表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/53

突然の出来事

入学式前日。

私は、朝から制服に着替えて、身支度を整えていた。

「あれ、詩織。学校に行くのか?」

そんな私に護が、聞いてきた。

「うん。明日の準備しないといけないからね」

「オレを一人にしてか?」

護が、背中から抱きついてくる。

「仕方ないでしょ。これでも私は、生徒会長なんだから…。それに、他の新三年生が出てきてるのに私が行かないのはまずいでしょ」

「そっか。じゃあ、終わったら電話して。迎えに行くから」

「わかった」

私は、そう返事をして家を出た。


学校に向かう途中で。

「おはよう、詩織」

って、里沙に背中を叩かれる。

「あ、おはよう」

「新生活はどう?」

「うん。色々大変だけど、二人だから楽しいよ」

「そっか。あたしも、優基さんと毎日書かさず、連絡取ってるんだ」

里沙が、嬉しそうに言う。

「優兄が、そんなにまめだったとは、思わなかったよ」

「あたしも、そう思ってた。けど、時間を見つけて、メールしてくれたり、電話してくれるんだ」

「それって、のろけだよね」

「うん。詩織よりはましでしょ? 詩織は、一緒に住んでるんだから」

「それを言われたら、何て言えばいいんだか…」

私は、照れながら言う。

「…で、今日は、何するの?」

「うーんとね。取り合えず、男子は体育館で式の準備をしてもらって、女子はコサージュを造ってもらうつもり。終わり次第解散ってことでどう?」

「そうだね。そういえば、お祝いの言葉、もう考えたの?」

「それなんだけど、なかなかいい言葉が浮かばなくてさ。困ってるんだ」

って、正直に言う。

「そっか。あたしも一緒に考えてあげようか?」

「助かります」

私は、素直に里沙に言う。

「珍しいね。詩織が素直に言うなんて…」

「そうかな?」

「普段ならあり得ないよ」

そうかもしれない。

でも、今回は本当に手一杯なわけで…。

自分の事で、手一杯だったから、考えてる余裕なんか無かったんだよね。

「詩織。じゃあ、あたし先に教室に行くね」

「うん」

私は、里沙と別れて、生徒会室に行く。


生徒会室で、コサージュ用のリボンを確認。

白と赤のリボンとピンを個数分を確認すると、それらを各クラスに運ぶ。

「ごめんね。また、皆に協力してもらう事になって。作り方は、わかるよね。決められた数作り終わったら、帰っていいからね」

「はい。水沢さんも頑張ってね」

「ありがとう。後、リボンが足りなかったら、C組にあるから、取りに来てね」

私は、それだけ告げると、他のクラスに行き同じ事を繰り返した。

それが終わると、里沙に。

「里沙。体育館の方を見てくるから、お願いできる?」

「わかった」

里沙の返事を聞いて、体育館へ急ぐ。


体育館の入り口を潜って。

「皆、おはよう。今日は、手伝ってくれてありがとうね。会場の準備が終わったら、帰っていいからね」

大声で言う。

「水沢の頼みじゃ、聞かないわけないだろ」

って、返事が返ってくる。

「ありがとう。本当に助かります」

私は、笑顔で言う。

「それじゃあ、後ヨロシクね。凌也、拓人君、佐久間君」

「わかった」

三人の返事を聞いて、体育館を後にし、自分の教室に向かう。


「里沙。どう?」

「うん、順調だよ。けど、リボンが足りないかも…」

「そう。じゃあ、買ってくるよ。どれくらいいるかな?」

「白が二本と赤が三本かな」

「わかった。行ってくる」

私は、急いで、学校を出て商店街まで走る。

一軒の手芸店に入って、目的の物を買って、領収書を書いてもらい、学校に戻った。


はぁはぁ…。

息を整えてから、教室に入る。

「ただいま」

「お帰り。早かったね」

「うん。走ってきたからね。…で、どう?」

「そうだね。皆が手伝ってくれたお陰で、残り数十個ってとこかな」

里沙が、冷静に言う。

「詩織ちゃん。リボンある?」

柚樹ちゃんが教室に駆け込んできた。

「あるよ。幾つ要るの?」

「二本かな」

「はい」

私は、柚樹ちゃんにリボンを渡す。

「そっちは、どう?」

「うん。後十個かな」

「早いね。よろしくね」

「うん。詩織ちゃんも無理しないでね」

「ありがとう」

柚樹ちゃんが、教室を出て行くと、私も造り出した。


一人、また一人と帰りだした。

「里沙、ちょっといい?」

「なに、詩織?」

「私、体育館の最終チェックしてくるから、皆が作り終わったら、コサージュ生徒会室に運んでおいてくれないかな」

「いいよ。それぐらいなら、三人でやっておくよ」

「ありがとう」

私はそれだけ告げて、体育館に再び向かう。


体育館では、舞台の上で看板を掲げていた。

入学式のプログラムも掲示されてる。

周囲には、紅白の垂れ幕も飾られてる。

椅子も、きちんと整えられていた。

私は、舞台で作業してるメンバーに声を掛ける。

「お疲れ様」

「お疲れ。後、これ掲げたら終わりだ」

凌也が言う。

「ありがとうね。思ったより早く終わったね」

「そうだな」

「詩織ちゃん、そこから見て歪んでない?」

拓人君が聞いてきた。

「右下がりになってるよ」

私が答えると、右側が上がっていく。

「ストップ。その位置で固定して」

私の声で止まる。

私も舞台に上がって、そこから会場を見渡す。

明日は、ここに新入生とその保護者、それと在校生が入る。

そんな中で、お祝いの言葉を言わなければいけない。

新入生が、希望を持って過ごす事が出来るような言葉を私は、紡ぎ出せるのだろうか…。

「どうした、水沢?」

そんな私に佐久間君が、声を掛けてきた。

「うん。何でもないよ」

「それならいいけど…」

「水沢、終わったぜ」

凌也が声を掛けてきた。

「そう、ご苦労様。今日は、もう帰っていいよ。明日は、八時に集合よろしく」

「オッケー。じゃあ、また明日」

そう言って、メンバーは帰っていく。

私は、最後のチェックを行う。

窓は、開いてないよね。

目で確認する。

そして、体育館の入り口を閉めた。



鍵を職員室に返しに行き、生徒会室に向かう。

生徒会室には、コサージュの山が出来ていた。

「凄いね」

私が言うと。

「そうだね」

里沙や忍ちゃん、柚樹ちゃんも頷く。

「体育館の方はどうだった?」

「綺麗に並べられてたよ。やっぱり男子に任せると早いわ。もう帰って行ったよ」

私が言うと。

「じゃあ、私達も帰っていいかな」

「うん。明日は、八時に集合だからね」

「はーい。じゃあね」

「また、明日ね」

そう言って、柚樹ちゃんと忍ちゃんが出て行った。

「詩織。お祝いの言葉、考えようか」

里沙が、残ってくれる。

「うん。その前に電話しても良いかな?」

「いいよ」

私は、携帯を取り出して護に電話する。

『はい』

「護。後十分ぐらいで終わるから…」

『わかった。迎えに行くから、ちゃんと待ってろよ』

「はい」

それだけ言って、電話を切る。

「さて、どうしようか…」

里沙が、考え出した。

「取り合えず、゛新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます゛だよね」

「うん、その後だよね」

「゛期待に胸を膨らませて、入学された事だと思います゛」

「゛新しい生活で、不安もあるでしょう゛」

どうしよう…。

言葉が、紡ぎ出せない…。

二人で、顔を付き合わせていると。

truuuu…truuuu…。

携帯が鳴り出す。

「ごめん。あたしだ」

里沙が、電話に出る。

「もしもし…」

電話に出ている里沙を見ながら、言葉を考える。

゛ですが、己の目指す夢や希望に向かって突き進んでください。

私達も、応援しています゛

っと……。

「詩織、ゴメン。急用が出来ちゃった」

里沙が、電話を終えると私に言ってきた。

「いいよ、ありがとう。気を付けて帰ってね」

「本当にゴメン」

そう言って、里沙が部屋を出て行った。

私は、紙とニラメッコしだす。

すると、部屋のドアが開いた。

そこに居たのは、佐久間君だった。

「あれ、帰ったんじゃなかったの?」

私の質問には答えることなく、近付いてくる。

ただならぬ気配に、私は慌てて席を立って、後ずさる。

「ちょっと、どうしたの?」

私は、改めて聞くが、返事が無い。

その代わりに私との距離が縮まっていく。

私は、壁際まで追い詰められた。

「水沢。お前を俺のものにする」

エッ……。

「もう、逃げられないぜ」

そう言って、佐久間君が、壁に手をついて、私を逃げれないようにする。

「ちょっと、何するのよ!」

私は、彼を睨み付ける。

「何するって、お前を俺のものにするんだよ。あいつが居なくなったんだからな!」

って、顔が近付いてくる。

私は、顔を背ける。

が、彼の手が私の顎を掴んで正面を向かせる。

そして、唇が重なる。

やだ!

私は、両手で佐久間君を押し返そうとしたけど、その前に両手を捉えられてしまう。

その間も、キスは続く。

嫌だ!

私は、無理矢理顔を背けた。

でも、無駄だった。

佐久間君の手が、私のブラウスのボタンにかかる。

イヤーーー!

護、助けて……。

心の中で、護に助けを求める。

もう、ダメ……。

護……私…。

って、諦めかけてた時だった。

バン!!

生徒会室のドアが、乱暴に開け放たれた。

「詩織!!」

佐久間君の唇が、離れていく。

私は、その場にしゃがみこむ。

護が、私の方に駆け寄ってきた。

そして、抱き締めてくれる。

護の顔を見たら、安心したのと申し訳ない気持ちが入り乱れ、涙が溢れてくる。

「うっ…。くっっ…」

私は、護の腕に中で、声を殺して涙ぐむ。

「お前。詩織に何したんだ!」

護が、佐久間君に怒鳴る。

「俺のものにしようと…」

小声で言う佐久間君。

「何だと!詩織は、オレの事を好きなんだ!誰にもやるかよ!!」

護が、声を荒げて言う。

「佐久間君…。佐久間君が仕様とした事は、間違ってるよ。そんなんじゃ、私の心まで響かない。…し、あげられない」

私は、やっとの思いで、言葉を伝える。

「俺は……」

「まだ、何かあるのか!」

護が、彼に掴みかかる。

「護。やめて…。護が手を挙げる必要ないよ」

私は、護の手を掴む。

「ゴメンね。私、彼の事しか考えられないんだ。だから、私の事は忘れて、次の恋を探した方がいいよ」

突き放す言い方しか出来ない。

「……」

「そんなに諦めきれないなら…」

って、護が言ったかと思うと、いきなり唇を重ねてきた。

「んっ……」

って、何で、ここでキス?

「…っん…」

護の甘くて、深いキスに顔が熱くなる。

立っていられなくなって、護の服を掴む。

それが、合図の様に護が私の腰を支える。

護の唇が離れると、もう一度して欲しいとせがむ自分が居た。

「お前にこんな顔させる事出来るのかよ!」

護が、遠くで佐久間君に言ってるのが聞こえる。

「……」

彼は、無言で出て行った。



「護、私…」

「何も言わなくていい。お前の気持ちは、わかってるから…」

って、優しく頭を撫でてくれる。

「アイツに何されたか、言えるか?解消で来るかはわからないが、同じ事をして書き換えたらいい」

護が、優しく言う。

「キス…された…」

私は、小声で言う。

「どんな風に?」

「壁際に追い込まれて、逃げれない様に腕で通せん棒されて…、顎を掴まれて無理矢理キスされた」

「それから?」

「キスされたまま、ブラウスのボタンを外された…」

一通り聞いた護が、実践する。

でも、全然イヤじゃない。

彼のお陰で、徐々に無くなっていく残像。

「ありがとう。もう、平気だから…」

私は、笑顔で言う。

本当は、まだ、わだかまりが残ってる。

彼以外の人に下着姿とはいえ、見られた事に対して、申し訳ない思いが残る。

「そっか。今日は、もう帰れるんだろ?」

護が、優しく言う。

「うん。でも、宿題が残っちゃった」

私は、明るく言う。

「手伝ってやるから、帰るぞ」

護の温かい言葉に、心が癒される。

「ありがとう」

私は、書きかけの用紙を鞄に入れて、生徒会室を出た。

鍵をかけると、職員室に鍵を返しに行く。

そして、護と一緒に帰るのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ