試験の内容
「なんだ、そんなことを心配して参加すると言ったのか。
この国は別に庶民でもそこそこ豊かな暮らしをしているが。
ああ見えて、王様が有能だからな」
と王様が帰ったあとジルが言う。
……ああ見えてって、と思いながら、寧々子は言った。
「じゃあ、やめます」
「もう参加を表明したぞ」
仕事早すぎっ。
王様が語らってる間に、もう人を使って伝えていたのか。
「ちなみに、今回の試験はもうはじまっていて、お前は遅れてスタートすることになる。
試験内容は長老ベルカント様の七歳になる孫が今度、神官デビューするんだが。
ずっと喉の調子が悪いので治せというものだったな、確か」
「めちゃくちゃ私的な依頼じゃないですか」
「長老たちも疲れているんじゃないか?
妃たちを張り合わせる内容を考えるのに。
そもそもカムラン王は、女性にあまり興味がなく、お前が来るまでは後宮もほったらかしだった」
いつも側にいる私との仲が噂になるほどに、と真顔でジンは言う。
「だから、暇つぶしになるかと、妃たちを争わせていたのだが。
それにずっと付き合っている長老たちも大変だったろうな」
とジンは長老たちをねぎらって言った。
「まあ、長老たちと私とは仲は良くはないのだが」
「そうなんですか?」
「積極的に攻撃されることはないが。
若造のくせに生意気だ、と思われているのは確かだ。
……ちなみに、お前も私と親しくしているので、おそらく、敵視されている」
「遠ざかってください……」
と寧々子は訴えながら、距離をとる。
まともな法律とか倫理観とかなさそうな古代の王宮で、知らない間に、権力者に疎まれているのは物騒だ。
だが、ジルは、
「お前には王様と宰相がついているのだぞ。
最強じゃないか」
と主張する。
そこに王様が去ったあと、開いたままだった扉から、艶かしい感じの女性たちが現れた。
「あんたがシャターンの姫ね。
今から参加して間に合うと思ってるの?」
……もう後宮中に参戦したことが知れ渡っている。
「うちは遠国から高価な薬を取り寄せたわ」
「私は国から医者を呼び寄せたわ」
「妾は西国から神官を呼び寄せ、発声法を学ばせるぞ」
「今からできることなんてあるかしら?
宰相様もそんな女についてても、いいことなんてありませんわよ。
王様も遠方から来た小国の姫が物珍しくて手をつけてみただけでしょうし」
すぐに飽きてしまわれますわよ、と言う妃のひとりの言葉に、
「まあ、確かに」
とジンは頷く。
――簡単に裏切られたっ!
「今、私がついてるっておっしゃってくださったじゃないですか~っ」
「大丈夫だ。
お前には王様がついている」
なんか王様ごと切り捨てられたっ!
ほんとうに後宮は油断のならないところだ……、
と寧々子は実感した。




