式直前
今日は、いい天気。
なんか、ドキドキが止まらない。
こんな日が来るなんて、思ってなかった。
私は、今、純白のドレスを身に纏っている。
しかも、体のラインがくっきりと目立つ。
横のスリットも際どいし・・・。
これも護がデザインしてるんだよね。
またもや、一点物のドレスで、ティアラまでデザインするって・・・。
どれだけかけたんだろうって、私の方が心配になるぐらいで・・・。
あの日、部屋を見つけてから、直ぐに引っ越して、二年の月日が流れた。
護は、見事に教員免許を取得し、就職先も決まった。
それと同時に、結婚まで決まった。
淡々と決まっていくのに私は、一切ノータッチ。
だから、今日これから何が起こるのかわからないでいる。
コンコン・・・。
控え室のドアがノックされた。
「はい」
私が答えると、ドアが開き、中に入ってきたのは、里沙と優兄と娘の幸子ちゃんだった。
「詩織。メチャ綺麗・・・」
と、溜め息混じりで言う里沙。
「そのドレス、詩織しか着れないね」
「本当だな。それ、護がデザインしたんだろ」
優兄も、ニコニコ(?)いやニヤニヤしてる。
「うん・・・」
「よく、そんな金があったな」
優兄が、真顔で言う。
アハハ・・・。
そこは、私も不思議に思ってるところだよ。
コンコン・・・。
再びノックされる。
「はい」
私が、返事をすると、護がヒョッコリと顔を出す。
「準備できた?」
白のタキシード姿の護に優兄が。
「お、護。このドレス、幾らかかったんだ?」
って、聞いてるし・・・。
「しー、しー」
さっちゃんが、手を伸ばしてくる。
「さっちゃん。今日は、詩織叔母さんに抱っこさせられないの。大人しくママで、我慢してようね」
里沙が言うけど、さっちゃんは駄々を捏ねる。
その声を聞いて。
「さっちゃん。外で、パパと遊ぼうか」
優兄が、里沙からさっちゃんを奪うと、さっさと外に行ってしまった。
「優兄って、子煩悩?」
視線は、優兄が出ていったドアに向けてた。
「そうなんだよね。幸子が生まれてから、もう、デレデレで、仕事そっちのけで、遊んでるんだよ」
苦笑する里沙。
「詩織。おめでとう」
改めて言われて。
「ありがとう。って言うか、里沙こそおめでとうだよね」
私が言い返すと。
「ありがとう。今度は、男の子がいいんだけどね」
って、笑ってる。
その横で、護が固まっていた。
「あれ?優兄から聞いてない?」
私の言葉に護は首を振った。
言ってなかったんだ。
「二人目が出来たんだって」
「それ、本当?」
護が、勢いよく里沙の方を向く。
「うん」
里沙の嬉しそうな顔に対して、護の肩が落ちた。
どうしたんだろう?
「オレ、この年でおじさん?」
って。
そんなことか。
私は、里沙と顔を見合わせて、クスクス笑った。
もう・・・。
「ねぇ、護。今すでにおじさんだよ。さっちゃんいるしね」
って、里沙と視線を交わす。
「そうだよ、護さん」
って、里沙も言う。
「だがなぁ」
って、何が言いたいの?
「護、そう言うけど、自分だってパパになるじゃん」
そう、式まで一ヶ月ってときに体調を崩して、まさかと思い市販の検査薬で調べたら、陽性反応が出て、護に伝えたら、病院に直ぐ連れていかれて、二ヶ月だって言われた。
私は、まだ学生だよ。
大学だけは、卒業したい思いが強いから、とりあえず、一年休学届けを出すことにした。
両親と護のお義父さんには伝えてある。
「そうだけど・・・。やっぱり、ショックにはかわりない」
「護さん。相変わらずだね」
里沙が言う。
「アハハ・・・」
ひとしき笑って。
「あたしもそろそろ行くね」
「うん、ありがとう」
部屋を出ていく里沙にお礼を言った。
「詩織。疲れたら、真っ先に言うように・・・」
二人っきりになったとたん、これだもの。
「ヒール。高くないか?」
「大丈夫だよ。心配性なんだから・・・」
「仕方ないだろ。お前のお腹の中には、二人分の命が宿ってるんだからな」
って言い出す。
まぁ、確かに二人分入ってるけど・・・。
そこまで、心配しなくても・・・。
親には、双子だって、まだ言ってない。
子供が出来たことだけしか・・・。
でも、お母さんだけは、早めに言っておきたいと思ってる。
「わかったから、少しは落ち着いたらどう?」
苦笑しながら言う。
「あ、ああ・・・」
そう言って、椅子に腰を下ろす。
「護。ありがとね」
私は、護に向かって言う。
「何が?」
私は、護の手をとって、自分にお腹に手を当てた。
「この子達を生んで欲しいって、言ってくれて・・・」
そう。
本当は、おろした方がいいって、親に言われたのを護が。
『オレは、子供に会いたいです』
って、強く言ってくれたから、、おろさずにすんだ。
「当たり前だろ。オレと詩織の子なんだ。会いたいに決まってるだろ」
護が、優しく抱き締めてくれる。
「護。ありがと」
護は、何も言わずにただ抱き締めてくれた。