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手紙に思いを込めて

家に着くと、部屋に行き私服に着替える。

護のプレゼントを鞄から取り出す。

コンコン。

ドアが、ノックされる。

わーーっ。

「詩織。ご飯食べよう」

慌ててプレゼントを隠す。

「うん。直ぐ行くよ」

そう答えて、部屋を出た。


「うわー。今日も美味しそう」

感嘆の声を漏らすと。

「お嬢様が、美味しそうに食べていただければと思いまして、頑張ってみました」

おどけて言う護。

「って、私が、お嬢様って、ありえないでしょ」

「何言ってるんだよ。オレにとっては、十分お嬢様だぞ」

真顔で言われて、照れてしまう。

「ほら、冷める前に食べようぜ」

「う…うん」

護に促されて、テーブルに着く。

手を合わせると。

「いただきます」

と、合掌する。

うーん。

やっぱり、おいしよ。

どう頑張っても、護には追い付ける気がしないんだけど…。

「どうした、詩織? 美味しくなかったか?」

護が、心配そうに聞いてきた。

「どれも美味しくて、私、護に追い付けないかもって思ったの…」

自分の声が沈んでいくのがわかる。

「何言ってるんだよ。今だけだって…。そのうち、オレよりも上手くなるから…」

そうなのかなぁ…。

「そんな顔してると、襲うぞ」

エッ…。

「なんってな。そう落ち込むな。明日から、旅行だろ。楽しまなきゃな」

護が、笑顔で言う。

「そうだね。楽しんじゃおうね」

私も、声をあげた。

その後も、色々と話をしたのだった。



後片付けを終わらせて、部屋に戻る。

手紙を書かなきゃ…。

そこにまたしても。

「詩織。お風呂入っちゃいなよ」

護の声。

「はーい」

私は、着替えをもって脱衣所に向かう。

うーむ。

書く時間、有るのかな。

そう考えながら、湯船にゆっくりと浸かる。

「詩織。オレも入っていいか?」

外から、声が…。

エーーッ。

「って言うか、入るな」

って、堂々と入ってくる護。

目のやり場に困り、背中を向ける。

「何、恥ずかしがってるんだよ」

護が、可笑しそうに言う。

「だって…」

いくら何でも、慣れないんだもん。

「…ったく。…で、今日は、何を隠してるのかな?」

ヴ…。

見破られてる?

「何でもないです。ただ、明日の旅行が楽しみで、しょうがないんだよ」

私は、ごまかすように言う。

「ふーん。それならそれでいいんだけど…」

思いっきり、疑われてるよ。

「その代わり、今日は一緒に…」

「ごめん。今日は、一人で寝たい気分なんだ」

護の言葉を遮るように言う。

「何で? オレは、詩織と寝たいなぁ…」

ウッ…。

そんな潤んだ目で見ないで欲しい。

でも、ここで折れたら、手紙が書けないし…。

「本当にごめん。その代わり、明日は一杯一緒に居るから、今日だけは、許して」

上目使いで頼むと。

「わかったよ。今日は、勘弁してやる。その代わり、明日はどうなるか知らないからな。覚悟しておけよ」

真顔で言われて、怖くなった。

明日、私は、どうなっちゃうんだろう?

「そんな不安そうな顔をするな。ちゃんと、愛してやるから」

って、クスクス笑い出す。

それが、余計に怖くて、不安になっていく。

それより、手紙を早く書かなくては…。

「護。私、先に上がるね」

湯船から上がる。

「待て、忘れもん」

護が、口付けをしてくる。

「ん…」

「本当は、このまま続きをしたいんだが、今日は、我慢しておくよ」

護が、意地悪な笑みを浮かべる。

私は、そのまま浴場を出た。


もう…。

ドキドキが、止まらないじゃない。

私は、顔を手で仰ぐ。

熱くて、たまらない。

部屋に行く前にお水飲まないと…。

パジャマを着るとキッチンに行き、冷蔵庫から水を取り出す。

それをコップに移して、飲む。

そして、部屋に行き机に向かう。

さっき、買ってきた便箋を取り出す。


“護へ

お誕生日おめでとう。

私は、護と出逢えて、とても幸せです。

いつも、私が思ってるのは、足手まといなんじゃないかって、不安になってる。

これは、護の事を信じてるとかじゃなくて、私が至らないばかりに要らない気を使わせてるんじゃないかって、勝手に思ってることなの。

護は、要らん心配だって言ってくれるんだろうけど、やっぱり私には、一番の問題なんだよね。

大好きだからこそ、重荷になりたくないし、甘えっぱなしも嫌なんだ。

私が、出来る範囲でフォローが出来たら、って思ってるけど、どうしたらいいにかがわからない。

矛盾してるのは、わかってる。

でも、これだけは信じて欲しい。


いつでも、護の事を愛してる。 詩織。



P.S. 世界で一番愛してます。“


今の私の気持ち、矛盾だらけだと思う。

でも、嘘を付くのは嫌だから、このまま封筒に入れて、プレゼントと一緒に手持ち鞄に入れる。

明日の為に、ベッドに潜り込んだ。

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