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反省

 披露宴が始まり、二人のエピソードやらが紹介されていく。


『ここで、スピーチをお願いします。新郎のご友人で、玉城護様。よろしくお願いします』


 司会の人が言う。


 優兄の方は、護だったんだ。


 彼が、席を立ちマイクスタンドのところにたつと。


『只今ご紹介預かりました、玉城です。優基、里沙ちゃん。結婚おめでとう。優基とは、中学からの親友で、色々バカなことをやって来たが、今、一番幸せそうで、よかったよ。これからも、二人仲良くな』


 淡々とした、挨拶だった。


「あれ?中学からって、違うよね」


 私の呟きが聞こえたみたいで、勝弥兄が。


「ああ、優基は、俺達と同じ中学は嫌だって、護と同じ中学に行ったんだよ」


 教えてくれた。


 あっそうか。


 私が入学した時、優兄居なかったっけ。


「あいつ。俺らと比較されるのを嫌がってたからな・・・」


 隆弥兄が、付け足す。


 ふーん。


 そうだったんだ。


『続きまして、新婦のご友人でありながら、新郎の妹、詩織さん。お願いします』


 あ、呼ばれちゃった。


「ほら、行ってこい。優しい兄ちゃんにちゃんとお礼を言うんだぞ」


 双子の兄が、微笑む。


「はーい」


 席を立って、マイクスタンドの前に立って、お辞儀する。


「ただ今、ご紹介に預かりました、詩織です。

里沙とは、幼稚園からの付き合いで、勉強、運動、時には、喧嘩をしたりして、互いを高めあった仲です。だから、お互いに隠し事をしても直ぐにバレてしまい、その都度、二人で相談して決めたりしてました。里沙は、辛いことでも笑って払い除ける凄く芯の強い子です。そんな里沙だから、優兄が惚れたんだと思います。里沙、優兄、本当におめでとう」


 それだけ言って、お辞儀する。


 自分の席に戻ると。


「詩織、簡潔すぎ」


 隆弥兄に言われる。


「でも、あまり長くしてもさぁ、聞く方も疲れるじゃん」


「まぁな」


 その後も、お色直しやら、両親に花束贈呈やらで、二人は忙しく動き回ってる。


 里沙、大丈夫かな。


 私は、里沙の方に視線を投げ掛ける。


 心なしか、顔色が悪そう。


「隆弥兄。ちょっと、里沙のところに行ってくる」


「あっ、ついでに写真撮ってこいよ」


 カメラを持たされる。


「撮れたらね」


 私は、それだけ言って里沙のところへ行く。




「里沙、顔色が悪いけど、大丈夫?」


 私を見て、里沙が。


「詩織・・・」


 呟く声になる。


「少し、外の空気吸いに行く?」


 里沙が、小さく頷く。


 里沙の横に移動して、里沙に手を貸す。


 それに気づいた優兄が。


「大丈夫か?」


 席を立って、里沙に寄り添って、来ようとしたから、私はそれを制した。


「優兄、主役が二人とも抜けたらダメだよ。里沙は、私が外に連れていくから、優兄は残ってて」


「あ、ああ・・・」


 優兄が、心配そうに里沙を見つめる。


「優兄、しゃんとしなよ。里沙には、私がついてるから・・・」


「わかった。何かあったら、教えて・・・」


 優兄の心配そうな声を後にして、式場からでた。


 外の空気を吸うと、里沙の顔色が徐々に良くなっていく。


「大丈夫?」


「うん」


「とりあえず、控え室で休んでいこう」


 私は、ゆっくりとした足取りで、里沙を控え室に連れて行った。






「詩織、ごめんね」


 里沙が、弱々しく言う。


「何が?」


 明るく答える。


「披露宴、楽しめてないでしょ?」


 そういう事か・・・。


「里沙、気にしないで。親友が辛い思いしてるときに楽しんでなんていられないよ。それにね、私は、頼られるの意外と好きなんだよ」


 笑顔で答えた。


「ありがと、詩織」


 里沙が、やっと笑顔を取り戻した。


「披露宴の間、ずっと顔が強ばっていたから、心配してたんだよ」


「そんなにひきつってた?」


 里沙が、微笑みながら言う。


「うん。緊張してるのかなぁって思いながら、どうやって、笑わそうか考えてた」


「うん。物凄く、緊張してた。だって、優基さんの親友って、思ってた以上に居るんだもん。それに妹でもある詩織も綺麗だから、比較されるんじゃないかって・・・」


 苦笑する。


「何言ってるのよ。自信持ちなさい。優兄は、里沙を選んだんだよ。里沙となら、一緒にやっていけると思ったから、優兄は選んだんだから・・・」


 私は、自分で言っておきながら、心に引っ掛かりを覚えた。


 前に彼が、言った言葉とにてる。


 “オレは、詩織がいいんだ。お前さえ傍にいてくれたら、それで構わない“


 って・・・・・・。


 思い出したら、涙が溢れてきた。


「詩織、どうしたの?」


 里沙に心配かけちゃいけない。


「ううん。何でもない」


 私は、ハンカチで涙を拭う。


「・・・でもさ、何で、護さんと別れたの?」


「それ、前にも話したよ」


「うん。あたしとしては、あの頃の詩織達が目標って言うか、憧れだったんだよ」


 私たちが、憧れ?


「凄く、幸せそうにしてる姿が、目に焼き付いてる」


「そうなの?」


「うん。あの時の詩織さぁ、護さんの事を考えながら、自分の役割を一生懸命やってたじゃんか。あたし、そんな詩織を見てさぁ、羨ましく思ったもん。好きな人と一緒に過ごす時間が沢山あるのに。なんで話し合わなかったんだろう?ってその時は思ったんだよ」


 里沙の言葉に胸が痛くなる。


 そうなんだよね。


 あの時は、自分の事で精一杯で、他の事にまで、気が回ってなかった。


 それに、なんだか、すれ違っていた気がする。


 お互いが、お互いを想いあってて、言えずにいたんだ。


「里沙、ありがとう」


「どうしたの、改まって?」


「ううん。何でもない」


 不思議そうな顔をしながら、私を見る。


「そろそろ、大丈夫そうね」


「うん。詩織と話してたら、落ち着いたよ」


 可愛い笑顔を見せてくれる。


「じゃあ、戻ろうか?」


 私は、里沙の手をとって、式場へ舞い戻った。

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