知らないうちに婚約してたらしい私の話
只今、半眼状態で脳内でクドクドと説明が続いている。
誰に?
ー自分に。
理由?
事の起こりは、本日昼過ぎに遡ります。
父に当日ギリギリのアポで、隣国ネリグラン国からドルミエ家の方が見えました。
最初は和やかに会話されていたそうですが、会ってみたいと先方が言うからと私が呼ばれ、なんかご子息自慢が多いな、キナ臭いなと思っていたら…ドルミエ家のご子息と結婚しウチの爵位と領地を受け継ぐんですよねといきなり確定事項で話がとんできたんですよ。
父に目線と吊り上げた眉で問いかけると、ブンブン頭を振り、そのような約束はしていないし、私は伯爵家の敬称はつくが、領地相続云々はないと伝えたわけです。
だがしかし
そこから2時間にわたり目の前で『爵位(名乗り)のみなんて非常識』『爵位に領地が付かないなんて聞いていない』『前回会った時に、結婚させる約束を交わした』と自称婚約先?が、謎理論を捲し立てているのですよ。
で、領地が付かないのであれば、婚約を解消し、モチロン慰謝料を請求し、私には婚約解消ということで経歴に傷がつくがいいのか!?…と脅してきております。
先方の言う『前回』は5年前のどこぞの夜会だそうで、子供たちのことが話題になり、同じ歳ですね程度の軽いアイスブレイク会話内でのことらしい。お父様も覚えていて、『何れは結婚しちゃうんですよね、寂しいですね。手元に置いておきたいです。』程度でしか話していないと秘書メモにはあるそうです。
で、先方の『うちの息子、婿に!』で、父『御縁があれば改めて。』
超、社交範囲。
どこに『婚約』だの『婿入り』だのが見えるんだろう?
13歳にも分かる、話のぶっ飛び方です。
もはや、言いがかりというか、理不尽な乗っ取り目論むクレーマー。
にしても父様よ。
どうしてここと接点もちゃったんですか。
商売上の重要性があったんですか?
先方も他国の爵位だの法律だのに不勉強極まりなく、大丈夫なのか?うちの国の爵位システムは、珍しいので有名なのに。
〜13歳の私でも知っている☆我がペイン王国の爵位継承〜
公爵と侯爵は、長子が公爵/侯爵を継ぎ、以下、産まれ順に伯爵→子爵→男爵(第四子以下一律)で領地が付く。各家の持ち領地から分けられる。
伯爵位以下は、長子が跡継ぎ(=領地継承)、第二子以下は、家の爵位を名乗れるだけの名誉尊称で領地なし。だから、他家に婿入りしたり、自分で働いたりしている人がほとんど。
つまり、『〇〇伯爵家』に生を受けたのなら、一人っ子でも三人兄弟でも十人兄弟でも等しく『〇〇伯爵家』を名乗れる。問題は、そこに付随する領地や財産があるか無いか…それだけの違い。自力で稼げ♡方式です。
確かにペイン王国の『全員〇〇家』方式はレアと言えばレアではある。とにかく、産まれたら男は『ダン』、女は『ダナ』の敬称が自動的に一生オプションで付いてくる。その子供も一族から離れない限り継承可能なので、貴族と名乗れる人が多い。
ちょっと分かりにくいことは認めなくはないけれど、調べれば、領地etc.付きかどうかは分かるはずのレベル。
ほら、すごく単純なところで産まれ順とかもあるし?ペイン王国は長子が領地筆頭継承を隠してないし?
先程から終始、周辺国は爵位と領地はセットが常識だと主張し、ネリグラン国は末子継承(こっちも珍しい)で、我がペイン王国の法律は関係ないと主張している。いや、ワタクシまだペイン王国人ですよ?そちらとは何も関係ないです。
そして大事なこと。
『ギルダ伯爵家末子』は、弟♡です。
全方向的に可能性0です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そう。ウチことギルダ伯爵家は大家族だ。
母屋に住んでいるのは、祖父母、両親、7人兄弟姉妹。
両親、互いが一人っ子で大家族が欲しかったらしいけど、多すぎる。
そんでもってワタクシことマルガレッタ・ダナ・ギルダは、上から6番目です。
女、女、男、男、女、自分、男。
法律的にも領地は皆無。よっぽど姉様sと兄様sがなんかしないと無理。それは絶対嫌なので、みんな健康でいてください。
長姉テレッサは今年29歳。
夫である義兄は30歳。現在共に銀行勤務。姉はそのうち父親業務を継ぐらしい。1男1女がいる安定の相続人。
次姉フアナ25歳。
離婚済みの1女0歳持ち。
行く行くは長姉一家の補佐業務をすることになっている、只今、育児休暇中の証券取引所勤務。
長兄ユリウス&次兄ヴィクトリオ、双子の大学院生22歳。
それぞれ家庭持ちになる夢はあるようだが、ベンチャー立ち上げたくてそれどころじゃないらしい。
食べていける&夢の両立は大事よね。
3女エリザベッタ姉19歳。
彼氏無し。大学卒業後は、就職希望。
弟ギルベルト、8歳。小学部。生意気。可愛い。
自分。
マルガレッタ13歳。中等部で今後も進学予定。
将来の夢は保育士。めっちゃ自立希望。
実家太い方だから、お一人様暮らしとかしてもかなり恵まれモードですし?『婚約』なんていつの時代とか思ってたら巻き込まれてて、非常に迷惑です。
思い込む?にも程がある…
さて、いることの存在すら忘れられているらしいワタクシの前で、お父様が大きくため息をにこやかな笑顔と共に吐き出した。
「お話は分かりました。」
「分かれば、良いんですよ。じゃあ、当家の息子はいつ頃こちらに」
マジで?
「いえ、来なくていいです。」
ですよね~。
「我々のほうが赴きますよ…法廷に。」
おお〜…ですよね~。
「なんですと?正気ですか?お嬢さんにキズがつきます!」
つきませんて。
「付きませんよ?あなたの仰る『婚約が成立していたか』『爵位と領地の相続権と根拠の国法がどちらの国のものになるのか』等、法定で判断していただいたほうが我々もすっきりするので。」
うんうん。
「いや、そこまでしなくても」
何故に?
「いや、貴方の仰っていた国の法律根拠が自分たちの知らぬ間に改変されてたとあれば、一大事ですので。」
そうそう。
「いや、訴訟は時間も費用も無駄で」
「いえ?当家にとってはそれだけの価値がありますのでご心配には及びません。」
ええ。謎理論は白黒つけましょう。
お父様、それだけじゃぁ、ないですよね?
「ああ、この訴訟の決着がつくまでは、そちらとの取引は停止させていただきますね。国際法で訴訟中は関係する団体同士の取引停止となることは、只今、秘書が確認してまいりましたので。」
「え…いや…」
このオジサマ、本当に大丈夫なのかしら?すごい汗。
「マルガレッタもそれでいいね?」
お!こちらに来ました。勿論、訴訟でしっかり証拠を残して潰しましょう!
「法廷がしっかり判断してくれますよ!公正を期すために貴方にも最初に同意いただいた、今回の会話の録音と録画記録も提出させていただくので!」
さあ、お帰りだといい笑顔で侍従に告げ、完璧な笑顔で送り出すお父様の空気が恐ろしい。
それを眺めながら「乗っ取るときは、もう少し頭が良くないと」と漏らしたら、頭をぐしゃぐしゃに撫でられ、鬱陶しいけれど嬉しかった。
後日。
当然だが、訴訟にしました。お父様と私の連名で。
勝ちました。
当たり前です。
ドルミエ家の運営する会社は潰れました。ウチが吸収です。ネリグラン国への足掛かりゲットです。オーナー一家(ドルミエ家)は、吸収の際に除外しました。
また、婚約だの婚約解消だの言われても面倒くさいですし?
学校では、いろいろ聞かれたり小論文のネタの一つに活用したりしました。
将来は弁護士になるのもいい気がしています。




