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サプライズ

 護に車で、二次会会場まで送ってもらう。


「ありがとう。護は、参加しないの?」


「悪い。今回は、無理だ。じゃあ・・・」


 そう言うと、車を走らせて、行ってしまった。


 私は、その車を見送ってから、中に入った。





「詩織、遅い。早く準備しろ!」


 龍さんに小声で怒鳴られる。


「はい」


 私は、龍さんに引っ張られる形で、ステージに立った。


 二次会の場所は、ライブハウスだ。


 龍さんが幹事なので、ライブハウス側と交渉して、この会場を押さえたのだ。


 私達は、サプライズなんだけど、今まで優兄が提供した曲を歌ってる人達にコンタクトをとって、ステージで歌ってもらってたんだけど・・・。


 まさかのおおとりなので、緊張する。


「今宵一夜限りの再結成です」


 私は、マイクを通して言う。


「では、早速行きますか」


 私は、ドラムの健さんに合図をする。


 健さんのスティックの合図で、イントロが流れ出す。


 私は、そのイントロを聞き歌い出した。


 二人が何時までも幸せでいてくれるようにラブソング系を大目に歌うことになっていた。


 その中には、優兄が作った曲も含まれている。


 ちゃんと、届いてるかなぁ。


 私たちの思い・・・。





「詩織、ありがとう。凄く嬉しい」


 里沙が、涙ぐむ。


「泣かないの。笑ってよ、里沙」


 里沙の頬に伝う涙をハンカチで拭う。


「まさか。詩織があたし達の為に歌ってくれるなんて、思わなかったから・・・」


 ハハハ・・・。


「実は、この企画を考えたの龍さんなんだ」


 里沙が、驚いてる。


「龍さんが、“サプライズで、驚かせてやれ“って、事で、幹事も引き受けてくれてさぁ。いつもなら、“面倒臭い“が口癖なのにね」


「そうなの?」


「そうだよ。何するにも、面倒臭いって言ってる人がだよ。優兄のためならって、率先してやってくれてさぁ。私がしたことなんて、優兄が手掛けたアーティストに声をかけただけだよ。後は、龍さんが、メンバーに声かけして、ここのライブハウスの経営者に掛け合ってくれた。だから、お礼は、龍さんに言ってあげて・・・ね」


 里沙にウインクする。


「わかった」


 笑顔の里沙。


 そこに。


「詩織。お前、一段と上手くなったなぁ」


 優兄が、声をかけてきた。


「アハハ、ありがとう。毎日ヴォイスレッスンしてるからかな」


 冗談混じりで言う。


「・・・ったく。お前、護と別れてから、変わったな」


 優兄が言う。


 エッ・・・と。


 今、言った方がいいのかな。


「優兄。絶対に大声出さないでね」


 私の申し出に。


「何だよ?」


 怪訝そうな顔を見せる。


「私、護と頼を戻しました」


「エッ・・・エーー!」


 優兄が、叫ぶ。


 慌てて、優兄の口を手で塞いだ。


「しおり、・・・くるしい」


 手をどかすと。


「なんでまた・・・」


「二次会の前に護と話し合ったの。お互いの気持ちを・・・。そして、もう一度、最初から始めようってことになった」


「まぁ、いいんじゃねぇ。収まるところに収まったって感じで・・・」


「優兄には、色々迷惑かけたけど・・・」


「迷惑だなんて、思ってねぇよ。お前ら見てたら、もどかしかっただけだ」


 笑顔で、私の頭を撫でる。


「ありがとう、優兄。大好き!」


 って、思わず抱きついた。


「こら!離せ・・・」


 優兄が、照れてる。


「ありがと」


 もう一度、小さくお礼を言う。


「ああ・・・」


 優兄の優しい声。


「それより、護は?」


「うん。なんか用事があるみたいで・・・」


「そっか・・・。って、お前、男共に狙われてるぞ」


 優兄が、耳打ちしてくる。


 はい?


 何で?


「お前。今、フリーだって、誰かに話したか?」


 うーん?


「もしかして、合コンに行ったせいかな?」


「その時のメンバー、この中に居るか?」


 優兄が聞いてきたから、辺りを見回す。


 見知った顔が、チラホラと・・・。


「居る・・・」


「そこから、伝わったんか・・・」


 アハハ・・・。


 そうかも・・・。


「何?どうかした?」


 そこに里沙の明るい声。


 さっきの披露宴と違い、いつもの里沙に戻っていた。


「嫌な。また、不味いことが起きるかも・・・」


 優兄が、口を開いたときだった。


 ライブハウスの出入り口が開いた。


 ん?


 こんな時間から?


 って、目を向ける。


「護!こっち・・・」


 優兄が、護を呼び寄せる。


「よっ!遅くなった」


 って、優兄に挨拶してるし・・・。


 でも、さっきは、用事があるからって、言ってなかったっけ・・・。


「詩織、これやる」


 ポンと渡される。


 なに、これ?


 自分には、覚えのない小さな箱。


「開けてみろよ」


 そう言われて、それを開ける。


 エッ・・・。


 うそー!


「護。これって・・・」


 私が、困惑してると。


「そう、今でのやつにプラスしてある」


 そこに在ったのは、今まで護から貰った、アクセサリーだった。


 捨てられたと思ってた。


 それが今、私の手に戻ってきた。


 護は、その中にある一番真新しい指輪を手にすると。


「詩織、手出して・・・」


 言われるまま左手を出すと、薬指に指輪を嵌める。


 なんで・・・。


 嬉しすぎるよ。


 胸が一杯一杯で、言葉が出てこない。


 その代わりに、目から涙が溢れ出す。


「泣くなよ。他の奴等に泣き顔見せたくないんだから・・・」


 私を抱き寄せ、護の胸に・・・。


「優基、里沙ちゃん。おめでとう。これからもよろしく」


「ありがと。二人とも、もう離れるなよ」


 優兄が、笑いながら言う。


「ああ・・・」


 護が、苦笑してるのがわかる。


「じゃあ、詩織はもらってくな」


 エッ。


「どうぞ」


 里沙と優兄の声が重なる。


「ほら、行くぞ。そのまま、しがみついてなよ」


 って、抱き抱えられてしまう。


 あのー。


 不思議に思ってる私をよそに護は。


「さっきも言っただろ。他の男に泣き顔を見せたくないから、そのままじっとしてろ」


 もう・・・。


 こっちの方が、恥ずかしいよ。


 相変わらずなんだから・・・。


 護は、器用に人を避けて、出口に向かった。









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