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転生少女はテンプレを望む改!!  作者: parade


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9/9

第8話「高級宿屋シジュへようこそ!……え、高すぎ?」

「ここが……シジュ……」


フェリオさんに教えてもらった通りに歩いてきた私の目の前に、それはあった。


でかい。


とにかくでかい。


テンパレスの他の建物が三階建てくらいなのに対して、シジュは優に五階はある。外壁は白い石で造られていて、入り口のアーチには金の装飾が施されている。扉の前には制服をびしっと着た見張りが二人立っていて、その佇まいが「庶民、お断り」とでも言いたそうだった。


「……高い宿屋って聞いてたけど、これは……」


思わず足が止まった。


いや、でも。今日泊まれなかったら本当に野宿だ。魔物に食べられるか凍死か。選択肢はここしかない。


「よし……!」


頬を叩いて気合いを入れる。気合いを入れすぎないように気をつけながら。さっきギルドで学んだ。


「……失礼します」


見張りに会釈して中に入ると、ふわりと甘い香りが漂ってきた。


ロビーは広くて、床には深紅の絨毯が敷かれている。天井から下がるシャンデリアは魔法なのか何なのか、炎ではない淡い光を放っていた。カウンターには金色の髪を丁寧にまとめた女性が、品のある笑顔でこちらを見ている。


「……テンプレ……!高級宿屋のテンプレ……!」


「いらっしゃいませ、お客様。ご宿泊でしょうか?」


「あ、はい!一泊お願いしたいんですけど……」


「かしこまりました。一泊でしたら銀貨三十枚になります」


「……………え?」


「銀貨三十枚でございます」


私はそっとティックお婆ちゃんから受け取った金貨を見た。


ティックお婆ちゃんに制服の買い取りをしてもらったとき、「制服の素材が珍しいから」という理由でかなり奮発してもらった。でも金貨一枚の価値が銀貨何枚分なのかを、私は全然知らない。


「……あの、すみません。金貨一枚って銀貨何枚分になりますか?」


「金貨一枚は銀貨百枚分でございますよ」


「……! じゃあ余裕で……!」


「ただしこちら、素泊まりのお値段でして。夕食・朝食付きですと銀貨五十枚になります」


「……夕食付きでお願いします」


財布代わりに使っている布の袋を取り出しながら、私は心の中で「まあ贅沢は最初だけ!」と言い聞かせた。明日からは安宿を探すんだ。


「ありがとうございます。お部屋はこちらになります」


案内された部屋は三階にあった。扉を開けた瞬間、思わず声が漏れた。


「……すごい」


大きなベッド。ふかふかそうな枕。クローゼット。ちゃんとした洗面台まである。窓からはテンパレスの夜景が見えて、石畳の通りに点々と灯る街明かりがとても綺麗だった。


「本当に異世界に来たんだなぁ……」


ベッドに倒れ込む。フカフカどころか、今まで生きてきた中で一番柔らかいかもしれない。


「あー……疲れた……」


転移して、森を抜けて、街に着いて、服を売って、ギルドカードを作って、宿を三件断られて……。


一日でこんなに色々あったのか。


目を閉じる前に、今日出会った人たちの顔を思い浮かべた。犬耳のハイルさん、ティックお婆ちゃん、受付のお姉さん、金髪のカイト……。


「明日は……初めての依頼、かな」


冒険者ギルドカードはある。お金も少しある。


あとは一歩踏み出すだけだ。


「……よし、寝よう」


こうして転移一日目の夜は、高級宿屋のふかふかベッドの上で静かに幕を閉じた。

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