控え室にて
式の間中、護は私の事を気遣ってくれた。
もう・・・・・・。
心配しすぎなんだから・・・。
私は、苦笑せずにいられなかった。
それを見ていた隆弥兄が。
「護。お前、もうちょっと落ち着けよ」
って、苦笑してる。
まあ、隆弥兄は、理由を知らないから、仕方ないけど・・・。
「護。隆弥兄の言う通りだよ」
護の背中を叩く。
「だけど・・・」
口ごもる護。
「護くん。心配しすぎだって。あれぐらいで、どうにかなるもんじゃないしね」
お母さんが言う。
「そうなんですか?」
お母さんの言葉に護が聞き返す。
「余程じゃないとね」
意味深な事を言う母さんに隆弥兄が。
「お前、もしかして・・・」
って、私に確信を付き耳打ちしてきた。
アハハ・・・。ばれちゃった。
私は、軽く頷いた。
すると。
「護ー!」
隆弥兄が、怒鳴り出した。
お母さんも、ビックリしてる。
私は、護に手を合わせて、口パクで。
『ゴメン。ばれた』
と伝えると、護の顔色が、青ざめていくのがわかった。
護も逃げ切れないのをわかってるから、観念したようだ。
「隆弥さん。落ち着いてください」
隆弥兄に言ってる。
「で、予定日は?」
って、さっきと討って変わって、穏やかな声で言う隆弥兄。
私とお母さんは、顔を見合わせて、笑った。
言うなら、今しかないかな・・・。
「お母さん」
「何、詩織?」
「あのね・・・」
私が躊躇ってると。
「はっきり言いなさい」
ちょっと、苛立った声。
「えっと、私の中には、二人分の命が、授かってるの。だから、護は、心配し過ぎてるの・・・」
私が言うと。
「えーっ。ちょっと、詩織。それを早く言いなさいよ」
お母さんが大声で言う。
それに対して、隆弥兄と護がこっちを向く。
「お母さん!」
慌てて口を塞いだんだけどなぁー。
「それは、護くんも心配するでしょ。一人の子を生むのも大変なのに、初産が双子って・・・。まったく、私と一緒じゃない」
って、苦笑した。
「隆弥、喜びなさい。今年中に四人のおじさんだよ」
隆弥兄に言う。
その言葉に対して、隆弥兄の動きが止まった。
かと思ったら。
「エッ・・・。エーーーーーッ!」
隆弥兄まで・・・。
「なんだよ。煩いなぁ」
勝弥兄が控え室に入ってくる。
「勝、驚くなよ。今年中に四人のおじになるそうだ」
隆弥兄が、勝弥兄告げる。
「あっそ。それがどうか・・・」
冷静に受け止めてくれたのかと思ったんだけど・・・。
「エッー。それって、おかしくないか?せめて三人・・・」
勝弥兄が、おもむろに私の方を向く。
「詩織。まさか双子?」
聞いてきたから、私は頷いた。
「マジで!それは、隆も驚くな。納得」
一番冷静な、勝弥兄。
「勝。何で、そんなに冷静なんだ」
隆弥兄が、怪訝そうに言う。
「何でって、隆がそんだけ驚いてる声を出すって、詩織の事でしかないだろ。それに、一人でも双子でも、生まれてきたら、可愛がるだけだろ」
勝弥兄が、まともなことを言ってる。
「優基には、言わないでね。あの子のところも生まれるから、それどころじゃなくなるしね」
お母さんが、双子の兄達に口止めする。
「わかってるよ」
さすが双子、息がピッタリ。
「そろそろ、披露宴の時間だね。私達は、先に会場に行くわね」
お母さんは、二人を連れて出ていった。
「詩織。よかったのか?言ってしまって・・・」
今まで静かに見守ってた護が言う。
「うん。だって、お母さんに子供預けて、学校に通わないといけないから、早いうちに言っておいた方がいいかなって、思ったんだ」
「そっか・・・。そうだな。一年は、お義母さんに迷惑かけるんだもんな。早めに言っておいて正解なのかも・・・」
護が、考え深げに言う。
「さて。オレ達もそろそろ移動するか・・・」
護が、手を差し伸べてくれる。
「うん。でも、これ可笑しくない?」
「大丈夫だって。自信持ちな。詩織は、何を着ても似合うから。オレの見立てを信じなさい」
自信満々で言う護。
今着てるドレスは、深紅のプリンセスドレス。
深紅って、私には似合わないと思ってたんだけど・・・。
この披露宴も、ほとんど護が考えてくれたの。
私は、ノータッチだったりする。
これから、何が起こるのか楽しみでもあった。
この回で、50話目。
って、自分でもビックリです。
ここまで掛かってるなんて・・・。
読んでくださる方、本当にありがとうございます。