至上快楽主義
なぁ、何でそんなことを言うんだ?
その彼女の唐突なる言葉に、俺は言葉を失った。
……いや、何と答えたら良かったのか、分からなかっただけだ。
こう彼女は問うたのである。
「宇宙の外側って、どうなっていると思う?」と。
「急に、どうしたんだ?」
俺はやっとのことで、それだけ言った。
「この前テレビで見たの、"宇宙は今も拡大している"って。でも宇宙の外側って、そもそもどうなっているのか分からないじゃない」
彼女はそう言うが、何故急にそんな話題になったのか分からない。
俺は哲学思想が苦手な人間なのである。
ふと、良いことを思いついた。
「外側にあるのは、天国じゃないか?」
「え?」
彼女は驚いて、こっちを見た。
「死んだら行く世界。死後なら見れるだろ」
「そっかー」
しばし考えた後、
「でもその分、天国が小さくなっちゃうよ?」
彼女が新たな疑問を増やした。
うー、本当に君は論理が好きだな。
そう思いながら、俺は彼女を抱き寄せる。
「それで良いんだよ。減った分の天国は、現世に還元されてるだろうから」
そう、今の俺には死後も来世も関係ない。
今、彼女が傍に居るならそれで良い。
「今の俺の天国は、君の隣だよ」
そう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。
いつかの未来の幸せよりも。
俺は現世で、至上快楽主義者になりたい。
俺は今、幸せでいたいから。