披露宴と二次会②
その後は、カバー曲を何曲か歌いステージを下りた。
「詩織。お母さんはじめて聞いたけど、上手かったんだね」
って、感動してる。
「久し振りに聞いたが、いい声してるな」
隆弥兄までもが、お世辞を言いだす。
「お前、歌手になれば・・・」
ポツリと言う、勝弥兄。
そこに。
「あれ、知らなかった。詩織、一回スカウトされてるぜ」
と、ステージから降りてきた優兄が暴露する。
「エーーーッ!!」
もう、優兄・・・。
こんな時に言わなくても・・・。
「本当なの」
三人が、詰め寄ってきた。
「・・・うん」
取り合えず頷いた。
「こいつ、俺のデモを歌ってるし、俺の目の前で、スカウトされてる」
だから、それは言わないで欲しい。
「その時は、断ったよ」
私が答えると。
「勿体ねぇ・・・」
隆弥兄と勝弥兄が同時に言う。
「その時は、私一人がデビューって、話だったからね。バンドで歌ってるのにソロデビューなんかしたら、バンドのメンバーに悪いと思ったんだ」
「ソロでもよかったんじゃねぇか?」
優兄が言う。
「私が今歌えてるのって、龍さんが声をかけてくれたからだし・・・。ソロで歌えって言われても無理だよ」
「まぁ、詩織の気持ちもわかるな」
隆弥兄が言ってくれる。
「ごめん。ちょっと、疲れたかも・・・。控え室に戻るね」
私は、その場を離れて、控え室に向かった。
控え室に戻って、ソファーに腰を下ろす。
なんか、夢を見てるみたい。
こんなに大勢の人たちに祝ってもらえるなんて・・・。
私は、ソファーに凭れながら、ヒールを脱ぐ。
履き慣れて無いせいもあって、足が浮腫んできた。
これじゃあ、ヒールは履けないよ。
どうやって戻ろうかなぁ・・・。
私は、部屋を見渡す。
・・・が、履ける靴がない。
唯一あるのが、スニーカー。
このドレスにスニーカーでは、カッコつかない。
うーん。
どうしたものか・・・。
私が悩んでると。
「詩織・・・」
控え室に入ってきた護。
「大丈夫か?」
「うん。でも、足が浮腫だして、ヒールが履けない」
私が言うと。
「足出せ。マッサージしてやる」
護が、私の足をマッサージし出す。
「ちょ・・・くすぐったいって・・・」
「それぐらい、我慢しろよ。って言うか、なにか代わりの靴とかなかったか?」
護が、辺りをキョロキョロ見渡す。
「それが、スニーカーしかないんだよね」
「スニーカーか・・・。ちょっと待ってろ」
そう言って、護は部屋を出ていく。
何か、名案でも浮かんだのかな?
数分後。
護が戻ってきた。
「詩織。このローファーを履いて、ウエディングドレスに着替えろ」
護が言い出した。
ローファーの色は、白。
ウエディングドレスのスカートは、足元を隠せるぐらいある。
でも・・・。
「護、いいの?」
「何が?」
「思いっきり、ボディーラインが見えちゃうけど・・・」
「いいよ。オレがついて回るから、見せびらかせば・・・」
護が、苦笑する。
「わかった。着替えるね」
ドレスを脱ごうとして、はたと手を止めた。
「護。外で待っててくれるかな」
「どうして。今更、恥ずかしがること無いだろ」
確かにそうなんだけど・・・。
やっぱり、恥ずかしいんだよね。
見られながら着替えるのって・・・。
「お願いだから、外で待ってて・・・ね」
「わかったよ」
護が出ていったのを確認してから、ドレスを着替える。
鏡で、全身を映して、確認する。
うん、いいね。
「いいよ」
ドアを開けて、外に顔を出す。
「やっぱり、そのドレス似合うな」
「自分がデザインしたドレスだからでしょ」
私は、苦笑する。
「そうだな。ティアラは着けないのか?」
護が、優しい笑顔で言う。
「着けた方がいい?」
「無くてもいいだろ。そろそろ戻ろう」
護が、私の腰に手を添えて、エスコートしてくれる。
「はい、旦那様」
ちょっと、おどけてみた。
護が、苦笑した。
その後、時間まで楽しんだのだった。