ダブルデート
今回、長いかも…。
飽きずにお付き合いくださいm(__)m。
翌日。
いつもより早めに目を覚ました私は、護を起こさないようにベッドから抜け出す。
取り合えず、シャワーを浴びようと思った。
のだが、着替えを取りに行きたいのだが、自分の部屋には優兄と里沙がいる。
起こすわけにはいかないし…。
立ち往生してると。
「どうしたんだ?」
護が、後ろから抱きついてきた。
「起こしちゃった?」
「大丈夫。起きようと思ってたから…。それよりどうしたんだ、真剣な顔して…」
「うん。シャワー浴びようとしたんだけど、着替え取りに行けないなって…」
「ああ、そうか…。オレのTシャツ着とけ」
護が、私にTシャツを渡してくれる。
「ありがとう。ごめんね…」
「大丈夫だ。ロードワークに行くつもりだったしな」
護が、目を擦りながら言う。
護は、あれからずっと走り込んでる。
雨が降らない限り、毎日走ってる。
「ほら。二人が起きてくる前にシャワー浴びてこいよ。朝食の準備は、あらかたやっておくから…」
護に背中を押されて、私はバスルームに行く。
熱いシャワーを浴びる。
昨日は、二人に迷惑かけちゃったなぁ。
私は、ただ反省するばかりだ。
はぁー。
私は、頭からシャワーを浴びる。
落ち込んでる場合じゃないか…。
手早く着替えて、洗濯機を動かす。
そして、ダイニングに行くと護が。
「やっぱり大きかったか」
私の格好を見て言う。
「可愛いが、料理には向かないなぁ…」
そう言いながら、私の袖を折り返す。
「この方が、やるやすいだろ。って、お前、紙乾かさなかったのかよ」
って、呆れ顔。
「考え事をしてたから、忘れてた…」
「全く…」
そう言って、タオルを持ってきて私に頭に載せたかと思ったら、腕を引っ張られてリビングのソファーに座らされた。
「少しは、自分でやれよ」
何て言いながら、優し髪を拭いていく。
「ありがとう。時間大丈夫?」
私が聞くと。
「大丈夫だ。今日は、サークルの方もないから、ロードワークだけだ」
護が、優しい声で言う。
「そうなんだ」
護の優しさに甘えてしまう自分がいる。
「これでいいだろう。さぁて、オレも準備して行くけど、朝御飯は甘鮭と味噌汁とサラダにしたから、汁は、温めればいいし、鮭は、今から焼けば二人が起きてくる頃には、焼けるだろ」
「うん。ありがとう」
私は、護に笑顔を見せると、護が私の頭をポンポンと叩いた。
そのまま、部屋に行ってしまった。
私は、キッチンに行って、護が言ったように鮭をグリルで焼き出す。
ガチャッ…。
ドアが、開く音がした。
そこには、トレーニングウェアーに着替えた護がいた。
「じゃあ、行ってくるな」
護が、私の頬に軽く口付けて、出ていった。
鮭が焼き上がる頃に二人が、部屋から出てきた。
「おはよう」
私は、二人に声をかける。
けど、二人は落ち着かないようで…。
どうしたんだろう?
二人とも、心なしか顔が赤い。
「どうしたの?」
私は、そんな二人を不思議に思いながら声をかける。
二人とも、凄く恥ずかしそうにしてる。
それを見てる私も、恥ずかしいんですけど…。
なんだろう?
私が、怪訝に思ってると。
「玉城先輩は?」
って、居ないのが気になったらしい。
「護?護なら、ロードワークに行ってるよ。毎日の日課だからね」
私が答えると。
「あいつ。まだ鍛えてるんか?」
優兄が聞いてきた。
「うん。サッカーサークルに所属してるからね。足腰だけは、鍛えてるかなぁ」
家でも、暇なときは筋トレしてるもんね。
「あ、朝食冷めないうちに食べよう」
私は、茶碗にご飯をよそって、テーブルに並べる。
「朝から、ガッツリだな」
優兄が言う。
「そんなことないよ。何時もこんな感じだから…」
私が言うと。
「これも玉城先輩が?」
里沙が聞いてきた。
「今日は、護が準備していったかな。普段は、私がやってるんだけどね」
「凄いね」
里沙が、同意を求めて、優兄に目線を送ったかと思うと直ぐに外したのを見た。
私は、そんな二人に。
「もしかして、一線越えた?」
と訪ねると。
「お前達が、煽ったんだろうが!!」
優兄が、顔を赤くしながら怒鳴る。
里沙の顔もみるみる赤くなる。
私は、小声で。
「よかったね」
って、言うと、耳まで赤くする里沙。
私は、笑顔で二人を見つめていた。
朝食を終えて、二人に食後のコーヒーを出しながら、私は食器を片付けていた。
まったりとした時間が、流れていく。
「ただいま」
玄関から、護の声。
私は、玄関に迎えに行く。
「お帰り」
私が、笑顔で出迎えたのをみて、護が。
「どうかした?」
不思議そうな顔をする。
「あの二人、一線越えれたって…」
私は、小声で伝える。
それを聞いた護が、優兄に。
「おめでとう」
って、ニヤケながら言う。
すると、優兄がコーヒーを吹き出した。
「汚いなぁー」
私は、優兄にティッシュを渡しながら言う。
「詩織。オレ、シャワー浴びてくるから、朝食宜しく」
「はい」
渡しの返事もそこそこに、バスルームへと消えていく護。
「何時もこうなの?」
里沙が、不思議そうに聞いてきた。
「いつもとは?」
「平日もそうなのかな?って思って」
「平日は、私が起きる前に護はロードワークに出てるから、その後に朝食とお弁当を準備してるって感じで、少し慌ただしいかな。それに、朝食は何時も一人で食べてるんだよね」
私が言うと。
「なんで?」
里沙が突っ込んできた。
「何時も、ロードワークに出てる護を待ってたら、私が遅刻してしまうから、朝だけは、別々になっちゃうんだ」
「そうなんだ。でも、寂しくない?」
「そうだね。寂しくないって言ったら嘘になってしまうけど、でも、その分二人でいる時間を大切にしてるから…」
私は、笑顔で言う。
「詩織は、強いね」
里沙が呟く。
私は、護の朝食を準備しながら。
「私は、強くないよ。弱いからこそ、強くなろうと努力してるんだよ」
里沙の言葉に答える。
「詩織。お腹空いた」
護が、顔を出す。
「はーい」
私は、茶碗にご飯をよそって、護の前に置く。
すると。
「いただきます」
護が、遅れて朝食を食べだした。
「しかし、朝からよく食べるなぁ」
優兄が、呆れたように言う。
って、優兄もでしょうが…。
「朝から食べんと持たんだろ」
って、護が笑う。
「本来なら、この後食後のデザートを食べるんだけどな」
護が、悪戯っ子のような笑みを浮かべて言う。
恥ずかしい。
「ほんと?」
里沙が、耳打ちしてくる。
「休日にすることがなくなるとね」
小声で答える。
「ご馳走さま」
優兄が、照れながら言う。
「…で、この後はどうします?」
里沙が聞いてくる。
「動物園に行きたい」
って、つい言っちゃった。
「プッ…」
三人が一斉に吹き出す。
何か、可笑しいかな?
「何で、動物園?」
護が、笑いをこらえながら聞いてきた。
「だって、なんか、急に動物が見たくなったんだもん」
「わかった。弁当作って、行くか」
護が言うと、動き出した。
私は、食器を洗い出す。
その横で、護がお弁当を作りだした。
「詩織。里沙ちゃんとおにぎり作って」
護が、テキパキと指示を出す。
その間に護が、唐揚げやら、卵焼きやらとおかずを作っていく。
「凄いね」
里沙が、耳打ちしてくる。
フフフフ…。
「なに、笑ってるんだよ」
「エッ…。護が、テキパキと仕切るからだよ」
私は、手を動かしながら答える。
里沙は、呆気にとられてる。
優兄に至っては、一人呑気にテレビを見ていた。
「あらかたできたな。詩織、着替えてきな。後は、やっておくから…」
って、護が言うから、私は自分の部屋に行き着替えをする。
動物園って、久し振りだけど、動きやすい方がいいよね。
だったら、トップスは、白のブラウスで、ボトムスは、キュロットスカートに短めのソックス。
もちろん指輪は、嵌めていかないとね。
それから、イヤリングぐらいかな。
って、悩んでいたら。
コンコン。
ドアが、ノックされる。
「はーい」
返事をしてドアを開けると里沙が立っていた。
「どうしたの?」
「そろそろ行くって」
「わかった」
私は、ショルダーバッグに財布と携帯を容れて、部屋を出た。
玄関に行くと。
「その方が、詩織らしい」
って、護が言う。
「そkじゃなぁ…。って、凄い量の荷物だね」
私が言うと。
「仕方ないだろうが…。四人分の弁当とお茶に敷物が入ってるんだからな」
優兄が、面倒くさそうに言う。
「頑張って、運んでくださいね。優基さん」
里沙が、笑顔で言う。
「ああ、頑張る」
里沙の応援で、優兄が張り切り出す。
「…で、護のは?」
「これは…。ちょっとな」
って、教えてくれない。
何が入ってるんだろう?
私が、首をかしげていると。
「ほら、急がないとゆっくり見えないぞ」
護に急かされて、玄関を出た。
大きな荷物を抱えて、電車に乗り込む。
目的の駅まで、座ることができた。
「しかし、動物園って、何年ぶりだ?」
優兄が、ポツリと言う。
「私が小学生の頃までは、よく行ってたよね」
「六年ぶりか?」
私と優兄が言うと。
「うちなんか、弟と年が離れてるから、未だに行くけど…」
里沙が言う。
「オレなんか、小学校低学年ぐらいから、行ってないから…十年は行ってないか?」
護が、寂しそうに言う。
そっか。
護は、一人っ子だし母親も居ないんじゃ、無理もないか。
「でも、この面子で行くとは思わなかったが…」
優兄が、苦笑してる。
「そうだな。まさか、動物園に行きたいと言うとはなぁ」
護まで、つられるように笑ってるし…。
「せっかく天気もいいんだし、四人で行くのも久し振りだったから…」
私が口を尖らせると。
「別に、動物園じゃなくても、遊園地とか、水族館とか、あっただろうが…」
優兄が言う。
「そうだけどさ…」
私が言い返せないでいると。
「動物園デートだけが、まだだったもんな」
って、護が小声で言う。
えへへ…。
よくわかってらっしゃる。
「しかし、不思議だね。こうしてダブルデートしてるんだもん」
「本当だね。私もこんなに幸せでいいのかなって、思っちゃう」
半分は、惚気だけどね。
色々と話してるうちに、動物園のゲートに着く。
「オレ、チケット買って来るから、そこで待ってな」
そう言って、護がチケット売り場へと向かう。
「しかし、護もまめだね」
優兄が、感心してる。
「詩織のためなら、こうも動くとわな」
「詩織、凄く愛されてるんだね」
里沙が、小声で言う。
「アハハ…。それより、身体大丈夫?」
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「疲れたら言ってね。休憩入れるし…」
私は、里沙に優しく言う。
「お待たせ」
護が、走って戻ってくる。
「別に走ってこなくても…」
私が言うと。
「早く入りたいと思ったんだが…」
護が、照れ臭そうに言う。
そんな護を見て、苦笑した。
「笑う事ないだろうが…」
って、ふて腐れてる。
「玉城先輩って、可愛いね」
里沙が、耳打ちしてきた。
「うん」
二人で、ニコニコしてたら。
「二人とも、行くよ」
優兄に急かされた。
「はーい」
二人同時に返事をして、二人の方へ駆け出した。
ゲートを潜ると、色んな動物の声が聞こえてくる。
私と里沙は、二人の後ろを歩いていたけど、ふと二人が同時に振り返って。
「詩織!」
「里沙ちゃん」
って、同時に手を差しのべてきた。
私達は、顔を見合わせて、互いの彼の手を取る。
「最初は、どこに行く?」
「順番通りに行けばいいじゃん」
優兄に言われて。
「そうだね」
「途中で、写真も撮ろうね」
私が言うと。
「そう言うだろうと思って、カメラも持ってきてる」
護が、デジカメを取り出す。
「準備いい」
さすが、護。
「里沙ちゃん。こっちにリス猿が居るって…」
優兄が、里沙を引っ張って行ってしまう。
「詩織」
「ん?」
「里沙ちゃんに言った?」
「一様は、言っておいたけど…」
「そっか…。優基じゃ、気付かないかもしれないから、その辺も宜しくな。…って、詩織は、大丈夫なのか?」
優しいな…。
「私は、大丈夫だよ。初めてじゃないしね」
私は、小声で護に言う。
「だけど、昨日は激しく…」
わっ…。
「それ以上は、言わないで…」
私は、慌てて護の口を手で塞ぐ。
もう、恥ずかしい…。
「アハハ…」
護が、苦笑する。
「だが、疲れたら言うんだぞ」
「うん」
私達は、手を繋ぎながら、里沙達の後を追った。
昼食を食べるために、広場にレジャーシートを敷いて、お弁当とお茶を取り出す。
お絞りで手を拭いて、手を合わせ。
「いただきます」
私は、おにぎりを手にして、頬張る。
優兄は、唐揚げを手でつまんでいるし。
里沙は、卵焼きを頬張ってる。
「甘くて、美味しい!」
里沙が、褒める。
「ありがとう」
護が、嬉しそうに微笑む。
「唐揚げもうまいぜ」
優兄は、次から次へと貪っていく。
「優兄の欲張り」
私が言うと。
「いいだろ。俺が、ここまで運んだんだから…」
って、当然だって主張する。
護は、そんなやり取りを見ているだけだった。
「護。どうかした?」
私が聞くと。
「ううん。何でもない」
って、おにぎりを頬張る。
「詩織。お茶、取って…」
里沙に言われて、私の横にあるお茶と紙コップを渡す。
「ありがとう」
「午後から、別々に回るか?」
護が、突然言い出す。
「それ、賛成」
優兄は、飛びつくけど。
「里沙は?」
「う…うん。優基さんがそうしたいのなら…」
って、言葉を濁してる。
「本当にそれでいい?」
私が、小声で確認すると、少し戸惑ってる。
「今は、二人っきりになるのは、怖いかも…」
って、本心を言ってくれた。
私は、護の方を向くと護は、何も言わずに頷いたかと思ったら。
「優基。食後の運動に付き合え」
って、サッカーボールと優兄を引っ張っていく。
「何で…?」
優兄が、訳がわからないって顔をしながら、連れていかれた。
どこから、ボールが出てきたんだろう?
あっ、さっきの袋か…。
私は、食べ終えたお弁当箱を片付けながら、里沙に声をかける。
「何が、怖いの?」
「うん…。今までは、手を出してくれなくて、不安だったんだけど、今度は、したらしたで、捨てられてしまうんじゃないかって…。逆に不安で…」
そっか…。
私の場合と違うもんな。
私の場合は、どれだけ大切で愛してるかを示してたから…。
里沙の場合は、手を出してくれないって悩んでたのが、今度は、飽きられて捨てられてしまうことに不安がいっちゃったんだ。
うーん。
これは、難問だよね。
でも、護が言ってた事は、“お互いが思いあってるからこそ、手が出せない“って、言ってた。
だったら、私が言えることは。
「里沙。里沙は、優兄の事愛してる?」
私の質問に。
「当たり前でしょ!」
里沙は、迷いもなく言う。
「だったら、それを貫けばいいじゃん。優兄が、今日はそっけなくしてると感じるなら、たぶん照れてるだけだから…」
「本当?」
里沙が、私の顔を確認するように覗き込んでくる。
「だったら、上目遣いで“私の事好き“って、優兄に聞いてみたら」
「それは、恥ずかしい…」
照れてる里沙が、可愛い。
「恥ずかしがらずに聞くの。優兄の答えは、決まってるはずだから…」
「何で、わかるの?」
「殆どの男は、“好きじゃなきゃ、抱くかよ“って答えるよ」
私が言うと、里沙が疑いの目を向けてくる。
「本当だって…。ちゃんと言葉にして欲しいときに使ってみて。たじろぎながら、返事してくれるから…。私が言える事は、以上です」
私が笑顔で言うと。
「うん、試してみる」
里沙が、笑顔で言う。
「頑張って。ちなみに私は、不安に陥りそうになるときに使うようにしてます。後は、不意打ちみたく頬にキスをして反応を見るかな」
「なるほど、勉強になる」
里沙が、納得して頷く。
「何が、なるほど?」
優兄の声。
「話、終わった?」
護が、小声で聞いてきた。
私は、小さく頷いた。
「じゃあ、ここからは、別々でってことで…」
「里沙ちゃん、行こう」
優兄が、里沙の手を引いていってしまった。
「詩織。膝枕して…」
「いいよ」
護が、私の膝に頭をのせる。
私は、護の髪をすく。
柔らかい髪。
「里沙ちゃん、なんだって?」
護が、心配そうに聞いてきた。
「女の子特有の心配だよ」
私は、笑顔で言う。
「特有って。…したから、捨てられるかもっていう心配?」
護が、的確に言う。
「そう。誰もが、割りきってできる訳じゃないし…。特に大好きな人となるとね」
私は、はっきりと言う。
「優基は、そういう奴じゃないから、それはないと思うが…。たまに居るからな。した後に捨てる奴」
護が、淡々と言う。
「私は、捨てられちゃうのかなぁ?」
私が、冗談交じりで言うと。
「捨てるわけないじゃん。オレにとっては、大事な女なんだからな」
って、私の首に手を回して、キスをする。
「優基も、里沙ちゃんを捨てることはないだろ。あいつ、遠距離となったとたん、里沙ちゃんの心配ばかりしてるからな。やった後なら、少し安心するんじゃないか」
護が、笑顔になる。
「さぁ、オレ達も行くか」
「うん」
私達は、レジャーシートを片付けて、荷物を持って歩きだした。
「詩織。それも貸しな」
「でも、護一杯持ってるじゃんか。お弁当箱空だから、大丈夫だよ」
って言ってる側から、護が私の手から荷物をとってしまう。
「女の子に荷物を持たすわけには、いかない」
護が、私の手を引く。
本当に、優しいんだから…。
「ありがとう」
「どういたしまして…。ふれあい動物にでも見に行くか?」
「うん」
私達は、並んでふれあい動物に向かった。
私達は、携帯で連絡を取りあって、ゲートで待ち合わせた。
私と護は、優兄達より先に出ていた。
「ねぇ、護。今日はありがとうね」
「急にどうしたんだ?」
「うん。里沙の事もあるけど、急に動物園に行きたいなんて言って…」
「いいよ。オレも楽しめたしな。里沙ちゃんの不安を解決するには、詩織がいないとダメだっただろしな」
そこまで、考えていたんだ。
やっぱり、護には敵わない。
私は、感謝の気持ちを込めて、護の頬にキスをする。
護が、驚いた顔をする。
そうだろうな。
普段、人が多いところでは、こんな大胆なことしないから…。
「詩織…。今日は、らしくないじゃんか」
「うん。お礼の気持ちが強いからかな」
「そっか…。じゃあ、今日は詩織が夕飯作ってくれるか?」
何気ない会話を楽しんでると。
「お待たせ」
里沙と優兄が出てきた。
里沙の顔を見ると、晴れ晴れとした顔をしている。
「どうだった?」
私が小声で聞くと。
「詩織がいった通りだった」
里沙が、少し恥ずかしげに言う。
「よかったね」
私が言うと。
「何がよかったんだ?」
優兄と護が聞いてきた。
「里沙の心配事がなくなって、よかったねってい言っただけ」
私が言うと、優兄と里沙の顔が赤くなる。
「何赤くなってるんだ?」
護が、からかうように二人に言う。
「赤くなんてなってない!」
二人が同時に言うから、私と護は顔を見合わせて笑った。
「息がぴったりだね」
私は里沙に言う。
「さぁて、帰るか」
護が言う。
「何か食っていくか?」
優兄が言うけど。
「悪い。オレらは、帰るよ。後は、二人でどうぞ」
護が私の手を取って歩き出す。
「里沙の荷物、明日の朝持っていくからね」
私が里沙に言うと。
「ありがとう」
里沙が、戸惑いがちに言う。
「帰ったら、食材の買い出ししないとな」
護が言う。
「何で?」
「今日の弁当で、殆ど使いきっちまった」
護が、苦笑する。
あらら。
「じゃあ、帰ってからもゆっくり出来ないね」
私が言うと。
「ゆっくりする時間は、自分で作るんだよ」
って、護が言う。
「そうだね」
私達は、微笑みながら、家路についた。