自分の居場所
あーあ。
私は、一体どこに帰ればいいのだろう?
実家に行ったら、護が隆弥兄に問い詰められ、かといって、あの家には、私の居場所がない・・・。
だったら・・・。
私の居場所って、どこなんだろう?
私は、自分の居場所を見失っていた。
公園のベンチに座り込む。
ハァー。
私の居場所って、どこにもないんだなぁ。
誰に頼ればいいんだろう?
こんなにも胸が、苦しくなるのって、久し振りかも・・・。
あの時も、護が助けてくれた。
でも、今回は、そんなことできない。
彼は、私が居なくなったことをまだ、知らないから・・・。
私は、前に里沙に言われた事を思い出した。
携帯を取り出して、電話を掛ける。
優兄・・・。
お願い。
私を助けて・・・。
『はい・・・。詩織、どうした?』
優兄の優しい声。
「優兄・・・。私、何処に行けばいいんだろう?」
『どういう事だ?』
「私、・・・自分の居場所がわからなくなっちゃった・・・」
『居場所が、わからないって・・・』
優兄の心配そうな声。
「うん・・・。自分が、どこに帰ればいいのか・・・わからなくなった・・・」
『ちょっと待った。詩織、今、何処にいる?』
優兄が慌て出した。
「・・公・・・園・・・」
私は、声を絞り出して言う。
『公園って・・・。わかった。迎えに行くから、そこを動くな』
優兄が、電話を切ってから、三十分ぐらいたったころ。
「詩織!」
優兄の声が聞こえた。
「優・・・兄・・・」
私は、優兄の顔を見たとたん、涙が溢れ出した。
優兄が、公園じゃなんだからって、優兄の家に連れてこられた。
「一体、何があったんだ」
優兄が、ホットココアを出してくれた。
私は、さっきの事を話した。
「そっか・・・。それは、俺も見たくない光景だなぁ・・・」
優兄がそう呟く。
「学校、どうする?」
「どうするって・・・言われても・・・」
行かないわけには・・・。
テストも近いし・・・。
私が、返事に戸惑ってると。
「護とは、会いたくないんだろ?二・三日なら、ここに居てもいいぞ。母さんには、事情を話して、学校に連絡してもらえばいいんだから・・・」
優兄が、私の頭を撫でる。
優兄・・・。
「どうする?ここから、学校行くには、ちょっと遠いだろ・・・。それに、隆弥兄に勉強教えてもらえばいうだろ」
「じゃあ・・・。御願いします・・・」
「畏まりました」
優兄は、そう返事をすると電話をかけだした。
「母さん。お願いがあるんだけど・・・」
優兄が、私の方を見たかと思うと。
「明日から、二・三日、詩織を俺が預かってるから、学校に電話してくれないかなぁ」
優兄の優しさが、胸に染みる。
「ちょっと、色々あって、今俺のところに居るから・・・。それから、護には言わないでくれると、助かるんだけど・・・」
優兄が、簡単に説明してる。
「うん・・・ 、うん。ありがとう、母さん」
そう言ったかと思ったら、電話を切っていた。
そして、また、電話をかけ始めていた。
「あっ、里沙ちゃん?今、大丈夫かな」
エッ・・・、里沙?
「あのさぁ。明日、明後日。詩織、学校を休むから、護の事を見かけたら様子とか、詩織にメールしてやってくれる?」
その言い方は、里沙が心配するよ・・・。
「うん。・・・多分ね・・・。だけど、かなり参ってるから。学校に行っても、機能しないと思うよ」
優兄が言う。
確かに・・・。
今の私は、なんにも出来ないかも・・・。
「それから、詩織のこと聞かれても、知らないって言っておいてくれるかな」
優兄が、里沙に釘を刺してる。
でも、私が護に会いたくないのは事実だから、仕方ないか・・・。
「・・・うん。じゃあ、お休み・・・」
優兄が、電話を切った。
「里沙ちゃんが、無理しないでねって、それから、いつでも相談にのってあげるからって・・・」
里沙・・・。
ありがとう・・・。
私は、胸が一杯になって、また涙した。
「今回は、まだ、フリーズしてないんだな」
優兄が言う。
「本当は、フリーズしかけてた」
「笑えんな。・・・で、お前はどうしたいんだ?」
「・・・わかんない・・・」
「わかんないって・・・」
そう言って、優兄が私の髪をグチャグチャにする。
「一様、護には明日電話するけど、何か伝えたいことあるか?」
私は、首を横に振った。
「そっか・・・」
今の私は、護に八つ当たりの言葉しか出てこない。
そんな言葉を言いたい訳じゃない。
自分の気持ちを整理してからじゃないと、とてもじゃないが、伝えられない。
「今日は、遅いから、もう寝な」
優兄の優しい手が、私の頭を撫でる。
「うん」
私は、床に横になって、目を瞑った。