長老の呼び出し
「新参者のくせに王も生意気だが、あの娘も生意気だ」
長老ベルカントのお付きの者、サンジェスは相槌に困りながら、はあ、と言う。
――そりゃ、王様なんだから、偉そうで当たり前だよな。
いや、そもそも、あの王様、あんまり偉そうじゃないんだけど。
正しい血統のものを祭り上げねば国がまとまらないからと連れてきたのに。
ぼんやりして見えて意外にやり手なのが、長老たちはお気に召さないらしい。
ちなみに、お付きの者は主人の身の回りの世話をしたり。
秘密の話の話し相手になったりする。
幼い頃から知っている有力貴族の気心の知れた子どもを連れてきて、お付きの者として使うときもあれば。
平民上がりだが、腕が立って、口がかたい人間を使うこともある。
サンジェスは平民ではないが、貴族の家の妾の産んだ五男坊で、家から得られる物はあまりない立場だった。
どちら出身でもある程度の年数を経たところで、それなりの地位を与えてもらえることが多い。
仕えている主人が出世したらの話だが――。
サンジェスは若く。
まだまだお付きの者としての生活は長そうだった。
健康的な生活送ってるから、現役長そうなんだよな、ベルカント様は、とサンジェスは思っていた。
いきなり、ベルカントがポックリいったり、引退したりしても。
ベルカントの家族がサンジェスをそのまま使ったり。
それなりの役職につけてくれたり。
牛やロバや家を与えて、そこそこ裕福に暮らせるようしてくれたりするので、今後の生活に不安はなかった。
まあ、それも、途中で、ベルカントにクビにされなければの話だが。
というわけで、クビにならないよう、常に察しが良く、サッと動けるサンジェスなのだが、今回はさすがにわからなかった。
他の長老方は自室にいるときは、寝椅子に転がっては果物を食べたりしているらしいのだが。
ベルカントは常に座ることなく、歩き回っている。
仕え始めたばかりの頃は、
ダラダラ休むことない立派な方だっ、と他の長老たちと比べて、感心していたものだが。
最近では、
……この人、座ってられない人なんじや、
と思っている。
どのみち、歩き回ることで、他の長老たちより元気で長生きしそうなのは確かだった。
今日も日当たりのいい窓際の辺りを歩き回っていたベルカントがピタリと足を止めて言う。
「お前、あれを呼んでこい」
「は、どなたをですか?」
優秀なるサンジェスにも、さすがに唐突すぎてわからなかった。
「あれと言ったら、あれだ」
「エミール様ですか?」
「メイッサに決まっておるであろうがっ」
えええーっとサンジェスは思う。
いやいやいや。
メイッサ様をここにお呼びしたことなんて、一度もありませんけどっ?
なんなら、あなたの口からその名前が出たこともありませんけどっ?
そう思っていたが、ぐずぐずしているとどやされるのでサンジェスは慌てて出て行った。
「メイッサ様。
サンジェスです」
ジャンヌに取り次いでもらい、訪ねた瞬間、
「長老に用はございませんが」
とメイッサに言われる。
こちらは話が早すぎるっ。
「すみません。
呼んでこないと殺されるんで」
と拝み倒して来てもらったが、案の定、ベルカントの話はロクな話ではなかった。




