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二人で登校

翌朝。

私が、目を覚ますと護の顔があった。

ワッ…。

って、驚きすぎか…。

安心しきった顔が、可愛い。

私は、護を起こさないようにベッドから抜け出す。

服を着て、ダイニングに行く。

今日の朝御飯、何にしよう。

と悩んでいたら…。

「おはよう」

護が、上半身裸で顔を出す。

「おはよう。って、服着てから出てきてよね」

私は、目のやり場に困った。

「何照れてるんだよ。いい加減なれろよ」

って、護が抱き締めてきた。

その温もりが、私を安心させる。

「朝御飯、何が食べたい?」

「うーん。久し振りに朝御飯作ってやるよ」

護が、私の耳元で言う。

「えっ、いいの?」

「いいよ。ちょっとだけ、待ってな」

護は、自分の部屋に行ったかと思うと、Tシャツを着て戻ってきた。

「さぁて…。何作るかなぁ…」

何て言いながら、テキパキと動く護。

私は、その横でお弁当の準備を始めた。


朝食を終えて、登校の準備をする。

今日は、少し早めに出て、里沙の家に寄り道。

エッと…。

里沙の鞄はこれだよね。

部屋の片隅に置いてある鞄を持つ。

そして、部屋を出ると。

「詩織。その鞄持つよ」

護が、スッと里沙の鞄を持ってくれた。

「ありがとう」

私は、素直に言う。

「じゃあ、行きますか…」

二人で、家を出る。

「二人揃って家を出るのって、平日じゃ珍しいよね」

私が言うと。

「そうだな。最近は、オレがロードワークに行ってから詩織が出るからな。同時ってのは、休みの日以外は、無いな」

護も、ここ最近の事を思い出してるみたいだ。

「里沙ちゃん家って、どっち?」

「家の近くなんだ。だから、通学路通りに行けばいいんだ」

「そうなんだ。…で、里沙ちゃんとは、何年の付き合いなんだ?」

唐突に聞いてきた。

「幼稚園の時からだから、十二・三年位かな」

私が言うと。

「長いな」

護が、感心してる。

「そうだね。衝突も色々したけど、気心知れてるから、話しやすいんだ」

「この間も、そんなこと言ってたな」

護が、思い出したように言う。

「って事は、オレの事も相談したりするのか?」

「そうだよ。護が、優兄に相談してたように、私も里沙に相談にのってもらってたし、里沙の相談にものってたよ」

私が言うと護が。

「はぁー」

溜め息をついた。

半分、呆れてる?

でも、護に相談できない事だってあるんだもん。

「ここだよ、里沙の家」

私は、一軒の家の前で止まる。

「何?里沙ちゃんって、お嬢様?」

護に言葉に私は、吹き出した。

「そう思う?でも、違うんだよ。里沙の家って、両親ともに社長をしてるんだけど、お手伝いさんもいない普通の家庭だよ」

私は、インターフォンを押す。

「はい。どちら様ですか?」

って、ちょっと幼い男の子の声。

「淳司君。詩織だよ。里沙いる?」

「詩織お姉ちゃん?里沙お姉ちゃんなら居るよ。待ってて…」

そう言って、インターフォンが切れる。

里沙が、玄関から出てきた。

「おはよう、里沙」

「おはよう、詩織。…と、玉城先輩…?」

里沙が、驚いてる。

「荷物、重いだろうからって、護が一緒に来てくれたんだ」

私が言うと、護が。

「はい、これでよかった?」

って、里沙に手渡す。

「ありがとうございます」

里沙が、恐縮してるなか。

「ワー。ほんとに詩織お姉ちゃんだー」

って、家の中から、淳司君が顔を出す。

「こら、淳司。挨拶が先でしょ」

里沙が、淳司君に向かって怒鳴る。

「おはよう、詩織お姉ちゃん」

「おはよう、淳司君。久し振りだね」

私は、淳司君の目線に合わせて話す。

「詩織お姉ちゃん、なかなか遊びに来てくれないんだもん。前みたいに、遊びに来てよ」

淳司君が、甘えてくる。

「淳司。詩織も色々忙しいんだよ。我儘言ったらダメでしょ」

「だって…」

そう言いながら、シュンとする淳司君。

「じゃあ。今度、時間を見つけて遊びに来るね」

私は、淳司君に言いながら、護の方を見る。

「いいよね」

「ああ、里沙ちゃんの家だしな」

護が、笑顔で言う。

「…って、お兄さん誰?」

淳司君が、護の方を見る。

「オレ。詩織お姉ちゃんの彼氏で、玉城って言います。宜しくな」

護が、淳司君の目線に合わせて挨拶する。

さすが、教師目指してるだけあるな。

「じゃあ、詩織お姉ちゃんと結婚するの?」

キラキラした瞳を護に向ける淳司君。

「いずれ、そうなるといいなって思ってる」

護も、馬鹿正直に話してる。

恥ずかしいな。

「あれ。詩織お姉ちゃんの顔、赤いよ」

淳司君が、ニコニコしながら言う。

「ほら、淳司も学校に行く時間じゃないの。遅刻するよ」

里沙が、淳司君の背中を押して、家へ入れる。

「里沙。一緒にいこう」

「たまには先輩と一緒に行けば良いじゃん。あたし、お邪魔みたいから…」

里沙が、護に顔を伺いながら言う。

「そう…か…。じゃあ、また後でね」

私は、里沙にそう告げると護と歩き出した。


「護。学校まで送ってくれるの?」

「まぁ。最初からそのつもりでいたけど…」

「ありがとう」

私は、護の腕に自分の腕を絡ませて歩く。

「久し振りだな。この通学路を二人出歩くの…」

護が、まじまじと言う。

「そうだね。でも、護は、制服卒業してるから、構内には入れないけどね」

「それは、言って欲しくなかった。でも、こうして、詩織と歩けるのは、嬉しいよ」

護が、笑顔で言う。

「私も嬉しい。本当は、こうやって学校へ行くこともなくなるんだろうなって、寂しかったんだ」

「もっと、早く言ってくれれば、よかったのに…。そしたら、毎日は無理かもしれないけど、時々一緒に登校してやったのに…」

護が、クスクス笑いながら言う。

「でも、それは私が恥ずかしいから、やめようね。今だって、注目浴びてるし…」

「何?周囲が気になる?」

「気になるよ。護の事を好きだった子も多いし…。未だに、忘れていない子も居るんだから…」

「そうなんだ。オレとしては、ただ見せつけたいだけなんだけどな。詩織は、オレのだと…」

護が、私の耳元で囁くように言う。

私は、思わず俯いてしまった。

「どうしたんだよ。顔が赤いぞ」

からかうように言う。

「もう…。護にせいでしょ」

私は、護の背中を軽く叩く。

「痛いって…。でも、オレとしては、嬉しいんだけどな」

優しい笑顔を向けてくる。

「玉城先輩。おはようございます」

学校に近付くにつれて、護に声をかける生徒が増えていく。

あーあ。

卒業しても、人気者ってどうなの?

それに、男女問わずなんだよね。

「護。未だに人気者だね。私に声かける人なんて居ないよ」

生徒会長なのに…。

「気にするな。オレが、好きなのは詩織だけだ」

堂々と道の真ん中で言うから、余計に恥ずかしくなる。

「それに、詩織にしか甘えれないんだからな」

もう…。

そんな事言われたら、顔から火が出そうだよ。

「詩織、どうした?顔が真っ赤だぞ」

そう言いながら、私の頬に手をやる。

「誰のせいですか…。そんな恥ずかしい事、言わないでよ」

「本心だからな。しょうがないだろ」

護が、真顔で言う。

う…。

何も言えないじゃん。か…。

「じゃあな。遅くなりそうだったら、メールでいいから送れよ」

護が、私の額にキスをする。

「うん…。じゃあね」

私は、小さく手を振ると護が、そのままロードワークに行ってしまった。


教室に入ると、忍ちゃんが。

「おはよう、詩織ちゃん。朝から、ラブラブだね」

からかうように言う。

「見てたの?」

「って言うか、全校生徒は注目してたんじゃない?」

忍ちゃんが、ニコニコしながら言う。

「そ…そうなの?」

「そうだと思うよ。教室にいる子達も、二人の事噂してるし…」

忍ちゃんに言われて、聞き耳をたてる。

「あの水沢さんが、玉城先輩の…」

とか。

「信じられない…」

って、声が囁かれてる。

その中には、去年同じクラスだった子達は、やっぱりねって言わんばかりの顔だ。

アハハハ…。

こんなに公になってしまうと、どうしたらいいのか…。

その時。

「ずいぶんと賑やかだね」

里沙が声をかけてきた。

「実は、詩織ちゃんが、ダーリンと登校してきて、別れ際に額にキスされてるの」

忍ちゃんが、里沙に説明する。

「それでか…。玉城先輩の人気は、相変わらずってことだ。そっか、そっか…。これで、先輩と詩織が同棲してることがわかったら、もっと大変になるね」

里沙が、他人事のように楽しんでる。

「ちょっと、里沙…」

私は、慌てて里沙の口を塞ぐ。

「忍ちゃん。同棲の話は、生徒会メンバーしか知らないことだから、誰にも言わないでね」

私は、忍ちゃんに小声で、釘を指す。

「わかってる。誰にも言わないよ」

忍ちゃんが、頷く。

「何が、誰にも言わないんだ?」

近くにいた凌也が聞いてきた。

それを慌てて、里沙が塞ぐ。

「あんたね、何考えてるのよ」

って、里沙が言う。

「詩織ちゃんが、先輩と同棲してる事は、誰にも言っちゃ駄目だよ」

忍ちゃんが、凌也に言う。

「そんなの言うかよ。まァ、生徒会メンバーしか知らないことだから、大丈夫だろ」

凌也が、冷静に答える。

アハハハ…。

って、言うか、生徒会メンバーで私が、護と婚約してるのを知ってるのは、里沙と佐久間君だけなんだけどね。

「おい、そこ。席に着け。ホームルーム始めるぞ」

担任にい言われて、席に着いた。


「詩織。朝はありがとうね」

昼放課。

私達は、屋上でお昼を食べていた。

「いいよ。気にしないで…。それより、あの後どうだった?」

私が聞くと、里沙が突然むせ出す。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫…」

里沙が、赤面しながら言う。

「あの後ね。夕食をファミレスで済ませて、散歩がてら公園で話してて…」

里沙が、言葉を飲み込んだと思ったら、制服のボタンを外して、指を指すと。

「“里沙ちゃんは、オレの大事な娘だから、誰にも触れさせたくない。男避けとして、つけさせてね“何て言われて、キスマークつけられたよ」

赤裸々に語る、里沙。

「優兄もやるもんだね。よっぽど、里沙の事を大切だと思ってる証拠だね」

「からかわないでよ。こんなのつけられたの初めてだから、恥ずかしくて…」

里沙が、戸惑ってる。

「まだ良いじゃん。服で隠せる場所につけられてるから…。首筋とかだと隠すこと出来ないよ」

「他人事だと思って…」

「他人事だもん。でも、里沙に会えない分、そうやって、自分のモノだって、主張したいんだよ。で、それを他の人に見せびらかすのじゃなくて、ふとしたときに見えるようにしてるんだとしたら…」

「確信犯だ」

「“こいつは、俺の“って言うこと。だから、安心して優兄を信じなさい。里沙は、優兄に愛されてるから…」

私の言葉に里沙の顔が明るくなる。

「うん」

自信無さげだった昨日の里沙が、今じゃ心からの笑顔を見せてくれる。

「詩織。ありがとね」

里沙が言う。

「どういたしまして。旅行も楽しみだね」

「うん」

里沙と二人、笑顔で話すのだった。

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