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身代わり花嫁の結婚 ~古代帝国の後宮日記~  作者: 菱沼あゆ


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4/9

王様は寧々子の部屋に泊まってみる

 

「あの、みなさん、まだいるんですけど」

と寧々子が王をその手で押し返すと、みんなが、なんと無礼なっ、という顔をする。


 いや、寝屋を覗こうなどと、あなた方が無礼ですよ、と思うのだが。

 もちろん、ここでは現代日本の常識など通じない。


 王は寧々子にキレるでもなく、ゆったりと話しかけ、今の状況を悟らせようとする。


「娘よ」

「寧々子です」


「寧々子よ。

 天蓋がなんのためにあると思う。


 人の多い宮殿の中でも、戦地でも、街中でも。

 天蓋があれば、そこはプライベートな空間なのだ」


「違います」


「着替えを人に見せるのも、高貴な者だけができることだぞ」

 ……そんな高貴な者のあかしは結構です。


「わかった。では、みなの者、下がれ」

と王が壁際の貴族たちを振り向く。


 なんと。

 王はあの小娘の言いなりではないか、とみながどよめいた。


 だが、王の命令なので、みなが去ろうとしたとき、

「お待ちください、王よ」

と年配の侍女が進み出た。


「なにか隠し持っていてはいけませんので、その娘、(あらた)めます」


 えっ?

 その侍女の号令でやってきた女の召使いたちが、寧々子を王の許から遠ざけ、裸にむくと、もう一度、寝所に放り込んだ。


 いや、情緒とかないのですかっ、と寧々子が思ったとき、ジルが蚊帳のような幕の向こうから、

「王よ。

 自らが脱がせたいとお考えならば、もう一度、着せますが」

と言っているのが聞こえてきた。


 いや、だから、情緒とかっ。


「よい」


 よいじゃないですっ。

 よくないですっ。


 私、昨日まで、普通の女子高生だったんですっ。

 こんなところで、王様に襲われるとか意味わからないんでっ、

と寧々子は心の中で叫んでいたが、結局、現実感も湧かないまま襲われた。


「心配するな。

 私も初めてだ」

と寧々子の上に乗る王様は言う。


 心配します……。


「寝屋の講義とかなかったのですか?」


「噛みつかれそうで、女性は怖い。

 それで断った」


 大丈夫なんですか? 本当に……。


「私が女性と一線を越えるのは、今しかない気がするし。

 お前しかいない気がする。


 お前は実に興味深く、愛らしい」


 ぎこちないが、用意された言葉でないのは伝わった。


「大丈夫だ。

 講義など受けずとも太古から人間は愛し合い……


 増えてきた。


 そうジルも言っている」


 ――ジル様!?

と振り返ったが、


 今私に責任を押し付けないでください、という感じに壁際のジルが目を逸らす。


 ――っていうか、まだいたのですか!




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