うん。ちょっとトラブっちゃって、護の先輩に合鍵作られてしまって…。挙げ句の果てに、勝手に入ってきちゃったから…。ちょっと怖いから…」
私は、苦笑いする。
「そう、それは嫌だね。わかったわ。じゃあ、今の鍵かして、大家さんに話て、今日中に鍵の交換してもらうね」
私は、お母さんに鍵を渡す。
「お願いいます」
私はお母さんに一礼して、学校に向かった、
「おはよう。昨日はごめんね」
里沙と忍ちゃんに言う。
「大丈夫なの?」
「うん。もう、解決したから…」
私がいうと。
「そう」
里沙が、笑顔でいう。
「何、何?」
忍ちゃんが、興味津々で聞いてくる。
「エッと…」
私が言い淀んでると。
「ホームルーム始めるぞ」
担任の声が木霊した。
「今日は、球技大会の種目決めをするぞ。種目は、バスケ、バレー、テニスだ。好きな種目に記入しろ」
「詩織は、バスケだよね。あたしもバスケにしようっと…」
里沙が言う。
私は、用紙のバスケ欄に記入する。
「今日から、球技大会までの間、各自練習しろよ」
と担任の声。
放課後。
とりあえず、球技大会の練習に出る。
「詩織が、キャプテンだからね」
エッ…。
「なんで?」
「このメンバーで、本格にやってるの詩織だけだから」
里沙が、ニコニコしながら言う。
ちょっと待って…。
なんで、里沙が知ってるの?
私が、キョトンとしてると。
「詩織以外のメンバーは、他の部だよ」
って、付け足して言う。
あれ、まあ。
「…ってことで、詩織がキャプテン」
里沙以外のメンバーも頷く。
「じゃあ、とりあえず、柔軟しようか…」
私が指示を出す。
「体、温まったかな?」
私が聞くと頷き返してくれた。
「後、手首の柔軟しておこう」
私は、手を組んで手首をグルグル回す。
「二人一組になって、パス練習しよう」
基本練習を行う。
私は、一人溢れたので、ドリブルの練習をする。
懐かしいなぁ…。
前は、こんな練習一杯してたんだよなぁ。
基本が大切!
何て言いながら…。
「詩織、何時までやらせるつもり?」
思い出に浸っていたら、里沙に突っ込まれた。
「ごめん。次、シュート練習しようか」
私がそう言うと、ゴール前でシュート練習を始める。
私は、スリーポイントシュートを放つ。
でも、リングに嫌われる。
久し振りだから、なまってるかも…。
次から次へとシュートを打つ。
集中しながら打ち込んでいく。
命中率が、上がっていく。
「詩織、すごい」
横から、里沙の声。
「ありがと」
私はそれだけ言って、ボールを二三度バウンドさせる。
リング横からシュートを打つ。
この位置からのシュートは、前から苦手だった。
やっぱりはずしたか…。
「おしい!」
クラスメートの声で、集中力が途絶えた。
何時の間に集まったのだろう。
私の周りには、クラス入り乱れて集まっていた。
「ウワー、このギャラリーどうしたの?」
私は、近くに居た里沙に聞く。
「何言ってるの。詩織が、引き付けたんでしょ」
と、飽きれ顔の里沙。
エーーーーーッ。
私、そんなに集中してたの。
「…ッと、そろそろ交代の時間だね。クールダウンして上がろう」
私は、メンバーに声をかけて、クールダウンさせていく。
「今日は、これで解散ね。」
私は、そう言って更衣室に行く。
私と里沙は、着替えを済ますと生徒会室に向かっていた。
「ねぇ、里沙。審判とかは、部の関係者にやってもらいたいんだけど、その対応って出来てる」
「まだ。明日にも部長に招集かけて、頼んでみる」
「そうだね。明日の昼放課にも、集めれたらいいんだけど…」
私達は、色々と話ながら、生徒会室に入る。
「遅くなってごめん」
けど、そこに居たのは、佐久間君と忍ちゃんだけだった。
「他のメンバーは?」
「それぞれ、球技大会の練習」
そっか…。
と、思ってるところに。
トゥルルル…トゥルルル…。
携帯が鳴り出す。
自分のだった。
私は、慌てて電話に出る。
「もしもし…」
『詩織?学校の帰りに家に寄りなさいよ。新しい家の鍵を渡すから』
「わかった」
『詩織が、遅くなるようなら、護君でもいいからね』
「はーい」
『じゃあ、ね』
そう言って、電話を切る。
そのまま、護にメールする。
“護へ。
玄関の鍵、交換してもらったから、私が帰っいなかったら、実家に行って新しい鍵をもらってきてください。
詩織“
と、文面を打って送信した。
「…で、今日はそうする?」
「どうする?って、審判の事と本部の設置場所。それから、進行の仕方とか、色々あるけど?」
私がそう答えると。
「そっか…。まだ、決める事があったんだね」
忍ちゃんが言う。
「とりあえず、揃うまでに決められる事だけやって、納得してもらってから、一気に片付けよう」
それだけ言って、さっさと取り組んだ。
「遅くなって悪い」
凌也と拓人君が入ってくる。
「ううん、大丈夫。…で、これが決まったことなんだけど…」
私は、二人にメモをしておいた紙を見せる。
二人が目を通すと。
「いいんじゃねぇ」
「いいと思う」
「じゃあ、明日の昼放課に部長を呼んで話し合いでもいい?」
「いいよ」
「本部を生徒会室にするのは、ちょっと大変じゃないか?」
そうかも。
「じゃあ、中庭に作る?」
柚樹ちゃんが言う。
「中庭か…」
「そうだね。中庭なら、動きやすいだろうし…」
忍ちゃんが、賛成する。
「まぁ、何をするにもその場所が一番かもな…」
「じゃあ、本部は中庭にしようか」
全員が、頷いた。
「メンバーが揃ってるから聞くけど、球技大会でメンバーからはずれてる人いる?」
誰も手をあげない。
どうしようか…。
私は、メモ帳を出して、競技を書く。
「忍ちゃんは、何に出るの?」
「私は、バレーだよ」
忍ちゃんは、バレーと…。
「柚樹ちゃんは?」
「僕は、テニス」
テニスッと…。
「拓人君は?」
「俺もテニス」
「佐久間君は?」
「俺、バレー」
「凌也は、バスケだったよね」
「ああ」
私と里沙は、バスケっと…。
見事にバラけてるけど、これを考慮して、総当たりせんを考えないといけないんだ。
本部に誰も居ない状態だけは、避けたい。
っと、時計を見やると八時になる。
ワー、ヤバイ。
「今日は、ここまでにしようか?明日は、試合の組み合わせね」
「わかった。じゃあな」
って、皆さっさと帰り始める。
私も帰り支度をして、鍵をする。
職員室に鍵を返して、家路についた。
校門を出たところで、背後から抱きつかれた。
「キャーーーー」
私は、思いっきり叫んだ。
「ちょっと、待ってって…」
私は、声を聞いて振り返る。
「護…」
護が、あたふたしてる。
「ごめん。今、本当にビックリしたから…」
私が言うと。
「オレこそごめん。こんなに驚くなんて、思ってなかったから…。って言うか、オレ、メールしたはずなんだけど…」
エッ…嘘…。
私は、慌てて鞄に入ってる携帯を取り出して、確認する。
着信メールにランプが点滅してる。
「ごめん。気付かなかった」
私は、落ち込むように言う。
「仕方ないよ。ほら、鞄持ってやるよ」
そう言って、護が鞄を持ってくれる。
「ありがとう。鍵、もらってきてくれた?」
「うん。ほら、新しい鍵」
護がそう言って、真新しい鍵を渡してくれる。
「夕飯どうする?今から準備する?」
私が聞くと。
「それなんだけど。お義母さんが食べにおいでって言ってたぞ」
「本当!だったら、食べに行こうか。護がよければだけど…」
私は、護の顔を伺いながら言う。
「オレもそれでいいよ」
「じゃあ、電話するね」
私は、実家に電話する。
『はい、水沢です』
コール二回で、隆弥兄が出た。
「隆弥兄。詩織だけど、お母さんに今から行くからって言っといて」
『わかった。そこに護も居るのか?』
隆弥兄に言われて。
「居るよ」
『ちょっと、変われ』
私は、護に携帯を渡す。
護は、不思議そうな顔をする。
「隆弥兄が、変わって欲しいって」
護の顔が、強張る。
「もしもし…」
護が、恐る恐る電話に出る。
そんなにいけない事したのかな?
護の声のトーンが、低くなる。
私は、そんな護を見つめる事しか出来なかった。