旅行計画 2
リビングで、宿題をしてると。
ピンポーン。
チャイムがなる。
「はーい」
私は、玄関に行き、ドアスコープから覗き込む。
そこには、優兄と里沙が立っていた。
私は、玄関を開ける。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
私は、二人をリビングに通して、テーブルに広げてた宿題を部屋に持っていく。
キッチンに行って。
「何飲む?」
「俺、アイスコーヒー」
「あたしは、ミルクティー」
二人とも、遠慮がちに言う。
「わかった」
私は、ケトルでお湯を沸かす。
コーヒーメーカーに一人分のコーヒーをセットして出来るのを待つ。
「護は?」
優兄が聞いてきた。
「サークルの練習に行ってる。もうすぐ帰ってくると思うよ」
と言ったときだった。
「ただいま」
玄関から声がする。
私は、慌てて玄関に行く。
「お帰り。優兄達来てるよ」
「わかった」
護は、リビングに向かう。
私は、その後を追うように向かう。
「いらっしゃい。悪いけど、ちょっとシャワー浴びてくるからその間、テレビでも見ててくれ」
そう言って、リビングから出ていく護。
私は、キッチンでお茶の準備を終えて、お盆に載せて、リビングに行くと。
「詩織。玉城先輩って、いつもああなの?」
里沙が声を押さえて聞いてきた。
「エッと…」
私が言い淀んでいたら。
「里沙ちゃん。護は照れてるだけなんだよ」
優兄がフォローしてくれる。
まぁ、確かに照れてるんだとは思うけど…。
他の事で、腹を立ててるのかもしれないけど…。
私は、とりあえず護の分のコーヒーをセットしてからリビングに戻った。
私達が、たわいのない話をしてると。
「悪いな。なんか、待たせてしまっみたいだ」
護が、頭を拭きながらリビングに現れる。
「いいよ。お前の家に来てるんだから、気にするな」
優兄が直ぐに答えた。
「護。コーヒーそれともスポーツドリンクの方がいい?」
私が声をかけると。
「とりあえず、水分補給」
私が席を立って、行こうとすると。
「いいよ。自分で取りに行くから、詩織は座ってな」
そう言って、護はキッチンに行く。
「…で、旅行はどこにする予定なんだ?」
キッチンから、護が聞いてきた。
「それがさぁ、里沙がどうしても北海道に行きたいらしくて、もう決めてきたんだ」
って、優兄が言うと、護の顔色が変わった。
そして。
「どんなプランなんだ?」
護が、リビングに戻ってきて聞く。
「このプランなんだけど…」
優兄がそう言って、パンフレットを取り出して指を指す。
ますます、護の顔色が曇る。
「護、どうかした?」
私が声をかけると。
「うーん」
って、唸りだして、はっきりしない。
私は、もしやと思い。
「サークルと同じ場所?」
と聞いてみた。
護は、その言葉に頷いた。
あーあ。
「プランの変更って、出来ないのか?」
護が言う。
「どうだろう。聞いてみようか?」
優兄が、電話を掛ける。
「すみません。先程、北海道予約をした水沢ですが…。プランの変更できますか?」
優兄が、パンフレットを見て、静かに頷いてる。
「そうですか…。わかりました、失礼します」
電話を切ると優兄が。
「今日中だったら、まだ間に合うらしい。だけど、今のプラントこっちのプランしか空きがないらしい」
そう言って、パンフレットのプランを指を指す。
「それだと、あたしが行きたい場所に行けないよ」
里沙が言い出す。
「だったら、二手に別れれば良いんじゃない」
私が言うと。
「そうは言っても、せっかくの旅行だし、四人で楽しみたいじゃん」
って、優兄が言う。
里沙も、それに賛同して頷く。
私は、護を見る。
「護は、どう?」
護は、腕を組んで悩みだした。
そして。
「わかったよ。そのプランで良いよ」
渋々了解を出す。
「本当に?」
「二人が楽しみにしてるのに、水を差すのは悪いだろ」
護が、苦笑してる。
「悪いな。今度埋め合わせするから…」
優兄が、笑顔で言う。
「そんなの要らねぇよ。後で詩織に慰めてもらうから…」
護が、私を見る。
エッ…。
私、なの?
「そっか…。里沙ちゃん。俺等も同棲する?」
突然、優兄に言われて、里沙がタジタジになってる。そして。
「優基さん。それは、今、答えなきゃいけないんでしょうか?」
って、真顔で聞き返してる。
「いや、別に答えなくて良いよ。大体わかってるから…」
「……」
里沙が、無言になる。
「ねぇ、詩織。同棲って楽しい?」
里沙が、小声で聞いてきた。
「苦労はあるけど、楽しいよ。…って言うか、私の場合は、護と居られるだけで楽しいよ」
「そうなんだ。あたしは、不安かな…」
里沙が、自信なさげに言う。
「なんで?」
私が思ってると。
「うん。なんか色んな意味でさぁ」
そんな里沙に。
「実は、私も不安だったんだよね」
本音を漏らした。
「嘘…。何で?」
「何で…?って、私、料理あんまり得意じゃないし、一緒に居ても迷惑じゃないかって、ずっと思ってた」
私が言葉を区切った時だった。
「詩織。何の話をしてるんだ?」
護が急に口を出してきた。
「エッと…。同棲生活ってどうなのか、聞かれたから…」
私は、素直に口にする。
「そうなんだ。里沙ちゃんは、したいの?」
護が優しく聞く。
里沙が、戸惑ってる。
「結論は、ゆっくり出せば良いんじゃないの」
優兄が食いついた。
「オレ等の時は、突然だったからな」
護が、懐かしそうに言う。
「そうそう。俺もビックリしたよ。婚約したその日から、いきなり同棲を始めたって、母さんに聞いたんだよな」
優兄が言う。
「アハハハ…」
私は、笑うしかなかった。
その横で、護が苦笑してる。
「あの時は、私もビックリしたんだから…。まさか、お母さん達が、この部屋を借りてくれてたなんて、今も不思議なんだよ」
私が言うと、優兄が。
「それが、隆兄の一言で、この部屋を借りることに決めたって、母さんが言ってたぞ」
って言う。
何でだろう?
私は、護と顔を見合わせる。
護もその事は、知らないみたいだ。
「でも、今の詩織を見てたら、幸せそうだよね」
里沙が、微笑む。
「そうかなぁ…。護が居るからかな」
私は、護を見る。
彼が居るから、私は安心できるんだって思う。
「さっきの続きだけど、本当に何も出来ない私が、護の足手まといになりかねなかったのに、護は、躊躇なく“そのままで良い。徐々に覚えていけば良いから“って、言ってくれた事で、気が紛れたかな。気後れしてたから、今こうしていれなかったよ」
私が言うと。
「そういうものかな?」
まだ不安気な顔の里沙。
「うん。少しずつ慣れていけば良いと思うよ」
私は、笑顔で里沙に言う。
その他に護が、料理が得意だったことが、私にとって、よかったのかもしれない。
「詩織、どうしたの?」
里沙が、顔を覗き込んできた。
「ううん。大丈夫だよ」
「でも、玉城先輩。無理してないかな?」
里沙が、心配してくれる。
「大丈夫。後で、フォローしておくから、気にしないで…。でも、よく予約とれたね」
私が聞くと。
「うん。ちょうど、キャンセルが出たみたいで、そこに入れてもらったんだ」
って、里沙が言う。
「そっか…」
私は、護の方を見る。
護は、優兄と楽しそうに話していた。
「ねぇ、詩織。ちょっと話したい事があるんだけど…」
「ここじゃ、ダメなの?」
私が聞くと、里沙の顔色が曇る。
「わかった。私の部屋に行こう」
私は、里沙と二人で自分の部屋に行く。
「ちょっと、散らかしてるけど、どうぞ…」
私は、自分お部屋のドアを開けて、中に誘う。
里沙が、部屋に入るなりに。
「意外ときれいじゃん」
って、感想言う。
私は、ドアを閉めると里沙が。
「ごめんね。相談したい事は、優基さんの事なんだけど…」
って、言葉を濁しながら言う。
「どうしたの?今日も仲良く見えるのに…」
「そう思う?」
「うん。で、どうしたのよ?」
私は、里沙にベッドに座らせながら、自分も横に並ぶように座る。
「あのね。これは、詩織にしか、相談できないんだけど…」
って、遠回しで言う里沙。
私、限定って?
「う…うん」
「詩織って、キスよりも先の事も経験済みだよね」
恥ずかしそうに言う里沙に私は。
「そうだね。それがどうしたの?」
って、堂々と言う。
わざわざ、恥ずかしがる事もおかしいし…。
って言うか、里沙が言おうとしてる事、何となくわかってきた。
「あのさぁ。優基さんって、あたしの事、余り好きじゃないのかなぁ…」
って事は…。
「あたしってば、魅力無いのかな…」
そっか、そっちの心配か…。
「里沙、気にすること無いよ。たぶん、優兄は里沙の事が大切だから、手を出せずにいるんだと思う。私の時もそうだったから(本人もそう言ってたし)…。護が怒りに任せなかったら、未だに手を出されてないと思うもん」
私が言うと。
「そうなのかなぁ」
里沙が、不安気に言う。
「うん。今ごろ、優兄も護に相談してるかも…。後は、タイミングなんじゃないの?お互いの気持ち次第で、進展すると思うけど…」
私は、それしか言えない。
「そういうものなのかなぁ。あたしに何か落ち度があるのかなって、そんな事ばかり考えちゃって…」
里沙が、落ち込むなんて、珍しい。
「大丈夫。優兄は、里沙を好きだよ。じゃなきゃ、今も里沙の横に居ないよね。それに、お互いの気持ちをぶつけてみるのも一つの手だと思うよ。私なんか、いつも一人相撲してるみたいだって、思うことが一杯ある。悩みがあるなら、直接本人に打ち明けた方が、解決するときもあるよ」
私の言葉に里沙が。
「やっぱり、そうなのかな…」
って、呟いた。
「二人の問題なんだもん。二人で話し合った方が良いと思うよ」
私が言ったときだった。
コンコン…。
部屋のドアがノックされた。
私は、ドアのところまで行って顔を出す。
「何?」
私が、部屋から顔を出すと、護が。
「夕飯の買い出しに行かないか?」
って、お誘いだった。
「えっと…」
私が、返事に困ってると。
「あっそうか。もうそんな時間なんだ。あたし達、帰るよ」
と里沙が言う。
「優基は、泊まってくみたいだが、里沙ちゃんも泊まっていけば良いじゃないか?学校で話せないことも話せるだろうし…。それに、明日は日曜日だしな」
護が言う。
「いいの?」
私が、確認するように聞くと。
「いいよ。詩織のよき理解者だしな。里沙ちゃん次第だけどな…」
護が笑顔で言う。
「里沙、どうする?」
「うん。じゃあ、お言葉に甘えて、泊まらせてもらおうかな」
里沙も、嬉しそうに言う。
「じゃあ、あたし、着替えを取りに行ってもいい?後、宿題も」
って、おどけて言う里沙。
「アハハ…。行っておいで、優基も一回家に行くって言ってたから、ゆっくり準備してくればいいよ」
護が、優しい声で言う。
ということで、同時に家を出た。
「じゃあ、また後で…」
二人と別れて、買い物に行く。
「今日は、何にするの?」
私が聞くと。
「そうだなぁ…。って言うか、何が食べたいんだ?」
って、逆に聞き返された。
そうだなぁ。
皆で、わいわい食べれるのって。
「中華かな?」
私の提案に。
「中華か…。言いかも。それにしよう」
護は、次から次へと材料を籠に入れていく。
「お茶は作るとして、ジュースとかいるか?」
護が、突然聞いてきた。
「あった方がいいかも…」
そう答えると護は、さっさとドリンクを選んで、レジに並ぶ。
やることが早いっていうか…。
決断力がありすぎる。
私は、ついて行くので精一杯だ。
会計を済ませて、袋に詰めていく。
「護。私も持つよ」
って言うと。
「これぐらい大丈夫だ。それより、手を出せ」
って言われて、手を出すと空いてる手で、私の手を握る護。
「ほら、帰るぞ」
って、優しい笑顔を向けられる。
「うん」
私も、笑顔で答えた。
家に帰りつくと護が、準備し出した。
「護。私に出来ることある?」
私が、遠慮がちに言うと。
「じゃあ、玉葱とピーマンをスライスして、人参は、短冊に切ってくれるか」
って、手を動かしながら言う護。
「わかった」
私の返事を聞いて護が、海老の下ごしらえをしだしたのだった。
今回は、いつもと逆で、里沙からの相談でした。
まぁ、誰もが思うことなのでは(作者だけ)?
次回は、護の手料理が登場(余り期待しないでね)。