赤い痕
「詩織。そろそろ、起きろよ」
との声で、覚醒する。
目を擦りながら、身体を起こそうとして、腰の辺りに痛みが走る。
「いたーい」
「無理するなよ」
って、労りの言葉が聞こえてくる。
今何時だろう?
護の部屋にかかっている時計を見た。
一時を指していた。
ヤバ・・・。
講義・・・。
「それにしても、いい眺めだな」
って、声が耳に届く。
声のする方を見ると、護がニコニコしながら、こっちを見ている。
私は、自分の姿を見た。
シーツがずり落ちて、胸元が露になってる。
「キャーー」
慌ててシーツをかき集めて、隠す。
「今更、隠す必要あるのか?」
って、意地悪なことを言う護。
「・・・恥ずかしいんだもん」
「はいはい。相変わらずですね。でも、詩織の身体中にオレの印しつけたから・・・」
とんでもない事を言う。
私は、それを確認するために、シーツを捲った。
至るところに、小さな赤い痕がついてる。
なに・・・これ?
「ごめんな。久し振りに詩織の身体、堪能させてもらったよ。肌が白いから、痕もくっきりだな」
クスクス笑ってる。
もう、何言ってるのよ。
「それより、携帯、何度も呼び出しが来てるが・・・」
携帯を手渡してくれる。
私は、それを確認すると、大学の友だちからだった。
“詩織へ
どこに居るか、大体わかってる。
講義の代弁しておいたからね。
今度、奢ってね(なんなら、近いうちにコンパでもいいよ) 真衣“
ってな、メールが・・・。
それを護も覗き込んできた。
「それじゃあ、今度の土曜日にでもどう?」
って、護が言う。
「いいの?」
「うん。メンツなら、直ぐに揃うと思う。詩織の友達って、綺麗系が、多いから・・・」
意味深な台詞だなぁ。
「それって、私以外に狙ってる子が居たってことかな?」
「違う!パッと見に思ったことだ」
「ふーん。そういう事にしておく。・・・で、返事打っても?」
「いいよ」
“真衣へ
代弁ありがとう。
で、今度の土曜日にコンパってことで、どうかな?
彼も、直ぐにメンツ揃えれるって、言ってるんだけど?
詩織“
送信すると、直ぐに返事が返ってきた。
「早っ・・・」
二人の声が、ハモった。
“本当?
じゃあ、それでお願いします。
で、何人ぐらい? 真衣“
「護、何人集められるの?」
護の顔を見る。
「ちょっと、待ってな」
そう言うと、自分の携帯を操作する。
私も、護の携帯を覗く。
続々と返信が返ってきてる。
「ざっと見で、六人は確実かな。その日、試合があるから、そのまま行ける奴が三人。サークルには入っていないが、暇してる奴が、三人居る」
「とりあえず、六人って、打っておけばいい?」
「そうだな」
“とりあえず、六人は確実に確保できるって・・・
詩織“
打ち返した。
「なぁ、このまま、不動産屋に行くか?」
護が言う。
「講義、出なくていいの?」
「こんな時間に行ってもなぁ・・・。中途半端なんだよ。だから、なっ」
確かにそうかもしれないけど・・・。
「と、いうことで、早く準備してくれるか?それとも、喰っていいか?」
護が、私に方を見る。
その視線で、思わず赤面した。
「護のエッチ・・・」
「いつまでも、そんな格好でいる方が悪い」
って、覆い被さってくる。
「ちょっ・・・護・・・どいてよ」
「やだ・・・。頂き・・・」
プルル・・・、プルル・・・。
と、着信音が鳴り響く。
私のじゃない。
「出なくていいの?」
「後でかけ直すからいい」
って・・・。
でも、何度もかかってくる。
「出た方がいいんじゃない?」
「わかったよ」
護が、ベッドの縁に座り、電話に出た。
「もしもし・・・」
ちょっと、不機嫌そうなんだけど・・・。
仕方ないか・・・。
その相手のせいで、お預けさせられたんだもんね。
「はっ!今日は、無理だって・・・」
なんか、苛立ってない?
何で?
「そんな急に会えるわけ無いだろ!」
何、その意味深な言葉は?
「・・・って言うか、オレ、お前の彼氏でも何でもないじゃん」
何?
「それに、オレには婚約者が居るって言ってるじゃんか!」
護が、こんなに声を荒げるなんて・・・。
「わかったよ。連れてけばいいんだろ」
そう言って、電話を切った。
「どうしたの?」
護の顔を覗き込む。
「悪い、詩織。急いで、支度してくれるか?お前に会わせろと口煩い奴がいるんだよ」
って、嫌な顔をする。
「その子、どういうタイプなの?」
「タイプか・・・。どっちかっていうと、フンワリ系の可愛いって感じかな」
フンワリ・・・か。
じゃあ、普段通りの姿でいいのかな。
「じゃあ、服、着て来るね」
私は、シーツを纏わせて、自分の部屋であった場所に移動した。
この回で、本編と並びました。
まだ続きますので、よろしくお願いします。m(__)m