披露宴と二次会①
披露宴会場に入ると、所畝ましと、人がひしめき合っていた。
「えっと・・・。これは、どういう事かなぁ?」
私は、護に問いた。
「ビックリしたか?」
護が、横で苦笑してる。
「実は、披露宴の招待客が、やたらと居たから、ディップ形式にしたんだ」
って、何人呼んだのよ。
さっきも述べたように、私は一切ノータッチだから、誰が来てるのかなんて、わからない。
「ねぇ、護。これって、どういう招待の仕方したの?」
私は、疑問を口にする。
「詩織の友人関係は、里沙ちゃんと真依ちゃんに頼んだんだ。で、オレの方は、自分でピックアップしていったら、こうなった」
ハァー?
「何で?二次会でもいいようなメンバーも居るの?」
「あれ、言わなかったっけ。二次会はしないよ」
って、護が言う。
「エッ・・・。それも、聞いてないよ」
「だから、ここの会場を通常二時間から、三時間のところを五時間借りきったから・・・」
って、笑顔で言う。
「ちょっと待って。それって、可能な事なの?」
だって、普通なら無理だよね。
「たまたま、その後の予約が入ってなかったみたいで、借りられたんだよ」
予約がないからって・・・。
それって、本当にいいの?
周りを見れば、思い思いの物をとって、談笑してる。
なんか、ちょっとした、同窓会みたいになってる。
その中で一際目立ってたのが、隆弥兄なんだけど。
隆弥兄の回りに女性が集まってるし・・・。
「隆弥さん、モテまくりだね」
「本当だね。隆弥兄何時も“俺、モテないから“が口癖だったのに・・・」
「それって、本人が思い込んでただけなんじゃないか?」
護が言う。
そうかもしれない。
「あっ、詩織ちゃん」
声に振り返ると柚樹ちゃんがいた。
「来てくれて、ありがとう。柚樹ちゃん」
「僕だけじゃないよ。生徒会メンバー全員集合してるよ」
柚樹ちゃんが、にこやかに言う。
「護、ちょっと行ってきてもいい?」
護を仰ぎ見ると。
「いいけど。暗いから、足元気を付けろよ」
目を細めてこっちを見てる。
「うん。柚樹ちゃん、皆はどこに?」
「あっちだよ」
指を指し示す。
柚樹ちゃんの後を着いていく。
「詩織ちゃん、おめでとう」
忍ちゃんが、駆け寄ってくる。
「ありがとう。里沙の結婚式以来だよね」
「うん。今日のドレス、可愛いね。って言うか、私的には詩織ちゃんは、スレンダー系のドレスだって思ってた」
あ、えっと・・・。
「うん。式の時はそうだったんだけどね。披露宴は、こっちなんだ」
私が、選んだわけかないけど・・・。
「そうだったんだ。式の時のドレス姿も見たいなぁ~」
えっと・・・。
私が戸惑ってると。
「忍。そんなこと言って、困らせるなよ」
って、声がかかる。
「和哉・・・。もしかして、詩織ちゃんにまだ未練あるの?」
忍ちゃんが、不貞腐れるように言う。
何で、知ってるんだろう?
「あるわけないだろ。忍が居てくれるんだから・・・」
照れずに堂々と言う佐久間くん。
「水沢。おめでとう!幸せにな」
笑顔で言ってくれる。
「ありがと」
私も笑顔で返す。
「水沢、おめでとさん。って言うか、隆弥さんと勝弥さん知らないか?俺、まだ挨拶できてなくてさ・・・」
そう言うのは、凌也だ。
「双子の兄達か・・・。隆弥兄は、反対側で、女性に囲まれてたから、わかったけど、勝弥兄は、彼女と一緒のはずだからどこかに紛れてるんじゃないかな」
私が答えると。
「そっか。取り合えず、隆弥さんにだけでも挨拶してくるわ」
そう言って、去っていく凌也。
「詩織ちゃん、おめでとう・・・」
拓人君が、涙声で言う。
「お兄ちゃん。何、泣いてるのよ」
忍ちゃんが、拓人君に言う。
「だって、詩織ちゃんが、人妻になっちまうんだぜ」
哀しそうな声に。
「拓人。何時までそうしてるの?僕、他の人と飲んでくる」
柚樹ちゃんが、拓人君にそう告げると他の友人のところに行ってしまった。
それを見た拓人君が、慌てて追い駆けて行った。
「忍ちゃん、あれって一体・・・」
私は、動揺を隠せずに忍ちゃんに聞く。
「あれ、知らなかった?拓人、柚ちゃんにベタ惚れしてるの。柚ちゃんも拓人の事好きみたいだし・・・。あれは、あれでいいんじゃないの?」
あっけらかんとしてる。なーんだ。
結局は、生徒会メンバー同士で引っ付いたわけか・・・。ただ一人を除いて・・・。
そう納得してたら、ドラムの音が聞こえてきた。
エッ・・・。
私は、音がした方に目をやる。
そこでは、優兄がベースを担いでる。
何やる気?
『詩織、来いよ』
優兄が、マイクで呼びつける。
ちょっと待って・・・。
私が、歌うの?
呆気にとられてる私に、いつの間にか横に来ていた護が、エスコートしてくれる。
「何?これも護が・・・」
「そうだよ。優基に言ったら、快く引き受けてくれたよ。それに、オレが、文化祭の時に好きになった詩織の衣装と同じ色だろ」
笑顔で言う。
ステージに立つと、拍手で会場が沸く。
「ちょっと、優兄。何の曲をやるの?」
「大丈夫。詩織なら、イントロでわかる曲だから・・・」
って、イントロクイズですか?
もう、タイトルぐらい教えて欲しいよ。
って、思いながら、イントロが流れ出す。
エッ・・・。
この曲を歌うんですか。
ロック調のバラード。
何で、今、この歌を選ぶわけ?
これ、私が自分で初めて作詞した曲。
もう・・・。
思い入れが強いから、歌いたく無い曲なのに・・・。
私は、意を決して、歌い出したのだった。
会場設定ですが、あり得ない設定で批判しないでください。ただの空想ですので、悪しからず。