君がくれた力の名は『勇気』
あいつと出会ったのは昔の事、あいつは昔から強くてそこら辺の大人より強かった。俺もいつかそれくらい強くなりたいと思って七年頑張っているのに、俺には才能がないのか大して強くなれず、同年代の奴らに負けてばかりだった。
「だっせー!」
「よえーー!」
「剣やってる意味あんのかよ〜?」
そうやって笑われる日々だった。ある日、心が折れそうになってその前に剣を辞めてやろう思って木刀を投げて「くそっ!剣なんて辞めてやる!」と言ったことがある。
そんな時に俺の前に木刀を突きつけて「悔しくねーのかよ、見返したくねーのかよ」とあいつは俺よりも悔しそうに言った。それから三年後。
「よっ!また俺が一本だな!」
「くそっ、また負けた……!」
俺は親友の葵に負けてばかりだ、俺よりも小柄で身長も低いけど葵は俺よりも強かった。
「ははっ、やっぱ俺には敵わねーな!」
「明日こそは勝ってやるからな!」
「おーおー、その意気だ!そういえば今日祭りあるんだってよ!一緒に行こうぜ!」
俺達はいつもこんな風に一緒に居る。葵はいつでも真っ直ぐで強くて、友達想いのいい奴だ。だが一緒に着替えをするのを非常に嫌がって「着替えるから着いてくんなよ!」と言ったり、飯を分けてやろうとした時も遠慮する時もある。
「颯ー?早く行こうぜー?」
俺の名前を呼んで葵は振り向く。俺は汗を拭いて葵と一緒に祭りに行く、夕方になるとちらちらと屋台の灯りがつき始める。
「おー!すっげー!次あっち行こうぜ!!」
葵は買ったりんご飴片手に俺を引っ張って行く。いつも強引だと思うが俺はその時間が割と好きだ。そんな毎日が続いてけばいい。そう思ってたのに。ある日葵は、中々道場に来なかった。そんな時に道場仲間が俺に話しかけてきた。
「颯、葵の話知ってるか?」
「え?」
「村の女が葵が城の方に連れてかれる姿見たって……」
その時俺はいつか葵がしていた憂いを帯びたような、悲しそうな、影あるような……そんな表情で言ったことがある。
『お前は、明日を決めることができるんだよな……俺とは違って自由にさ』
そう話してたことがある。あいつにどんな理由があるのかは知らない。けどあいつが城に連れて行かれたなら!放っておけるわけがないだろ!俺は木刀を持って、城に乗り込んだ。あいつとばかり戦っていたからか分からないけど、かすり傷を少し負いつつも俺は進んで行く。あいつと戦って行くうちに少しずつだけど、成長はしてる。そう感じた。あいつが……葵が俺に教えてくれてたから。
『もっと腰を下ろして重心を安定させろ!!』
『しっかり踏み込め!!』
『力強く思いっきり突け!!』
あいつが教えてくれたこと全て出し切って、お前を助けに行く。お前を助けに行く為の力ならお前にもらった。お前を助け出したいと思ったその意思だけで充分だ。そうだろ?葵、待ってろ、今行く。
「はぁっ!!」
「ぐぁっ!!」
「もっと城の者を集めろ!!侵入者だ!」
城の奥に進むにつれどんどん敵が多くなって行く。城の奴らなんて知ったことじゃない。どんどん戦う奴らも強くなっていき、俺1人で入って行く俺の体力も消耗していく。本当はこの先もっと強い奴が出てきたらと思うと怖くて足がすくんで震える。でもお前を取り戻す為に俺は進む。
「うりゃあぁっ!!」
「うぉぉっ!!」
「やぁぁっ!!」
お前を助けるために立ち向かう、その為ならこんな奴ら怖くない。葵、お前は今この奥にいるのか?たった1人で。待っていてくれ、今すぐ行くから。負けないから、お前が認めてくれたから俺は大丈夫、まだ戦える。お前を助け出すまで負けるわけにはいかないんだ。だから俺は葵に届くように叫んだ。
「葵ーーーーーーー!!助けに来たぞーーーーーーー!!」
「っ!!」
「はぁぁっ!!」
少し経ち、なんとか敵を切り抜けた俺は少しでも体力を回復させる為に死角に潜んでいた。
「いたか?」
「いや、侵入者はどこだ!?」
「大分あっちは体力を消耗してるはずだ!!見つけ次第数で応戦すれば問題ない!!」
「いたぞ!!」
俺は潜んでいるところを遂に見つかり、取り押さえられてしまう、できる限り応戦したが、敵の1人が言っていた通り、俺は体力を相当消耗していた。無理もない、門の外からここはもうかなり城の奥だ。俺の体力も無尽蔵じゃない。
「大人しくしろ!!」
「侵入したからには首を斬らせてもらうぞ!!」
ここで終わっちまうのか……?葵を救い出せてないのに……。そういえば……葵は以前こう言ってたことがある。
『知ってるか颯!人ってさ守りたいもんとかがあると限界超えて想像以上に力発揮できるんだぜ?すげーよなぁ!』
あの時俺は『なんだそれ』と言って笑い飛ばしたが、今なら分かる気がする。俺は負けるわけにはいかない!!またあいつといたいから!!俺はそう思って渾身の力で敵を振り切った。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「颯っ!!」
そうやってまた踏み込もうとした時、誰かに抱きしめられた。
「え……?」
その細腕には何度も見ていたから間違いようがない。
でも色鮮やかな着物で、上等な質感……。俺がそっちを振り返るといつも結んでた腰までの長い黒髪は、下ろされていて、俺と居た時より幾分柔らかで、高い声……。まさにお姫様というような姿のあいつが俺の前に膝立ちで、俺の手を握っていた。
「あお……い……?」
「颯……ごめんね、黙ってて……隠してて……私……」
そして敵たちが驚いた顔で話しかけてきた。
「姫様!!侵入者からお離れください!」
「違う!!彼は、私の大事な親友だ!これ以上手出ししないで!今すぐ手当てしなさい!!」
お前はその姿でも俺を友達として扱ってくれるんだな……。俺だって葵が男だろうが女だろうが関係ない。葵は俺をの紛うことなき、大切な親友なんだから。その日から数日。
「いてて…」
「颯、まだ寝てた方がいいんじゃねーか?」
「肉体はお前よか弱くねーっつの」
「ははっ!そうかもな!」
あれから葵は城の奴ら全員を納得させて、日付が変わる前に、城に戻ってくることでまた自由に出歩けることになった。俺は結構怪我を負ったけど、俺は今も変わらず、葵と笑い合っていられる。
葵が異常に着替えるのを拒んでた理由や
意味深な言葉伏線をなるべく違和感なく
回収できたと思ってます。




