表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/53

兄の結婚式

 それから、一ヶ月後。


 優兄と里沙の結婚式が行われた。


 私は、里沙の控え室にお邪魔していた。


「里沙、おめでとう。メチャクチャ、可愛いよ」


 私の目の前には、ウエディングドレスに身を包んだ、里沙がいる。


「ありがとう。今日のスピーチよろしくね」


 って、嬉しそうに言ってるけど、ちょっと顔色がすぐれない。


「はいはい、わかってます。お義姉さん」


 私も、少し茶化し気味に言う。


「やめてよ。今まで通りでいいよ、詩織」


 里沙が、恥ずかしそうに言う。


「えーーッ。でも、優兄と結婚するんだから、やっぱりお義姉さんでしょ?」


「確かにそうなんだけど・・・。でも、詩織も直ぐ伯母さんだよ、ね」


 里沙に言われて、これまた笑うしかない。


「本当だよ。里沙のお腹に新しい命が芽生えてるなんて、ねぇ・・・。それ知ったときは、本当にビックリしたんだからね」


 優兄から聞いたときは、驚きすぎて、何も言えなかった。


「そうだね。あたしもさ、まさか赤ちゃんが宿るなんて、思ってなかったよ」


 幸せそうな里沙の顔。


 まだ、お腹は目立ってはいないが・・・。


 “お腹が目立つ前に式を“と優兄が言ったみたいで、急に決まった結婚。


 でも、凄く優しそうな顔の里沙を見てると、自分の事のように嬉しくなる。


 コンコン。


 ドアが、ノックされる。


「はい」


 里沙が返事をする。


「入るよ」


 白のタキシード姿の優兄が入ってきた。


「可愛いな、里沙」


 甘い声で呟く優兄。


「優基さん。それ、誉めすぎだから・・・」


 里沙が、近付いてきた優兄に言う。


「でもさ、詩織がウエディングドレスを着るときは“可愛い“じゃなくて“綺麗“って言葉なんだろうな」


 里沙が、羨ましそうに言ってくる。


「そう?まぁ、どっちにしても、ウエディングは、まだまだ先だよ。相手も居ないしね」


 苦笑しながら、答えた。


「じゃあ、私は先に教会の方へ行くから、転ばないように優兄にしっかりエスコートされておいでね」


 私は、二人に軽く手を振って、部屋を出た。




「詩織、どこに行ってたの?」


 お母さんが、私を見つけるなりに聞いてきた。


「どこって、里沙のところだよ。私たち、幼稚園の時からの友達だもん。それに、里沙の事も心配だったし・・・」


 私は、お母さんの横に並んだ。


「そっか・・・。でも、この年で初孫って、なんか複雑だよ」


 お母さんが、苦笑してる。


「詩織。お前、ずいぶん会わないうちに女らしくなったなぁ・・・」


 って・・・。


 この声は、隆弥兄か。


 隆弥兄は、教師として働きだしたとたん、家を出た。


 だから、実家に戻っても隆弥兄と顔を会わすことはない。


「隆弥兄こそ、一段とカッコよくなったんじゃない。もしかして、彼女でもできた?」


 隆弥兄に探りを入れてみる。


「仕事が忙しすぎて、それどころじゃねぇよ」


 隆弥兄が、苦笑しだす。


「・・・で、護とは、相変わらずなのか?」


 心配してくれてるんだ。


「そうだね。一ヶ月前にばったりと顔を会わせたけど、その時に酷いこと言っちゃった」


「何言ったかは知らんが、その時の事反省してたらどうする?」


 優しい声で聞いてきた。


「その時は、その時でちゃんと向き合って話し合うつもりでいるけど・・・」


 あの後だから、他に彼女でも作ってると思うけどね。


「そっか・・・。詩織の気持ちがはっきりと決まってるなら、俺は何も言うことない。でもな、俺は、護と元に戻って欲しいって、思ってる。あいつぐらいだからな。お前を任せられるのは・・・」


「隆弥兄・・・」


 それ以上、言葉が出てこなかった。




 それから、優兄と里沙の結婚式が、厳かに行われた。


 幸せそうな里沙。


 よかったね。


「里沙ー!おめでとー!」


 教会の外で、フラワーシャワーの中、優兄が里沙を気遣いながら、抱き抱えて歩いてく。


「詩織。そろそろ、ブーケートスが始まるみたいだけど、行かなくていいの?


 勝弥兄が、私の横に来て言う。


「うーん。行かなくても良いや。今貰っても、相手が居ないしね」


 微笑みながら言う。


「そっか・・・。俺の彼女は、行ったみたいだけど・・・」


 勝弥兄が苦笑してる。


「しかし、優基に先越されるとは、思いもよらなかったがな」


 目を細めて優兄を見る勝弥兄。


「まぁ、優基も大学に行きながら、曲作って、認めてもらってるしな」


 隆弥兄が言う。


 あっ・・・。


 隆弥兄が、優兄を褒めてる・・・。


 珍しいなぁ。


 後で、こっそり教えよーと。


「どうした、詩織?」


 不思議そうな顔で、私を見る。


「何でもない」


 私は、笑顔で言う。


「ほら、披露宴始まる前に少し休憩取りなよ。スピーチもあるんだろ」


「うん。悩みに悩んだあげく、シンプルにしたんだ」


「そうか。楽しみにしてる」


 微笑む隆弥兄。


「じゃあ、私、少し休んでくるね」


「おう」


 それだけ言って、披露宴会場のロビーに移動した。


 ロビーで一人寛ぐ。


 あっ・・・。


 始まる前に化粧直しいておかないと・・・。


 席を立って、お手洗いにいく。


 鏡の前に立って、化粧を直していく。


 そこに。


「うわー。詩織ちゃんだー」


 聞きなれた声がした。


 鏡越しに目があった。


「久し振りだね、忍ちゃん」


 振り向き様に言う。


「うん。高校卒業以来だもんね」


 彼女は、いつものように笑顔で言う。


「そういや、佐久間君、元気?」


「わかんない」


 忍ちゃんの顔色が、変わった。


 聞いちゃいけなかったのかな?


「どうしたの?」


「うん?まぁ、ここ最近彼も忙しくて、会ってないんだよね」


 明らかに落ち込んでるよ。


「もしかしたら、今日は来てるんじゃない?里沙、生徒会全員招待したって言ってたし・・・」


 そう言うと、忍ちゃんの顔が綻んだ。


「ホント?」


「うん」


「じゃあ、探してみる」


 って、飛び出していった。


 忙しいなぁ・・・。


 私も化粧直しを終えて、出る。


 と、人とぶつかりそうになった。


「ごめんなさい」


 私は、慌てて言う。


「その声、詩織?」


 顔をあげる。


 優しい笑顔を浮かべた、護が居た。


 この間よりも、カッコよくなってる。


 って、見とれてる自分がいる。


「どうしたんだ?ボーとして・・・」


「あ、うん。何でもないよ」


 目線を反らした。


「詩織。披露宴が終わったら、話したいことがある」


 急に真顔で言う。


「時間、あるか?」


「うん。大丈夫だけど・・・」


「じゃあ、その時に・・・」


「わかった」


「玉城ー」


 呼ばれて、彼は行ってしまった。


 ドキドキした。


 本人を目の前にして、今でもはっきりわかる。


 私は、今でも護の事が好きなんだ。


 でも、司は、私の事嫌いになったよね。


 今さら、考えたってしょうがない。


 今は、スピーチの事だけを考えようっと。


アクセス10000件突破しました。


こんな拙いストーリーを読んでいただき、ありがとうございます(T^T)


まだ、続きますが、お付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ