甘酸っぱい想い
夕食を食べ終えて、ホテルに戻る。
だが、部屋割りで困っていた。
だけど、私の着替えは、護の鞄の中に入っている。
それでも、里沙が私と一緒の部屋がいいと言い張るには、何かあるのではと思いつつ。
「今回は、詩織と一緒の部屋がいいんです」
里沙が言う。
私は、優兄の顔を見る。
優兄も困惑していて、顔色を曇らせてる。
「じゃあ、里沙。私とロビーで話でもしようか…」
男二人を残して、私は、里沙を引き連れて、ロビーに向かった。
誰も居ないロビーの椅子に隣同士に座って。
「どうかしたの?」
私から切り出した。
「実は…。ちょっと、怖いんだよね」
「怖いって…」
「…うん…。優基さんが…」
優兄が?
「二人っきりになったら、絶対にしたがるよね」
里沙にとっては、そうなるのか…。
「里沙は、したくないの?」
私は、逆に聞いてみた。
すると、首を横に振る里沙。
したくないわけじゃないんだ。
「優兄って、優しくないの?」
「優しいよ。でも…、なんか、どうしたらいいのかわからなくて…」
混乱気味だね。
「私が言えることは、流れに任せることかな」
そう言うしかない。
「流れに任せる?」
不思議そうな顔をする里沙。
「うん、そうだよ。里沙は、優兄の事、心から想ってるんだよね」
里沙が、頷く。
「だったら、里沙は、その気持ちを優兄にぶつければいいんだよ。大好きだって気持ちで、優兄を受け入れてあげて…」
私の言葉に里沙の気持ちが、軽くなったのか、笑顔を見せてくれる。
「詩織は、怖くなかったの?」
「怖いって気持ちはなかったかなぁ。私は、逆に愛したいって、想ったんだよね。そして、何よりも愛されていたいって、欲張りになっていったかな」
「あたしも、優基さんを愛したいし、愛されたい」
里沙が、満面な笑顔で言う。
「あのね。一回抱かれたら、どんどん欲が出て、愛して欲しい気持ちばかりだと、負担がかかっちゃうけど、愛したいって気持ちを常に持ち続けることが、大切だと私は思うよ」
「そっか…。あたしは、誰よりも優基さんを愛してる自覚はあるんだよ」
「うん。その気持ち忘れないで。そして、里沙らしくいればいいよ」
里沙が頷く。
「ありがとう、詩織」
心からの笑顔を見せてくれる。
「じゃあ、戻ろうか…」
「うん」
里沙の気持ちも吹っ切れたようだ。
「お待たせ」
男二人も部屋の前で、話し込んでいた。
「あぁ、お帰り」
護も優兄も、そっけない返事を返してくる。
「…で、どうなった?」
二人は、そっちの方が気になったのか、直ぐに聞いてきた。
「護。一緒に寝よ」
私が、護の腕を引っ張る。
その言葉に、護も優兄も笑顔を向けてきた。
「優基さん。一緒にお願いします」
里沙が、恥ずかしそうに言う。
「あれ、“お願いします“なのかな?」
優兄が、意地悪なことを言う。
まぁ、確かにそうしないと里沙の敬語もとれないか。
「お願い、優基さん。一緒に寝て欲しい」
里沙が、真っ赤な顔をして言いながら、袖を引っ張ってる。
「はい」
優兄が、嬉しそうに返事をしてる。
よかったね、里沙。
「おーい、詩織さん。オレ達も部屋に入ろうぜ」
「はーい」
護に急かされるように部屋に入る。
部屋に入ったとたん、護に抱きつかれた。
「はー。落ち着く」
護が、耳元で囁く。
「ちょっと、護。こんなところで、抱きつかないでよ」
私が言うと。
「うん。でも、こうしていたい」
「そんなこと言ってると、プレゼントあげないよ」
私がそう言うと、護が飛び退いた。
「詩織のプレゼント、欲しい」
まったく。
私は、鞄に中から昨日買ったネックレスと手紙を出した。
「はい」
「ありがとう」
護が、嬉しそうに受けとる。
「気に入ってくれるといいんだけど…」
不安になりながら、言う。
護は、私が渡したプレゼントより、手紙を読み始めた。
うわーー。
滅茶苦茶、恥ずかしいんですけど…。
せめて、私が寝てからにして欲しかった。
「詩織、ありがとう。今の詩織の気持ちが素直に出てて、オレがどうすればいいのか、考えさせてもらえる内容だ」
「ごめんね。本当に矛盾だらけなんだよ。支えになりたいって思ってるのに、重荷になってるんじゃないかって思ってる自分もいる。頑張らなくちゃって、思ってても何をしたらいいのかと思い悩んでて…」
私が言いかけてると、護の腕にすっぽりと包まれた。
「詩織。お前の気持ちが、目茶苦茶嬉しい。詩織が甘えてこれないのは、どこまで甘えればいいのかわからなかったからなんだな。オレは、そんな詩織が好きだよ」
護が、耳元で囁く。
「そうだ。オレからも誕生日プレゼント。遅くなったけど…」
荷物の中から、取り出す。
エッ…。
今回は、何を…。
って、思ってたら。
プチダイヤのピアスだった。
「護。私、ピアスの穴開けてないよ」
「これは、穴空いてなくてもつけれるタイプのピアスなんだよ」
護が、説明してくれる。
そんなのがあるんだ。
「今、つけてやりたいけど、どっかいっちまうといけないから、明日の朝つけてやるな」
護が言う。
「昨日も言ったけど、今日は、沢山愛してやるから、覚悟しろよ」
忘れてた。
昨日、拒んだ分だけ、今日返されるんだった。
私は、どうなってしまうんだろう。
「とりあえず、一緒に風呂にでも入るか。嫌だって言っても聞く耳持たないからな」
護が嬉しそうに言う。
もう、逃げられないや…。
私は、覚悟を決めた。
護が、思うが侭にされようと…。




