無礼者めっ
「刺客が入ったそうだな。
私と暮らすか」
訪ねてきた王は寧々子にそんなことを言い出した。
「すでに宮殿で一緒に暮らしてますよ?」
そうではない、とカムラン王は言う。
「私と寝室を常に共にし、日中も私と行動するかと訊いているのだ」
真っ平ごめんです、と寧々子は思っていた。
それでなくとも、王様といると、護衛と使用人、あと、なんだかわからない貴族やその護衛たちまで、ゾロゾロついてきて困っているのに。
「王様の執務中など居場所もございませんし」
「横に一緒に座るとか」
……教室かな?
寧々子は正面を向いて、仕事をしている王と本を読んでいる自分を想像した。
「後ろに座ってるとか」
ちゃんと勉強しているか見張っている家庭教師かな?
「……私の膝の上でもよいぞ。
長老、ガリブも若い頃はそうして仕事しておった」
壁際にたまたまいたらしいガリブが、ひっ、と息を呑む。
ベルカントがそれを見て笑っている。
「滅多に王宮になど来なかったのに、何故、そんなところだけ……っ」
とガリブが小声で愚痴るのが聞こえてきた。
「刺客と言えば、王様の方が危なくないですか?
いつも周りにこれだけゾロゾロ人がついて歩いてて。
不審な人物や、小金を握らされた人が混ざっていてもわからないじゃないですか」
なんと無礼な小娘だっ、とそのゾロゾロな貴族たちがざわめく。
ガリブやベルカントは平然としていた。
自分たちが疑われることなどない、と思っているのだろう。
だが、寧々子は、並んで立つ二人をじっと見てみた。
いやいやいやっ、という顔を二人がする。
「無礼であろうがっ、寧々子よっ」
「我々が王様を殺る気なら、とっくの昔にやっておるわっ」
「そうだっ。
我々なら、王様がここに到着する前に殺っておるっ」
いやちょっと、という顔をジルがした。
「そもそも、我々が王様をここにお招きしたのだぞっ」
そうでしたね。
反勢力を抑え込むために傀儡として呼んできたんでしたね、と思ったとき、ジルが長老たちを注意した。
「あの、寧々子様は今や王の寵姫様ですので。
寧々子様とお呼びください」
だが、ハッとガリブは寧々子を嘲笑う。
「寵姫といっても、王の一時の気まぐれでお側にはべらさせていただいているだけ。
このような、何処にでもいそうな娘、すぐに飽きられることでしょうっ。
そうですよね、王様っ」
王は、
……私に同意を求めるな、という顔をしていた。
だが、この王様は素直なので、
こういうのはすぐに飽きるものなのだろうか?
という顔で小首を傾げている。
……ヤバイ、と寧々子は思う。
「そもそも、王は寧々子様になにも与えてはいないではないですか。
宮殿も牛もロバもっ」
いや、牛やロバはいりません……と高らかに響き渡る声でケチをつけてくるガリブに思う。
「そうか。
寵姫にはそのようなものを与えるものだったのか。
寧々子には食べるものや飲むものを与えておけばいいと思っていた」
と王は言った。
ペットかな……?
おそらく、最初にデザートビュッフェで喜んだからだろう。
「寧々子よ。
なんでも我儘を申してみよ。
お前の望みなら、なんでも叶えてやる」
そこで、ああ、と王は付け足した。
「私の側を離れたいということ以外なら」
……さらっとクサい台詞を吐きますね。
さすがは王様だな、と思いながら、寧々子はちょっと照れた。




