お土産
今回は、少し短めです。
ゲートを潜り、園内に入る。
「さすがに家族連れが多いね」
「そうだな。はぐれるといけないから、手を繋ぐか」
護が、荷物の持っていない方の手を差しのべてきた。
私は、その手を握った。
「ほら、護、詩織行くぞ」
優兄に呼ばれて、少し焦った。
四人で、動物を見ながら、写真を撮る。
「そろそろ、腹減らないか?」
優兄が振り返る。
「そうだね」
里沙も頷く。
「詩織は?」
「私は、まだ大丈夫かな」
笑顔で答える。
「でも、食べれるときに食べておいた方がいいよ」
里沙が、気にしていってくれるけど・・・。
「うん。ありがとう」
本当にお腹は、空いていないんだよね。
「詩織。どうしたんだ?」
護が、私の顔を覗き込んでくる。
「どうもしないよ」
「そっか?さっきから、冴えない顔してるだろ。熱でもあるんじゃないのか?」
護の然り気無い一言だったけど・・・。
「大丈夫だよ」
語尾が強くなる。
「それならいいが。無理するなよ」
「うん・・・。皆が食べてる間、ちょっとお土産やさんに行ってるね」
私は、そう言って、護から手を離して、お土産売り場に足を伸ばした。
あれこれ見て回ってると。
そうだ。
生徒会メンバー、携帯持ってたよね。
お土産は、携帯ストラップにしよう。
忍ちゃんは・・・ウサギかな。
柚樹ちゃんは・・・パンダ。
凌也は・・・虎。
拓人君は・・・キリン?像?
佐久間君は・・・狼。
里沙のも買わないとおかしいよね。
里沙は・・・リス。
それぞれの顔や性格を思い出しながら、選んでいく。
それから、護とお揃いで自分用に白い狐を買おう。
私は、それらを持って、レジに並んだ。
「詩織。楽しそうだな」
護が、つまらなそうに声をかけてきた。
「うん。生徒会メンバーのお土産を選んでたんだ」
「ふーん。そうなんだ」
思いっきりふて腐れてる。
「ちゃんと、護のも私とお揃いで選んだよ」
「おっ、そうか。楽しみにしてる」
私の言葉に護が嬉しそうに言う。
分かりやすいんだから・・・。
「会計を済ましてくるから、待っててね」
護にそう告げて、支払いに行く。
「はい。護の分」
支払いを終わるのを待っててくれてる護に手渡した。
護が、直ぐに袋から出して。
「なんだ。狐かよ・・・」
不満の声をあげる。
「嫌なの?」
「嫌とかじゃなくて・・・」
護の言葉が、濁る。
「狐、可愛いじゃんか・・・」
「そうだけど・・・」
「私とお揃いが嫌なの?」
「そうじゃない・・・」
煮えきらない護に。
「もう、いいよ。隆弥兄にあげるから」
護から、ストラップを取り上げる。
「わかった。着けるから・・・」
そう言って、護が携帯を取り出して、ストラップを着ける。
「これで、一緒だね」
私は、この時は知らなかった。
護が、同じストラップを誰かに貰って、隠していたことなんて・・・。