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侵入者

「詩織。オレの我儘聞いてくれるか?」

と、突然聞いてきた。

「うん。私で出来る事なら…」

「詩織。絶対にオレから離れるな。オレが愛してるには、お前だけだ!」

エッ…。

それって、我儘?

「お前が居るだけで、オレは頑張れる。だから、絶対に黙っていなくならないでくれ」

護が、力強く抱き締めてくる。

その時。

ピンポーン。

玄関のチャイムが鳴る。

こんな時間に……。

ピンポーン。

私達は、顔を見合わせる。

「玉城くーん。居るんでしょ?」

って、声が…。

エッ…。

なんで…。

私は、護を見る。

護も首を振る。

「玉城くーん」

甘ったるしい声。

玄関で、ガッチャって音がする。

エッ…。

嘘でしょ。

「お邪魔しまーす」

玄関から、声がする。

「玉城くん」

護の部屋のドアが開く音がする。

やだ。

何であの人達が、入ってこれるの…。

私は、護にしがみついた。

「大丈夫。オレが何とかするから…」

護が、私を安心させるように言う。

「あれ?居ないよ。妹さんに聞いてみようか…」

足音が、こっちに近付いてくる。

私は、怖くて体が震える。

護が、私の身体を力強く抱き締めてくれる。

それだけで、震えが収まっていく。

ノックもせずにドアが開く。

「妹さん。お兄さんどこに行ったか知ってる?」

私は、彼女達に背を向けていたので、表情までは、わからなかった。

「先輩方。何か、ご用ですか?」

落ち着き払った護の声。

「…って、玉城くん。妹さんと何をして…」

二人の戸惑った声。

「妹って…。昨日も言いましたけど、彼女は妹じゃなくて婚約者です。先輩方、人の部屋に入るのにノックもしないなんて無礼極まりないですね。それに家主の許可なく入ってくるとは、不法侵入です。大事になる前に帰ってください。合鍵は、返してくださいね」

護が、何時も以上に強い口調で言う。

「どうして…」

御姉様達が戸惑ってる。

「どうして?オレは、こいつしか興味ありませんので、さっさと帰ってください。それとも、このまま見ていくんですか?」

そう言ったかと思うと、私の顎を掴み口付けしてくる。

「…ん…」

私は、恥ずかしくなって頬が熱くなる。

「わかったわよ」

「鍵も、そこの机に置いてください」

護の声音が響く。

チャリッ…。

鍵の音がする。

そして、遠ざかっていく足音。

二人は、帰って行った。

「いつの間に合い鍵なんか作ったんだろう?」

護が、不思議そうに言う。

「玄関の鍵、変えような。また、先輩達に入られるのは嫌だしな」

私は頷いた。

「ごめんな。オレのせいで、怖い思いさせて…」

護が落ち込んでる。

「一様、お母さんに朝電話しておくね。大屋さんの許可とかいると思うし。立ち会いしないといけないだろうから…」

「そうだな。お義母さんには迷惑かけるけど、頼めるかな」

「うん。さっきは、ありがとう」

私は、護にしがみついて言う。

「何が?」

「妹じゃなくて、婚約者だって言ってくれて…」

「当たり前じゃんか。嘘ついてないし…」

私は、護の唇に自分の唇を重ねる。

「詩織…」

「護。私…護と離れたくない…。一杯、愛されたい。これが、今の私の気持ちだから…」

素直な気持ちが、口から発せられる。

「詩織…。お前の我儘は、ちゃんと受け止めてやるから…。だから、オレに全部話せよな」

護の力強い言葉に私は、頷いた。

それに加えて、安心してる自分がいる。

護の事、改めて信じてみようって思う。

「詩織。眠かったら寝ていいぞ。傍に居てやるから…」

護の優しい声。

私は、その声に従った。


ふと、目が覚める。

横を見ると、護がスースーと寝息をたてていた。

私は、護を起こさない様にベッドから抜け出る。

「詩織…」

護が、私の手首を掴む。

「どこに行くの?」

寝ぼけ眼の護に。

「喉が渇いたから、お水を飲みに行こうと思って…」

私は、呟くように言う。

「オレも一緒に…」

護が起きようとする。

「いいよ。すぐ戻るから、護は寝てて」

私は優しく言う。

「わかった」

護は、また規則正しい寝息をしていた。

私は、服を着てダイニングに行き冷蔵庫に入ってるペットボトルの水を飲む。

ふー。

私は、一息ついて、リビングの窓を開けて、ベランダに出た。

風は冷たいけど、心地良い。

私は、ベランダに凭れて空を見上げる。

まだ、夜明け前だから、星が綺麗に瞬いている。

自分が、微睡みの中に居るかのようだ。

戸惑いばかりで、どうしたらいいのかわからない。

まだ、ぼんやりしてる。

護が私の事をちゃんと言ってくれたこと、嬉しかった。

ボーとしてるところで、背中から抱きつかれた。

「詩織…。どうしたんだ?」

護が私の耳元で言う。

「何でもないよ」

私は、護の手に自分の手を重ねる。

大きくて、温かい手。

この手を離したくない。

「詩織。何時から外に居たんだ?体冷えてる。中に入ろう」

「うん」

私は、護に肩を抱かれながら家の中に入る。

「温かい物入れようか?」

護が言う。

「いいよ。自分でやるから…」

そう言って、ダイニングにいこうとする腕を捕まれる。

「オレが入れたいんだ。詩織は、ソファーで座ってて」

私をソファーに座らせると、ダイニングに行く護。

どうしたんだろう?

私は、護の姿を目で追う。

護と目が合う。

「何?」

優しい笑顔で私に聞いてくる。

「もしかして、起こしちゃったのかなぁ…って、ゴメンね」

私が言うと。

「いいよ。どうせ、起きるつもりだったから…」

護が、手を動かしながら言う。

エッ…。

何で?

「そんな顔するな。実は、今日からロードワークに出ようと思ってたんだ。体が鈍ってきてたからな…」

護は、私の不安を脱ぎ去るように言う。

「ほら、ミルクティー」

私の手に渡してくれる。

「ありがとう」

護もコーヒーを啜ってる。

「詩織。今日は、少し遅くなると思うから、夕飯先に食べてもいいからな」

「そっか…。でも、私も遅くなると思う。生徒会の仕事で決めないといけない事があるから…」

私もミルクティーを啜りながらゆっくりと言う。

「じゃあ、早く帰ってきた方が、夕飯を作ろうか?」

「うん」

「じゃあ、オレ、ロードワークに行くから」

護が、リビングから出ていく。

私は一人残り、朝食の準備をする。

多分、護が帰ってくる頃には、私は登校してる時間だろう。

とりあえず、サラダと味噌汁を作る。

ジャーを開けて、ご飯を確認する。

二人分あるかなぁ…。

って、お弁当の分…。

仕方がない。

ご飯は、炊こう。

私は、お米を磨いて炊飯器で炊く。

残っていたご飯をお弁当とおにぎりにする。

おかずは、どうしようかなぁ…。

冷蔵庫を開ける。

と、ビックリした。

小分けになっておかずが入ってる。

そこに手紙が。

“詩織へ

好きなおかず使っていいからな

護“

いつの間にこんな事になってたの?

私は、小分けされてるおかずを手に取る。

全部、温めるだけになってる。

凄いよ…護。

私は、バランスがよくなるようにおかずを選ぶ。

お弁当は、これでいい。

朝御飯は、さっき作ったおにぎりと味噌汁。

それから、ベーコンエッグとサラダにしよう。

朝から、こんなに食べて大丈夫かなぁ…。

そう思いながら、ベーコンエッグを作る。

まぁ、食べないよりいいよね。

作り終えて、席に着き一人で朝食を頂く。

食べ終わった食器を片付けて、学校に行く準備をする。

着替えを済ませて、指輪を外してネックレスチェーンに通し、首に下げて、ブラウスに中に入れる。

鏡でチェックして、部屋を出る。

あっ、そうだ電話しなきゃ…。

電話より、直接行った方が早いや。

私は、玄関を出て鍵を閉める。

そして、実家に寄る事にした。

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