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再出発

クローゼットの中から、ロングタイトスカート、横にスリット入り。薄い水色のシンプルブラウス、昨日してた太めのバンクル。黒のストッキングにワンポイントに猫が絵が書かれてるものを履いた。



私が、部屋を出ると護が、ドアの前で壁に凭れて待っていた。


「お待たせ」

護が、私の格好を見るや。

「シンプルすぎないか?」

と、首をかしげながら言う。

「これでいいの。彼女と正反対の格好をした方が、離れていくと思うし、私的には、いつもと同じ振る舞いをするだけだから、気にしなくてもいいしね」

普段から、落ち着いた態度の練習をしてるから、これぐらいなら、雰囲気がだせるし、歌ってる時のイメージでいればいいしね。

「悪いな」

「いいよ。婚約者としては、当たり前の事だし・・・」

って、ウインクした。

「助かるよ。詩織」

難しい顔をしてた護が、安心した顔になった。

「護の力になれるなら、何でもするよ」

私は、笑顔で答えた。

「じゃあ、行くか・・・」

「うん」

私たちは、家を出た。



駐車場に止めていた、車に乗り込む。

「少し、走るけど、大丈夫か?」

「うん。平気だよ」

って、ゆっくりと走り出した。

「今から、会うこって、どんな娘?」

「強いて言えば、ちひろみたいなタイプかな・・・」

ちひろ先輩か・・・。

気が強くて、嫉妬深いってことかな。

「詩織・・・」

「うん?」

「何考えてる?」

「高校の時のこと思い出してた」

「そういや。お前、ちひろに引っ張った叩かれてたっけ・・・オレのせいで・・・」

そんなこともあったっけ・・・。

「あの時の詩織、カッコよかったよなぁ」

懐かしむように言う。

「もう、恥ずかしいって・・・」

それから、目的地まで、思いでの話で盛り上がった。






着いた場所は、噴水のある公園。

私は、護の後ろを着いて歩いた。



「詩織。何で、横を歩かないんだ?」

護が、振り返る。

「う、うん。ちょっとね」

誤魔化す。

本当は、彼女の行動を見たかっただけなんだけど・・・ね。

「居るの?」

「居るよ。向こうも気が付いた」

って、言ったその時。

「護くーん!」

甘ったるい声で、こっちに駆けてくる。

ほんと、フンワリ系だね。

まぁ、私には、関係ないけど・・・。


そんなわけないか・・・。


彼女は、そのまま護の胸に飛び込む。

あれまぁ・・・。

ちょっと、妬けるわね。



そろそろ、私の出番かな・・・。

私は、そっと後ろから顔を出して。

「護、その娘誰?」

彼女を笑顔で見つめた。

彼女の顔がひきつるのがわかった。

「もしかして、さっき言ってた娘?」

護の顔を見る。

「そう。こいつ、しつこくてさぁ。詩織にまで、迷惑かけて悪いな」

護が言う。

「初めまして。玉城護の婚約者、水沢詩織です」

飛びきりの笑顔を浮かべて、挨拶をする。

彼女は、余計にひきつった顔を浮かべて。

「本田あきらと言います」

って、挨拶してきた。

「本田さんは、護のどこに引かれたの?」

私は、ちょっと意地悪な質問をしてみた。

まぁ、大抵の人は、容姿って言うが・・・。


「最初は、容姿でした。それから、優しいところ・・・」

さっきと変わって、嬉しそうに護の事を語り出す。

へぇ・・・。

意外と見てるんだ。

彼女が、言い終えたところで。

「でもね、護は、私のだよ」

彼女を見つめる。

彼女は、私を睨み付けてきた。

「・・・って、ごめん、護。物扱いしちゃった」

私は、上目使いで護を見る。

「いいよ。詩織だし・・・」

って、私の頭をポンポン叩く。

ウフフ・・・。

「あの・・・」

おっと。

彼女の存在、忘れてた。

久し振りに外でイチャつくから、全開しそうだ。

「ごめん、本田さん。オレ、こいつしか興味ないんだ。高校の時から、ずっと、詩織しか見てない。だから、本田さんとは、付き合えない」

真顔で言う護。

「でも、護くん。私は、あなたが好きです」

そう言って、直も護に付きまとう。


流石、一筋縄ではいかないか・・・。


「水沢さんは、護くんのどこが好きなんですか?」

それを私に聞くの?

「うーん。優しいところ。一つの事に打ち込む時の顔。それから、やり遂げた後の心の底から笑う時の笑顔が一番好き!」

護の笑顔を思い出して、私も自然と笑顔になる。

「それから、涙もろいところも好き」

私が、そう言うと。

「それ、言わなくていいから・・・」

後ろから抱きついてくる。

いつの間に、彼女の腕をほどいたんだろう?

「えっ。だって、本当の事じゃん」

「それ、詩織に対してだけだし・・・」

護が、私の頭をガシガシと撫でる。

「そうなの?」

「当たり前じゃん。詩織の前でしか泣けない」

護が、すねる。

「あのー」

遠慮がちの声。

「うん、何?」

「いえ、なんにも・・・」

困った顔をする彼女。

「本田さんが悪いんだよ。護の好きなところを言って欲しいなんて言うから・・・」

私が言うと、彼女は呆けてた。

「あなたが、護と会う前から、私は彼の事を好きになってた。護が、高校卒業と同時に婚約したんだ。それも、護からの申し出でね。この指に嵌まってるのが、その時に貰った婚約指輪」

私は、左手を出して、彼女に見せた。

「これ、護が私の為にって、デザインしてくれた、一点物の指輪なの。当時は、指輪は嵌めれなかった。今、こうして、陽の目に当たってる。それだけで、わかるでしょ」

私が言うと。

「・・・はい・・・。護くんの事、諦めます。護くん、ありがと・・・」

彼女は、目に涙を貯めて、行ってしまった。


「詩織」

「うん?」

「ありがとう」

「どういたしまして」

私は、護の方を振り返り、頬に口付けた。

「全く。不意打ち禁止だって・・・」

そう言いながら、そっぽを向く。

「ほら、不動産屋に行くぞ」

って、照れ隠しなのか、私の背中を押して、車に向かった。






不動産屋に着くと、物件を色々と見せて貰った。

「どうせなら、少し広いところにしようか?」

「何で?」

「子供ができたら、部屋、要るだろ?」

って。

そんな先まで・・・。

「どうした詩織?」

「何でもない」

「なぁ、これなんかどうだ?」

って、指を指した。

3LDK。

三部屋のうち、一部屋が、大部屋で、中央で仕切ることができるタイプ。

へー。

これ、いいかも・・・。

「うん」

「詩織も気に入ったか?」

「うん。部屋見ることできるかな」

私が言うと。

「聞いてみようか?」

護が、店員さんに聞きに行く。



「見に行けるみたい。行くか?」

「うん」

事で、物件を見ることになった。





中に入ると、広くて清潔感があって、ベランダに出ると、夕焼けが、綺麗に見える。

「詩織。気に入った?」

「うん。護は?」

「オレも、気に入った。ここにするか?」

「そうだね」

「オレ、店に戻ったら、手続きするな」

「うん」

そう笑顔で頷いた。




ここが、私たちの再出発の場所・・・。

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