王様は寧々子の部屋に泊まってみる
「あの、みなさん、まだいるんですけど」
と寧々子が王をその手で押し返すと、みんなが、なんと無礼なっ、という顔をする。
いや、寝屋を覗こうなどと、あなた方が無礼ですよ、と思うのだが。
もちろん、ここでは現代日本の常識など通じない。
王は寧々子にキレるでもなく、ゆったりと話しかけ、今の状況を悟らせようとする。
「娘よ」
「寧々子です」
「寧々子よ。
天蓋がなんのためにあると思う。
人の多い宮殿の中でも、戦地でも、街中でも。
天蓋があれば、そこはプライベートな空間なのだ」
「違います」
「着替えを人に見せるのも、高貴な者だけができることだぞ」
……そんな高貴な者のあかしは結構です。
「わかった。では、みなの者、下がれ」
と王が壁際の貴族たちを振り向く。
なんと。
王はあの小娘の言いなりではないか、とみながどよめいた。
だが、王の命令なので、みなが去ろうとしたとき、
「お待ちください、王よ」
と年配の侍女が進み出た。
「なにか隠し持っていてはいけませんので、その娘、検めます」
えっ?
その侍女の号令でやってきた女の召使いたちが、寧々子を王の許から遠ざけ、裸にむくと、もう一度、寝所に放り込んだ。
いや、情緒とかないのですかっ、と寧々子が思ったとき、ジルが蚊帳のような幕の向こうから、
「王よ。
自らが脱がせたいとお考えならば、もう一度、着せますが」
と言っているのが聞こえてきた。
いや、だから、情緒とかっ。
「よい」
よいじゃないですっ。
よくないですっ。
私、昨日まで、普通の女子高生だったんですっ。
こんなところで、王様に襲われるとか意味わからないんでっ、
と寧々子は心の中で叫んでいたが、結局、現実感も湧かないまま襲われた。
「心配するな。
私も初めてだ」
と寧々子の上に乗る王様は言う。
心配します……。
「寝屋の講義とかなかったのですか?」
「噛みつかれそうで、女性は怖い。
それで断った」
大丈夫なんですか? 本当に……。
「私が女性と一線を越えるのは、今しかない気がするし。
お前しかいない気がする。
お前は実に興味深く、愛らしい」
ぎこちないが、用意された言葉でないのは伝わった。
「大丈夫だ。
講義など受けずとも太古から人間は愛し合い……
増えてきた。
そうジルも言っている」
――ジル様!?
と振り返ったが、
今私に責任を押し付けないでください、という感じに壁際のジルが目を逸らす。
――っていうか、まだいたのですか!




