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フィリアリアと呼ばれる世界で

現在、フォークロア部(改定中)の消滅危機っ 【お節介のドッペルゲンガー】

作者: 絢無晴蘿

月剣学園高等部。

僕の所属する部はある問題を抱えていた。


部員不足


それは切実な問題である。

現在、部員は二名。

三年生の水埜先輩と、二年生の僕。


ちょうど、季節は桜散る四月。

つまり、新入部員勧誘期間だ。

今の時期に新入部員を確保しなければ、来年僕は部員集めにさらに苦労することになる。

苦労するくらいならいい。

部員一名だからと、つぶされてしまうかもしれないのだ。


それを止める為、今日も先輩と僕は部員を勧誘するためにあの手この手を使って部員を集めようと奮闘していた。




「と、言うことで、部名を変え、チラシも作ってみました」

「ほうほう。さすが綺麗(きり)ちゃん。言葉は乱暴な男の子みたいなのに、絵はかわいらしい」

「先輩。余計なひと言、ありがとうございます」

「いえいえ」

「怒りますよ?」

「スミマセンデシタ」


ここは、民俗学研究部。

民俗学とは、古くから民間に伝わる風俗・信仰・芸能などを研究する学問のことだ。

でも、そんな堅苦しい名前じゃあ、来る新入生も来ないんじゃないのか。ということで、勝手に部名を変えることにしたのは、つい先日。

その名を『フォークロア部』と変えたのだ。


フォークロア。それは、民俗学のことや、都市伝説の古ことを指す。

どちらかというと活動内容は都市伝説について調べたりしていることが多いので、先輩と前から変えようかと話していた。


だがしかし。


「……後輩よ」

「なんですか、先輩」

「いま思ったのだが……フォークロアって聞いて都市伝説のことだってわかる人、どれくらいいるかね」

「えっ……」


四畳一間の部室に哀しい沈黙が降りた。

しかし、それもすぐに終わる。


「まあ、いっかぁ!」

「いいんですか、先輩っ?!」

「それよりも、チラシ配ったり張りに行ったりしましょー」

「えっ、いやっ、そのっ……先輩がいいのなら、いいんですけど……」








「ところで、弟子よ」

「なんですか……」


あっちへふらふら、こっちへふらふら。

そんな感じで帰宅途中の一年生にチラシを配り終えると、とつぜん先輩は『師匠』の顔になった。


僕と先輩は、後輩と先輩の仲であり、両者の母親が友人で小さい頃からの知り合いであり、弟子と師匠の関係でもある。


なんの師弟なのか。

それは――今はもう、いなかった事にされている魔法使いの。


「この高校の七不思議をしっているかね?」

「有名ですからね」

「最近、そのうちの一つ……ドッペルゲンガーが現れるともっぱらの噂だ」

「そうなんですか。で」

「師匠兼部長命令だ。ドッペルゲンガーを捕まえながら部員を探しなされっ!!」

「無理です」


残ったチラシとセロテープを掴むと、さっさと公社に戻ってチラシ張りをすることにする。


だいたい、ドッペルゲンガーの話の大体は、会うと死ぬとか剣呑な内容が多い。

そんな彼らをどうして探さないといけないのか。


「いくら魔法使いの弟子でも、死ぬのは嫌だし」


たしか、七不思議のドッペルゲンガーはなんか違った話だった気もする。が、まあ聞いた時はあまり興味がなかったからどんな話だか忘れてしまった。


「どんな内容だっけ……」


たしか、幸せがなくなるとか、あるとか……?

幸せがあるって、どんな表現だ。


そんな、一人突っ込みをしながらチラシを順調に壁に貼っていく。

一年生は四階の教室を使っている。だから、昇降口から階段、そして四階に。

すでに、他の部活がたくさんのチラシを張っているから、空いた場所をどうにか見つけて張っていく。

そして、最後の一枚になった。


「どうか、部員が増えますよーに」


ぺたりと張ると、部室に戻ることにする。


階段を下りていくと、前に誰かがいた。

ゆっくりと降りていく。

その横を通り抜けようとして――


「あ、こんにちわっ」

「?」


なぜか聞き覚えのある声だ。

声をかけてきたその少女を見る、と。


「……」

「うわー、悲鳴あげて逃げなかった女の子はひっさしぶりだなー」


聞きおぼえがある?

当たり前だ。

なぜなら、きゃらきゃら笑う少女の顔、そしてその声は――僕そっくりだった。


「ドッペルゲンガー……?」


「オオアタリっ!」


何かをしようにも、時間がなかった。

ただ、押された後の痛みと、妙な浮遊感だけががあった。


そう、僕そっくりな彼女は、僕の体を突き飛ばしたのだ。





「綺麗っ!!」







「……先輩?」

「だいじょーぶ、綺麗ちゃん?」


目を開けた途端、先輩の顔がドアップにあった。


気づいた時には、先輩の腕の中。

あわてて抜け出す。


顔が熱を伴って赤くなっていく。

それに、気づかれたくなくて、あわててそっぽを向いて怒った。


「言ったこっちゃないですよ。ドッペルゲンガー捕まえろって……捕まえる前に殺されかけたんですけど」

「えっと、その……ごめん?」


先輩……なんで疑問形。

気づかれなかったことに安堵と……少しだけもやもやしたものが残る。


「で、ドッペルゲンガーに会ったったって?」

「そうですけど……」


まさか、会ってすぐに突き落とされるとは思わなかった。

あの場所を見ても、すでにドッペルゲンガーはいない。

逃げ足の早いことで。


「まあ、怪我なかっただけ良かったってことですな」

「そうですけど」


まさか、また先輩に助けられるとも思わなかった。


「でも、おかしいな……」

「何がです?」

「いや、七不思議に出てくるドッペルゲンガーって……たしか、幸運を運んでくるってはずで」

「え?」


幸運?

いや、普通は不幸とか死とかじゃなかっただろうか。

そういうと、先輩は首を振る。


「いやいや。この高校の七不思議は、ドッペルゲンガーに会うと幸せになるとか、願い事をかなえてくれるとか、想い人と結ばれるとか……そういううわさがあるんですと」

「そうですか」


先輩の言葉は、右から左に流れていく。

しかし、その中で気になることがあった。


「あの……先輩がドッペルゲンガーを捕まえるって言ったのって……」


まさか、想い人と結ばれるため。とか?

この先輩に想い人とか……い、いる……のだろうか。


先輩が、口を開く。


「ひまつぶし」

「……」


この脱力感は何だろう。


せめて、部員が来るよう願い事するとかにして欲しかった。









夕刻。

やはり誰も来なかった部室からの帰り道。

ぶらぶらと二人で帰宅しようとする。


「あ、忘れ物しました。先に行ってて下さい」

「りょーかい」


あわてて教室に戻る。


落ちた太陽が、教室をオレンジに染めていた。

誰もいない。

静かな放課後だ。


どこか、空虚。でも、落ち着く。

いつもざわめきの絶えない教室が、ここまで静かなのは違和感がある。


ふと、視線に気づく。

誰もいないと思っていたのは間違いだったらしい。


机の上に、座っていた。

見覚えのある、黒のセミロングの少女――


「また、君か」


僕、だった。

いや、僕そっくりな顔で、ふだん僕がしないような笑みを浮かべているドッペルゲンガー。


「うん。そうだよ」


女の子らしい、僕。


願い事をかなえるとか、幸せをくれるとか先輩は言ってたけど……。


突然、ドッペルゲンガーは両手で何かを形作る。

親指と人差し指。それをそれぞれ突き合わせて……ハートを作った。


「……えっと」


何がしたいんだ、このドッペルゲンガーは。

先輩より意味がわからない。


「がんばってねー」

「……はぁ?」


まあ、突き飛ばされなかっただけマシか。

そう考えているうちに、ドッペルゲンガーは姿を消した。


なにをしたかったんだろうか。


「綺麗ちゃーん」

「? 先輩?」

「遅いから来た。何かあったのかい?」

「あ、いえ……」


なんとなく、視線をそらした。



甘酸っぱいのは好きだよ〜



どこからかそんな声が聞こえる。


「そ、それより、部員増やしてくださいっ!」

「え、あ、その……精進いたしますっ?!」

「す、すみませんっ! せ、先輩のことじゃないんです!」


願い事をかなえてくれるドッペルゲンガーなのなら、かなえてくださいよ。









そんなこんなで、魔法使いの師弟は今日も廃部の危機に立ち向かっていたりいなかったり。


「先輩、もし、ドッペルゲンガーに会えたら何を願ってましたか?」

「んー……」


今度こその帰り道。

綺麗がそう問うと、彼は綺麗をじっと見つめる。


「この前終わったドラマの第二部が始まりますように」

「……せめて、部員が増えるようにとかにしてください」


なにを期待していたのか。

そんなことを小声で言いながら、綺麗は笑った。




はてさて、この部活。

部の消滅危機を乗り越えられるのか、どうなのか……。


今日も、新入部員は来ることもなく一日が終わる。








以前書いた短編の続編的なものを書いてしまいました。

やっぱり、短編難しい……。

話の構成とか考えるのが苦手なので、どうにかしたです。

ともかく、お読み下さりありがとうございました!

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[良い点] これはいいシリーズだ [一言] はじめまして。 百合なんすか? これ。
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