再会
そして、月日が流れた。
私は、大学二年生になった。
学校も家から離れたところを選んで、一人暮らし。
・・・は、危ないからって、寮に入れられた。
「ねぇ、詩織。今から合コンがあるんだけど、メンツが来てくれないかなぁ?」
友達に誘われて。
「うん、いいよ」
と、頷いた。
「よかった。助かる」
護と別れてから、他の異性とも付き合ったりもした。
だけど、やっぱり、彼の事を忘れられないでいる自分がいる。
何時までも、想ってるなんて、女々しいとは思てるんだけど・・・。
嫌いで別れた訳じゃないから、気になるっていうのが本心。
「詩織、急いで。時間がない」
急かされて、連行される。
着いた場所は、お洒落なカフェテラス。
「遅くなりましたけど
友達が、そう言って中に入る。
私もその後ろに続いて入り、会釈する。
回りを見渡す。
五対五の合コンなんだ。
「全員揃ったところで、自己紹介しようか」
私たちは、空いてる席座る。
「じゃあ、一番最後に入ってきた君から、時計回りで・・・」
一番最後って、私か・・・。
「紫織です。趣味は、音楽です。よろしくお願いします」
軽く頭を下げる。
その時、視線を感じた。
その視線を辿ると、護の姿が・・・。
護も、驚いてるみたいだった。
私は、視線をそらした。
もしかして、今日の合コン相手って、S大のサッカーサークル?
相手を聞いてから来るんだった。
今さら後悔しても、仕方がない。
チラッと見ただけなんだけど、別れたときより、カッコ良くなってる。
二年の月日って、大きいな・・・。
こんな風に再会したくなかったけど・・・。
今更かもしれないけど・・・。
「ねぇ、詩織ちゃん。何飲む?」
一通り自己紹介が終わり、隣の人がメニューを渡してくれる。
そうだなぁ。
悩んでたら。
「はい、ミルクティー」
横から、カップが渡される。
見上げると、護が真顔で立っていた。
「何時も、それだっただろ・・・」
意味深な言葉を添えられた。
回りも、私たちの様子を伺ってる。
って言うか、私の横を陣取る護。
「あっ、うん。ありがと・・・」
私は、戸惑いながら、それを受け取った。
「何、何?玉城と知り合い?」
知られてない?
これは、好都合かも・・・。
「高校が一緒だったのと、お兄ちゃんの友達だから・・・」
嘘は、ついてない。
「そうなんだ。で、詩織ちゃん、音楽って、何聞いてるの?」
「ジャンル問わずかな。聞いてみていいなって思った曲は、大抵歌ってる」
「そうなんだ。凄いな」
戸惑いながら言う彼に。
「そうなんです。詩織ったら、スカウトまでされて、断ってるんですから・・・」
友達が、茶々を入れる。
今、そんなこと言わなくても・・・。
「そうなの。だったら、この後カラオケ行かねぇ?」
「いいですよ」
私も、即答する。
「オレも・・・」
って、声が・・・。
横に陣取ってた護だった。
その後も皆が、声をあげたため。
「じゃあ、全員でカラオケ行くか?」
早々に切り上げ、場所移動。
カラオケボックスに着くと。
「詩織。リクエストしていい?」
友達が、早速リクエストしてくる。
「いいよ」
私は、苦笑しながら頷く。
リクエストされた曲をセレクトして、トップバッターで歌わされた。
「お粗末様でした」
私は、そう言ってマイクをテーブルに置いた。
「流石、バンドのヴォーカルやってるだけある」
友達が、声をあげる。
「お世辞言われても、何もでないよ」
「お世辞じゃないよ」
って言葉が返ってきた。
「詩織ちゃんの後って、歌いにくいなぁー」
言いながら、イントロが流れてくる。
アハハ・・・。
苦笑いしか出てこない。
一通り順番に歌い終わって。
「詩織。この曲歌える?」
って言われた曲は、優兄が作った曲だった。
「歌えるよ」
最近、優兄の曲が、あっちこっちで流れてる。
楽曲提供だから、優兄本人は歌ってないけど、よくデモを頼まれるから、大抵は歌える。
「この曲難しいよなぁ・・・」
「そうそう、それでいて、胸を打つんだよ」
優兄の曲が、評価されて、嬉しいなぁ。
私は、そう思いながら歌う。
「もう、何でそんなに上手いかなぁ・・・」
呆れられてる。
「そう言われても・・・」
困ったなぁ。
「その歌を上手く歌うコツとかある?」
そう聞かれて。
「じゃあ、作曲者に聞いてみるから・・・」
私が言うと、護以外のメンバーが驚いた顔をする。
「作曲者に聞くって・・・」
「実は、この曲作ったの私の兄なんです」
私は、そう言いながら携帯を取り出して、電話する。
ツーコールで、優兄が出た。
『どうしたんだ、詩織?』
電話の向こうで、不思議そうに言う優兄。
「優兄。あのさぁ、最近かかってる曲の歌うコツってある?」
『今さら何言ってるんだよ。お前、そのデモ歌ってるだろうが・・・』
呆れた声が返ってくる。
「仕方ないじゃん。皆、そんな事知らないんだから・・・」
って言葉に優兄が反応した。
『お前、もしかして合コン?』
「もしかしなくても・・・」
『仕方ないなぁ。一回しか言わない。彼女、もしくは、好きな人の事を思い浮かべて歌うべし。上手い下手関係無しでな』
私は、そのまま口にして伝えた。
それを聞いた回りが、ざわつく。
『ところで、詩織。もしかして、そこに護居るか?』
優兄が、確認するように聞いてきた。
「居るよ」
『だったら、変わってくれ』
「わかった」
私は、護のところに行くと。
「玉城さん。兄が変わって欲しいって・・・」
そう言って、携帯を渡す。
「詩織。本当に玉城さんとは、先輩後輩になかなの?」
友達が小声で聞いてきた。
「そうだよ。兄と凄く仲がいいから、よく家に来てたもの」
嘘ついてる自分がいる。
「詩織が、玉城さんに興味ないなら、私、狙っちゃおうかなぁ・・・」
やっぱり、そうくるよね。
「うん、頑張って・・・」
私は、笑顔で応援する。
けど、心のどこかで、何かが引っ掛かっていた。
「ゴメン。ちょっと、外の空気吸ってくるね」
友達にそう告げて、外に出た。
ふー。
つい、溜め息をつく。
なんか、私一人が目立ってる気がする。
自動販売機で、冷たいものでも買って飲もうっと・・・。
そう思って、歩き出したら、腕を掴まれた。
振り返ると、護だった。
「どうしたんですか、玉城さん」
冷静に言ったものの、内心、ドキドキで仕方ない。
誰かに見られていないか、って・・・。
「詩織。そんな、他人行儀な言い方、やめてくれないか」
護が、真剣な面持ちで言う。
「私たち、別れてるんだし・・・。そんな親しい話し方は・・・」
言いかけた私の言葉に。
「オレは、別れたつもりない!」
エッ・・・。
私は、ただ驚くだけだった。
「一方的に言われて、納得すると思うか?それも“好きだからこそ別れる“何て、言い方されて、どんだけ悩まされた事か」
苛立ったように言う。
でも、私の想いは、優兄を通して護に伝えたはずだよね。
もしかして、優兄伝えてない?
「じゃあ、もっと悩めばいいじゃない。私は、それしか言えないし・・・」
言って、その場を離れようとした。
「詩織。そろそろお開きにするって」
「わかった」
私は、護の腕を振り払った。
「ゴメン・・・」
彼の顔を直視できず、そのまま部屋に入った。
部屋に入ると、男性人が何やらやってる。
私が、首を捻ってると。
「誰をお持ち帰りするか、相談してるんじゃないの?」
友達が言ってきた。
私は、持ち帰りされるつもりはない。
先手、必勝で。
「すみません。お先に失礼します」
私は、代金だけ置いて、部屋を出た。
「エッ・・・っちょ・・・ちょっと、詩織ちゃん・・・」
って声が、後ろから聞こえてきたけど、気にせずにいく。
あっ・・・。
携帯・・・。
「詩織、ちょっと待て。これ返しそびれた」
護が、私の後を追って出てきたみたい。
「あ、ありがとう」
私は、携帯を受けとると。
「じゃあまた、どこかで会えるといいね」
それだけ告げて、歩き出した。