表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/53

決意

 私は、一旦家に戻り、自分の荷物を纏めた。


 こんなにあったんだね。


 自分の荷物の多さにビックリした。


 そうそう。


 護から貰ったもの、全部ここに置いていこう。


 私は、最初に貰ったブレスレットから順に並べていく。


 こんなにもらってたんだ。


 どれもが、懐かしい思いでとなってる。


 お揃いで買った、携帯ストラップも・・・。


 そして。


 “今までありがとう。

  さようなら 詩織“


 最後の手紙を一緒に添えた。


 もう、この部屋ともさよならだね。


 私は、もう一度見渡して、部屋を出た。


 玄関の鍵をして、ドアポストに入れる。


 さようなら・・・。


 これで、本当にさよならだね。


 私は、荷物を持って、家に戻った。




「ただいま」


 私は、玄関を開けて言う。


「あら、まぁ。帰ってきちゃったのね」


 お母さんが、微笑む。


「ごめんね」


 私は、苦笑する


「いいよ。気にしないの。詩織の気持ちもわかるからね」


 お母さんは、優兄に聞いてるからか、そう言ってくれた。


「本当に、詩織は・・・。優しすぎだよ」


 お母さんに抱き寄せられる。


 エヘヘ・・・。


 私が、無理に笑顔を作ると。


「もう、我慢しなくていいよ。一杯泣いて、忘れちゃいなさい。いつもの詩織の笑顔を見せて」


 お母さんの優しさに、涙が溢れてくる。


「一つ、聞いてもいい?」


 お母さんが、優しい声で聞いてきた。


「うん・・・」


「護君の事、嫌いになったの?」


 その質問に首を横に振った。


「嫌いに・・・なったんじゃ・・・無いよ。好きだから・・・お別れする事に・・・したの」


「どうして?好きなら、何で話し合わないの?離れようとするの?」


「うん・・・。私が、好きになったのは、護の笑顔だったの・・・。でも、今の私の前での笑顔は・・・・・・、本当の笑顔じゃないって・・・。今日、改めて・・・思ったの・・・。だから・・・私が、いない方が、本当の・・・笑顔を見せて・・・くれるから・・・」


 正直な気持ちをお母さんに告げた。


「そうなの?お母さんには、そう見えないけど・・・。詩織の事が好きすぎて、一緒に居たいってのと、詩織に甘えてもらうには、どうしたらいいのかって、いつも何かを背負ってる感じに見えたけど・・・」


 お母さんから見たら、そうなのかなぁ・・・。


「私・・・。間違ってるのかなぁ・・・」


「どれが正解だなんて、誰にもわからない。でも、詩織が出した結論なら、そうすればいい。一緒に居ても辛いと思うなら、離れるのもありだと思う」


 お母さんが、優しい声で言ってくれる。


「詩織は、もっとメンタルを強くしないとね。それから、護君は納得してるの?


 首を横に振って、答える。


「そっか・・・。でも、護くんと会うことは?」


「うん、顔も会わせるつもり無いよ。今の私には、彼に会う資格ないよ」


「自分で、一線引いたんだね」


 私は、その言葉に頷く。


「隆弥とお父さんには、お母さんから伝えておくから」


「うん。ありがとう。それから、ごめんなさい」


「気にしない。詩織は、私の娘なんだから・・・。今日は、一緒に色々な話をしよう。そろそろ、進路も決めておいた方がいいしね」


 お母さんが、話を変えた。


「うん」


「その前に、その荷物、部屋に置いてらっしゃい。それから、話をしよう」


 私は、お母さんに促されて、荷物を持って、部屋に行く。


 荷物を片付けていたら、携帯が鳴った。


 着信相手は、護だった。


 私は、それを無視していた。


 何度門何度も。


 駄目だ・・・。


 私は、一度だけ、その電話を取った。


「・・・もしもし」


『詩織。もう一度だけ、話し合いたい・・・。“玉城くん。何電話なんかしてるのよ。早くこっちにおいでよ“』


 この声は・・・。


『詩織。オレは、お前と別れるつもりはない』


「ごめん。護の方はなくても私の方が、無理なの・・・」


『理由は?』


「今は、言えない。でも、護の事、嫌いじゃないから・・・」


 私は、それだけ告げて電話を切った。


 その後も、護からの電話がかかってくる。


  もう、これ以上は無理だ。


 私は、携帯を持って、下に降りる。


「お母さん。携帯解約してくれるかなぁ」


「どうしたの、急に?」


 私は、携帯をお母さんに渡した。


 また、着信。


 それをお母さんが出た。


「もしもし・・・」


 お母さんが、私の方を見る。


 そして。


「護君、ごめんなさいね。詩織の決意は固いみたい。この電話も解約するって、言ってるから・・・じゃあ・・・」


 って言って、電話を切る。


「本当にいいのね」


 私は頷いた。


「じゃあ、今から、解約しに行くわよ。そのついでに買い物に行くからね」


「その前に優兄には、連絡入れたい」


「そうだね。優基には、詩織から伝えてあげないとね」


 お母さんから、携帯を受け取って、優兄に電話する。


 ツウコールで、優兄が出た。


『詩織。どうした?』


 相変わらず、優しい声だな。


「うん、あのね。護と別れることにしたから・・・」


『したからって・・・。ちょっと待て、それって・・・』


「優兄には、色々迷惑かけたけど・・・ありがとね」


『お前、それでいいのか?あんなにも好きだったじゃんか・・・』


 心配そうに言う、優兄。


「うん。今だって、好きだよ」


『だったら・・・』


「好きだから、別れるの。あんな辛そうな笑顔の護は、見たくないから・・・」


『辛そうって・・・』


 不思議そうな声で言う。


 多分。


 優兄の近くに護が居るんだろう。


「今日、優兄が出掛けた後、護の学校に行ったんだ。でね、私が見たかった笑顔をあの人には見せていた。私には、あんな笑顔見せてくれなかった・・・。何時も、何か辛そうな笑顔で・・・。私には、話せないんだって。だったら、一緒に居ても辛いだけなら、別れた方がいいんだって・・・。そこに、護も居るんでしょ。だから、私の事、忘れてって伝えておいて。じゃあ・・・」


 それだけ言って、電話を切る。


「詩織・・・」


 傍で見ていたお母さんが、優しく抱き締めてくれた。


「詩織の気持ち、伝わるといいね」


 私は、頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ