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お泊まり

あらかた、料理が出来上がったところで。

ピンポーン。

玄関のチャイムがなる。

私は、玄関に向かう。

ドアスコープから覗くと、優兄と里沙がそこにいた。

私は、玄関を開けて招き入れる。

「再び、お邪魔します」

って、二人が入ってくる。

「いいにおい」

里沙が言う。

もしかして、お腹空いてるのかな?

「とりあえず、荷物を私の部屋に置きに行こう」

私は、里沙を促して、部屋に行く。

「詩織。俺は?」

優兄が、私に向かって声をかけてきた。

「お前は、オレの部屋だ」

ちょうど護がキッチンから出てきて言う。

「…チッ…」

何て、舌打ちする優兄。

「ほら、それ置いたら、飯にするから」

護が、仕切り出す。

「わかったよ」

優兄が、渋々頷きながら、荷物を置きに行く。

私と里沙は、部屋に荷物を置くとダイニングに戻った。

ダイニングでは、二人が席についていた。

テーブルの上には、護特製の中華料理(エビチリ、回鍋肉酢豚、麻婆豆腐、棒々鶏)が、並べられている。

「うわー。おいしそう」

里沙が、声をあげる。

「これ、詩織が作ったの?」

里沙が、私に振り向き様に言う。

「そんなわけないだろ。これ、全部護が作ったんだよ」

優兄が、あっけら感に言う。

痛いところを付いてくる。

「凄い。玉城先輩って、何でも出来るんですね」

里沙が、感嘆の声をあげる。

「そんな事ないよ。オレが苦手な事は、全部詩織がやってくれてるし」

護が、真顔で答えてるが。

「よかったな、詩織。護が、庇ってくれて…」

優兄が、要らぬ茶々を入れる。

もう…。

私が、頬を膨らませると。

「ほら、料理冷める前に食べるぞ」

って、護が言う。

私達は、席について。

「いただきます」

と手を合わせて、ワイワイ言いながら食事をするのだった。


食後のコーヒーを飲みながら。

「そういや、詩織。物理の宿題やった?」

里沙が、思い出したように聞いてきた。

「そんなのあった?」

私が聞き返すと。

「あったよ」

里沙は、部屋に行って宿題のページを指し示す。

「これ、わかりずらいよ」

里沙が、“お手上げだよ“と言わんばかりに言う。

うわー。

これは、難問だ。

そこに、護と優兄が覗き込んできた。

「ああ、これ。よかったら教えようか?」

って、護が言う。

「本当ですか?」

里沙の顔が綻ぶ。

「オレでよかったらだけど…」

そう言いながら、優兄の方を見る護。

優兄は、お手上げのポーズをとってる。

「お願いします」

里沙が、護に頭を下げる。

「じゃあ、向こうでやろうか?」

リビングに移動する二人。

「詩織はいいのか?」

優兄が聞いてきた。

「うん。後で、ゆっくり聞けるし。今は、この食器を片付けないとね」

私は、席を立つと、キッチンで食器を洗い出した。

本当は、一緒にやりたい気持ちで一杯だったけど、護が料理を作った日の後片付けは、私の担当だ。

嫌いな事は、後回しにせずにその場で片付けないとね。


食器を棚に戻して、あらかた終わらせた頃。

リビングから、里沙の声が聞こえてきた。

「玉城先輩の教え方、メチャ上手ですね」

「そうでもないよ。これぐらい当たり前だから…」

謙遜する護。

「詩織が羨ましいです。何でもこなす彼で…」

里沙の声が響く。

「どうせ、俺は何も出来ません」

優兄が、すねてる。

「優基さんは、何もしなくていいです。あたしが、好きになったんですもん」

里沙の惚気が聞こえてくる。

それを聞いた優兄が、照れてる。

なんだかんだ言って、仲が良いんだから…。

そんな優兄に。

「優兄。先にお風呂、入っちゃいなよ」

そう声をかけた。

「じゃあ、お言葉の甘えて、頂いてくるわ」

私は、優兄に風呂場を案内する。

「脱衣所にあるバスタオル、使って良いから」

「サンキュー、詩織」

そう言って、脱衣所に消えた。

私は、そのまま自分の部屋に戻った。

里沙と護をそのままにして…。

私は、昼間していた宿題の続きをしだした。


ふと、時計に目をやる。

少しのつもりだったのに、集中しすぎて、時間が気にならなかった。

私は、一旦自分の部屋を出て、リビングに向かう。

リビングでは、三人で楽しそうにテレビを視ていた。

よかった。

親友とはいえ、家に招いてるのに、ほっておくなんてしちゃいけないよね。

私が、反省しいてる時だった。

「詩織。宿題、終わったのか?」

護が、気付いて、声をかけてくれる。

「ううん。ちょっと、休憩しようかと思って…」

「そっか。余り無理するなよ」

「うん。ごめんね」

私が言うと。

「何謝ってるんだ?」

って、不思議そうに言う護。

「ううん、何でもないです」

「変な詩織」

護は、そう言ってテレビに視線を戻した。

私は、キッチンに行って、冷蔵庫から水を出して、コップに注ぐ。

リビングからは、三人の笑い声が聞こえてくる。

今更、私があの中に入るのは、気が引ける。

だからって、部屋に戻る気にもなれなかった。

私は、気を紛らわせる為に、夜の散歩に出ることにした。

音を立てずに、玄関を出た。


夜の散歩は、人通りの少ないところを避けて、夜空を見上げるようにして歩いた。

ふと、気が付くとバスケコートのある公園に来ていた。

コートの隅には、誰かの忘れ物だろうか?

ボールが転がっていた。

私はそのボールを手にして、気晴らしに一人で、バスケをしだした。

ドリブルやシュート練習。

今度の球技大会のためにもなる。

無心に練習してると。

「水沢?」

声がかけられる。

振り向くと、浅井くんがいた。

「何してるんだ?こんな所で…」

「うん。球技大会が近いからね。その練習」

無難な答えだと思う。

「そうなんだ。俺も、付き合ってやろうか?」

思わぬ申し出に。

「ありがとう」

って、答えていた。

それから、一対一で練習を始めた。


ハァハァ……。

流石に、マンツーマンだと息が上がる。

「どうした?息が上がってるじゃん。少し、休憩するか?」

浅井くんの申し出に私は頷く。

二人で、近くのベンチに座る。

「久し振りだなぁ。水沢との練習」

「そうだね。ごめんね、こんな時間に付き合わせて」

私が言うと。

「いいって。俺も、久し振りにバスケしたかったからな」

浅井くんが、笑顔で言う。

「本当だね。中学の時は、何時もやってたもんね」

「ああ、懐かしいなぁ。あの時は、練習後にも残って二人で、やってたもんな」

浅井くんが、遠い目をする。

「そうだったね。あの時は、無我夢中だったからね」

私も懐かしくなった。

「まだ、やるのか?」

「もう少しだけ、シュート練習したら帰るよ」

「そうか…。無理するなよ」

「ありがとうね」

浅井くんが、ベンチから立ち上がって、行ってしまった。

私は、スリーポイントシュートの練習に打ち込んだ。



「詩織。何時までそうしてるつもりだ」

ふと、声がかかる。

振り返ると、護が入り口に立っていた。

エッと……。

私が、言葉を詰まらせていると。

「全く。急に居なくなるなよ」

そう言って、私の方に近づいてくる。

「ごめんなさい」

私が言うのと同時に抱き締められていた。

護の心音が聞こえてくる。

「居場所をなくしてしまったみたいで、夜の散歩に出たら、バスケットコートに来てた」

私が何気に言った言葉に対して。

「何で、居場所が無いんだ?自分の家だろう」

護が、呆気にとられてる。

そうなんだけど…。

「全く…」

「ごめん。私は、気晴らし程度のつもりで、体を動かしてただけだから…」

「それにしても、浅井とは、仲良くやってたじゃないか?」

なんか、刺のある言い方だなぁ。

「そう見えたんだ。彼とは、部活も一緒だったからね。何時もマンツーでやってたから…」

私が言うと、護の腕の力がこもった。

「それは、オレが知り得ない事だよな。そんなにオレに嫉妬させたい?」

護の声が、苛立ってる。

「そんなつもりじゃないよ。私が練習してたら、偶然浅井くんが通りかかっただけ…。で、練習相手になってくれただけだから…」

私が説明しても、言い訳にしか聞こえないんだろうなぁ…。

「だからって、そんな無防備な笑顔を見せるなよ。誤解させるかもしれないだろうが…」

結局、妬いてるだけなんだ。

「大丈夫だよ。私の気持ちは、護だけのモノだから」

「当たり前だ!オレ以外に誰がいるんだよ」

護が、当然だって顔をする。

「もう、帰らないと里沙ちゃんも優基も心配してる。でも、もう少しだけこのままでいいか?帰ったら、二人の前でイチャつけないだろ」

真顔で言う護。

「…護ったら…」

私が、クスクス笑っていたら、唇を塞がれた。

「…ん…」

護の優しい口付けを受け止めた。


家に帰ると。

「詩織!どこ行ってたの?心配してたんだよ」

里沙が、肩を震わせながら言う。

本気で怒ってる。

「ごめん」

私は、謝る。

「ごめんじゃないよ。部屋に居ると思って、声をかけても返事がないから、覗いてみたらものけの空なんだもん。あたし、慌てちゃったよ」

「本当にごめん。無性にバスケをしたくなって、練習しに行ってた」

私は、苦笑いしながら答える。

「それなら、そうと一言言ってから、行きなさいよね」

ごもっともです。

私は、自分の家なのにタジタジになる。

「里沙ちゃん。詩織も反省してるから、それくらいにしておいて」

今まで、ただ見てただけの優兄が、助け船を出してくれた。

「でも…」

里沙は、まだ言い足りないらしく、口ごもる。

「ほら、詩織も帰ってきたことだし、そろそろ寝るか」

優兄が言う。

「寝るのはいいが、どういう振り分けで?」

それまで黙っていた護が、言い出した。

「男女別でいいじゃん」

優兄が、あっさりと言う。

「オレは、今日は詩織と寝たいんだがな」

護が、水を指すように言う。

「ここは、一つ女性人の意見を…」

「そんなの聞く必要あるのかよ。オレ、昼間言ったよな。“今日は、詩織に慰めてもらう“って」

優兄の言葉を遮って、護が言う。

「だから、オレは詩織と一緒にオレの部屋で寝るから、お前らは詩織の部屋で寝ろ」

そう言うと私の腕を引っ張って、部屋に入る。

残された二人は、今頃戸惑ってるだろうなぁ。

「いいの?あんな言い方して…」

私は、心配になって言う。

「いいよ。オレは、本当の事を言ったまでだし…。それに、いい機会だと思うんだよな」

呟くように言う護。

「あの二人。付き合って半年も経つのに、キス以上の進展してないって優基から、相談されたんだよ」

護が、私をベッドまで引っ張り、座らされる。

「護も相談されてたんだ。実は、私も里沙から、相談されてて…」

「お互いを想いあってる分、先に進めないんだろうな」

護が言う。

「エッ…。じゃあ、護は、私の事なんとも想ってないんだ」

私が、悪戯心を出して、そう言うと。

「そんなわけないだろ。こんなに愛しく想ってるのに…。今日は、どれだけお前の事を思ってるか、身体で思い知らせてやるよ」

そう言って、護が唇を塞いでくる。

「…っん…。待って、二人に…聞こえちゃう…」

私は、護を押しどけようとした。

「いいんだよ。このまま、二人の事、進展させてやろうぜ!」

悪戯っ子のような笑顔を見せる。

ん、もう…。

その笑顔、反則だって…。

「護、少し待って…。私、汗くさいよ。お風呂もまだ入ってないし…」

私が言うと。

「どうせ、汗かくんだし、朝風呂にすれば?」

って言いながら、ベッドに押し倒してきた。

そして、唇を押し付けてくる。

「…護…」

護の手が、服の裾から忍び込んでくる。

手が触れた場所から、熱を帯びていく。

護の甘く、優しいキスが、唇から首筋に移り、そして、鎖骨へと降りていく。

「…あっ…」

甘い吐息が漏れ出す。

私は、慌てて手で口を塞ぐ。

隣にいる二人に聞かれたくなくて…。

そんな私に、護が。

「詩織の声、聞かせて…」

覆っていた手を外された。

「恥ずかしい…」

私は、護の視線から逃れようとそっぽを向く。

「ダメ。今日は、二人に聞かせてやれよ」

護が、耳元で囁く。

そう言って、耳を甘噛みする。

「…つっ…」

「我慢せずに、啼いていいよ」

って、護が、私の服を脱がし始める。

汗ばんだ体の隅々まで、愛しそうに優しく触れていく。

そんな護の背中に私は、腕を回すのであった。

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