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話し合い

今回は、長いです。

 披露宴も無事に終わり、私達は、会場の外で招待客を見送っていた。


「詩織ちゃん。二次会行くよね?」


 柚樹ちゃんが聞いてきた。


「行くよ。って言うか、私が行かないとサプライズできないし・・・」


 私は、小声で答える。


「何それ?」


 忍ちゃんが聞いてきた。


「ここで言ったら、サプライズにならないじゃん」


 笑顔で言う。


 二人は、顔を見合わせて、首をかしげた。


「まぁ、確かにそうだね」


 そして納得したようだった。


「じゃあ、先に行ってるね」


 生徒会メンバーが、揃っていく。


 あっ、龍さんに電話しないと・・・。


 私は、その場を少し離れて携帯を取り出し、龍さんに電話を掛ける。


『おう・・・』


 相変わらず、素っ気ないな。


「龍さん。今、披露宴終わりました。こっちから、何十人か雪崩れ込むと思うので、よろしくお願いします」


『わかった』


「それから、私、少し遅れます」


『準備だけはしておくから、間に合うように来てくれればいいよ』


「わかりました」


 そう言って、電話を切った。


 相変わらず、用件しか言わないんだから・・・。


 って、思いながら、携帯を仕舞う。


「詩織。今、大丈夫?」


 振り返ると護が居た。


「うん・・・」


 頷くと、彼はラウンジへと促した。





 ラウンジで、コーヒーを頼む。


「お疲れ様」


 お互いに言い合う。


 どう切り出したらいいのかわからず、沈黙が続いた。


「オレ・・・。オレさぁ。あの後、色々と考えた」


 真剣な眼差しで、護が切り出した。


「何で、詩織がオレから離れていったのかを・・・」


 護が、言葉を選びながら、ゆっくりと話し出す。


「詩織の事・・・。凄く大切で、どうしたら守ってやれるかって、その事ばかり考えてた。それから、オレに頼って欲しいって・・・。でも、実際は・・・、違ってた。一人で悩んで、パンク寸前だった。余裕が・・・なかった」


 寂しげに言う。


「だからかなぁ。詩織の事を考えずにいられる学校で、心底笑ってた」


「・・・うん・・・。学祭の時の笑顔、凄く輝いてたもん。だから、私があなたの傍に居たら、あなたを駄目にするって思ったから・・・。離れることにしたの」


 悲しいけど、事実と向き合う。


「その後、物凄いショックを受けた。オレが、何かしたか?って、ずっと悩んで・・・、詩織に聞きたくて、会いに行くが、避けられるし・・・」


「あの時は、護自信で気付いて欲しくて、会わないようにしてた」


「何が、なんだかわからなくて、連絡着けようにも、着かないし・・・。腹いせで、他の女と付き合ってはみたが、やっぱり、詩織の事が忘れられないし・・・」


 そうなんだ。


「で、冷静になって考えたら、自分がどれだけ詩織を愛してきたのかがよくわかって、今までの事を振り返ってみたら、何かが違うって思い。オレ、自分がどこをどう間違えたのかを考えた」


 護が、声を振り絞って話す。


「詩織は、“オレといるだけで、嬉しい“って言ってくれてた。心底輝く笑顔で・・・。でも、オレは、どうだったろう?って・・・。オレは、詩織を守ることで一杯で、ちゃんと笑えてたかって・・・。笑えてなかった事に気が付いた。詩織と居ると楽しいけど、不安要素が多くて、心底笑えてなかった」


 護の視線とぶつかる。


「護さぁ。私が不安になった時に言ったよね。“オレは、詩織がいい。お前さえ居てくれればそれで“って・・・。私は、それで安心できたんだよ。それに私、言ったよね。“護しか見えてないから・・・“って、伝えたよね。なのに、その不安も言ってくれなかった・・・。それって、私が、頼りなかったから言えなかったんだよね」


 私は、自分の想いを伝える。


「あの時は、自信が無かったんだよ。本当に詩織は、オレの事を頼ってくれてるのか・・・」


「護が、傍に居るってだけで、強くなれたし、安心して自分でいていいんだって、思えてきた矢先にあんな事が、遭ったから・・・。私、また居場所がなくなったんだって思った」


 私の言葉に護が、動揺する。


「私、あの時、彼女の告白も、彼女が護に甘えてる姿を目の当たりにしちゃって、“ああ、ここは、私の居場所じゃないんだ“って、思い始めて、優兄のところへ逃げた」


 私は、俯きながら、話す。


 思い出したくない。


 過去の事。


 でも、今、向き合わないで、何時向き合うんだ。


 自分に言い聞かせる。


「私って、物凄く臆病なのに気が強く見えるみたいで、何時も誤解されてる。本心を知りたいのに逃げ出してしまう自分が居るの。だから、ちゃんと言ってくれないと、私もどうしたいのか、わからなくなって、嫌なことから逃げ出してしまうの。今だって、本当は、ここから逃げ出したくて仕方ないの。でも、逃げてばかりじゃ、解決出来ないから、立ち向かおうって決めた」


 握っていた手が、微かに震えてる。


 その手に重ねるように護のテ手が、置かれる。


 エッ・・・。


 私が、顔をあげると護の優しい笑顔があった。


「知ってる。臆病なのに気が強くて、泣き虫な詩織が、今でも好きだ」


 エッ・・・。


「もし、今、付き合ってる奴が居ないなら、もう一度、やり直したい。今度は、守るだけじゃなくて、一緒に歩んで欲しい」


 って、優しい声で言う、


「本当に・・・、 本当に私で、いいの?」


「“私で“じゃなくて、お前じゃなきゃ駄目なの」


 嬉しくて、涙が溢れてくる。


「泣くなよ」


 護が、そう言って私を抱き寄せ、胸の中で泣かせてくれた。




 一頻り泣いた後で、電話が鳴る。


「私だ」


 慌てて鞄から電話を取り出して出る。


『詩織、遅い。早くしろ!』


 その声は、龍さんだった。


 私は、時計を見た。


 ヤバイ。


 サプライズの時間までそんなにない。


「ごめんなさい。直ぐ行きます」


 慌てて席を立つ。


 そんな私に護が。


「どうしたんだ?」


 って、声をかけてきた。


「二次会のサプライズ。優兄が高校の時に組んでたバンドメンバーとセッションすることになってて・・・」


「そうなのか?その前に、その顔直してこいよ」


 護に言われて、お手洗いまで急いでいき顔を洗って、化粧を直した。


 そこを出ると護が待っててくれた。


「ほら、急ぐんだろ」


 護が、私に手を引いて走り出した。


 でも、ヒールを履いてるから、走りずらい。


「あっ・・・」


 足が縺れて、転びそうになる。


「ったく」


 護が、とっさに支えてくれる。


「このままじゃ、間に合わねぇな」


 そう呟いたかと思ったら、いきなり抱き抱えられてる。


「ち・・・ちょっと・・・」


「しっかり掴まっとけよ」


 護の首に腕を回す。


「オレの車で送る」


 駐車場まで一気に駆け出した。

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