第1話「異世界はテンプレばかり?」
まず最初に確認しなければならないことがある。
今、私がいるのはどこなのか、という問題だ。
見渡す限りの緑。高い木々、見たことのない植物、地面を這う謎の蔓草。鳥のような、でも明らかに普通じゃない鳴き声が遠くから聞こえてくる。
私はゆっくりと立ち上がり、周りをぐるりと見渡してから、一言叫んだ。
「異世界キタァァァーーーッ!!!」
なぜ確信できるかって? それは簡単。あの植物だ。見たことない、絶対に地球には存在しない、どこか光を帯びた青紫の花。あれが決め手だった。
異世界モノの主人公が「ここは本当に異世界なのか……?」と疑う場面でよく出てくる、あれだ。謎の植物がそう告げているのだ──ここは異世界だと!
テンションが上がりすぎて少し深呼吸する。落ち着け私。落ち着くんだ咲空。
「ふぅ……よし。冷静に、冷静に。まずやることといえば……!」
私は両腕をスッと伸ばし、満を持して叫んだ。
「ステータスオープン!!」
……。
……………。
「…………あれ?」
何も起きない。
「ステータス、オープン!!」
やっぱり何も起きない。
「…………まじですか~……」
テンプレランキング第3位、「ステータスオープン」。まさかの撃沈。
いや、でも仕方ない。そういう異世界だってある。スキル制じゃなくてレベル制とか、そもそもステータス画面が存在しない世界とか。うん、仕方ない。うん。
気持ちを切り替えよう。
次に確認するのは自分の状態だ。髪を触る。黒。……黒髪は一部の世界じゃ珍しいとか邪悪なイメージとか言われてたりするし、案外おいしいかもしれない。耳を触る……うん、猫耳じゃないし尖ってない。残念。
それからスカートに手をやって確認する。
「……あれ、制服そのまま残ってる?」
私が転移前に着ていた学校の制服が、そっくりそのまま残っていた。
これは…! 神様、テンプレ分かってるぅ!
ヨーロッパ風の中世異世界だったら、現代の服は珍しいし、そこそこのお金になるはず。財布はないけど、服があればなんとかなる。
「容姿より先に街を探さなくちゃ!」
こうして私は、お金を作るべく始まりの森を抜け出した。現代の制服姿で、一人で。
……我ながら相当残念だとは思う。




