夜伽のあとで
涼やかな音楽に目を覚ますと、あの胡弓や二胡に似た楽器を王が弾いていた。
なんだ。
私などに弾かせなくても上手いではないですか、
と寧々子が思ったとき、寝具の上であぐらをかき、月を見上げていた王が弾く手を止め、こちら見た。
天蓋の幕は開いており、冴え冴えとした月が王の後ろに現れていた。
「お前はシャターンの姫だったのか」
……知らずに同衾したのですか。
誰かが私がシャターンの姫だと王様に教えたのだろうか。
じゃあ、今、眠っている間に人が入ってきたのかな、恥ずかしい、
と寧々子は布団なのだろう薄く白い布を頭から被る。
王の声が布越しに聞こえてきた。
「私がお前を寵愛したら、シャターンが力を持ってしまうな」
……寵愛しなければよいのでは?
「だが、今のところ、私の寵姫となりそうなのはお前だけだから」
寧々子は布団から顔を出して言う。
「どうしてです?」
「私はお前の他には手を出しておらぬ」
「えっ?」
「手を出しておらぬのに、子ができるのよ」
とカムラン王は溜息をつく。
「……その辺はハッキリしておいた方がいいですよ」
と寧々子は言った。
寧々子の親は弁護士だった。
「この国には飲めば子ができるという川があるらしいが。
それでであろうか」
「王様なのに、この国のこと、ご存知ないんですか」
とつい言ってしまう。
無礼討ちにされるかと思ったが、王は月を見ながら語り出す。
「私は、よそから連れてこられた王なのだ」
昔、追放された王子の血筋なのだと言う。
「この国で内紛が起こり……、
みな死んだ」
他にいなかったんだな。
王は寧々子を振り向き、
「今のところ、私はお前しか寵愛しておらぬから、お前を正妃にしてもよいのだが。
シャターンが力を持つのは困る」
とまた言う。
「難しいんですね、王様の結婚って」
そうだな、と何処か人ごとのように王は言い、また黙って楽器を弾きはじめた。
寧々子は寝台の上で白い布を被ったまま、聴いていたが、ふと王は爪弾く止め、訊いてきた。
「……夜伽とは、これでよかったのであろうか」
いや、わかるわけないじゃないですか、
と寧々子は言った。




