表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第二話☆鉄男、入団志願?

第二話 ☆ 鉄男、入団志願?


 放課後、宮本時計店の戸が勢いよく開いた。


「おい、宮本!」


 田中鉄男だった。


「この前の三毛猫の件だ。譲渡会でおばさんに聞いたぞ。お前が見つけたんだってな」


「たまたまだよ」


「たまたまで黒猫の動きまで読むかよ!」


 鉄男は腕を組んだ。


「探偵団を作ろうぜ。商店街専属だ」


「探偵団……」


 そのとき、入口で小さな咳払いがした。


「……あの」


 二人が振り向く。


 そこに立っていたのは、三つ編みの女の子。


「時計、止まってるのに、音だけするんです」


 鉄男は眉をひそめる。


「なんだよ、子どもは帰れよ」


「同い年です」


 女の子はきっぱり言った。


「それに、わたし、ちゃんと見たんです」


 暁がやわらかくたずねる。


「きみ、名前は?」


小鳥ことりです」


 鉄男は小さく鼻を鳴らす。


「女は探偵団に入れねぇからな」


 小鳥は目を細めた。


「まだ作ってないですよね?」


 暁は、思わず吹き出しそうになる。


「……時計の話、聞こう」


「止まってるのに、音だけするんです」


 小鳥は、宮本時計店の奥に置かれた古い振り子時計を指さした。


 振り子は動いていない。


 針も、止まっている。


 でも——


 カチ、……コチ。


 微かに音がする。


 鉄男は腕を組んだ。


「壊れてんだろ」


「でもね」


 小鳥は首をかしげる。


「音、ずっとじゃないの。風が吹いたときだけ」


 暁が目を上げる。


「風?」


「さっき窓が開いたときも、鳴りました」


 鉄男は鼻で笑う。


「偶然だろ」


 小鳥は静かに首を振った。


「振り子は止まってるけど、ガラスは揺れてるの」


 暁は偏光フィルターを取り出した。


 光の反射を消して見る。


 確かに、時計の前面ガラスがわずかに震えている。


 店の横の路地から、風が抜ける。


 その風が、ガラスを震わせて、内部の金属と触れて音を出していた。


 カチ、……コチ。


 鉄男が目を丸くする。


「……そんなこと、気づくか?」


 小鳥は言った。


「おばあちゃんが、障子が鳴るときも同じだって言ってました」


 暁は、にこりと笑う。


「見えないものを見る目、だね」


 鉄男は腕を組んだまま、ふいっと横を向いた。


「……まあ、悪くねぇ」


 小鳥が小さく笑う。


「入団、不合格ですか?」


 鉄男はしばらく黙っていたが——


「仮入団だ」


鉄男が少し不機嫌そうに言う。


「……仮入団だ」


小鳥はにっこり笑う。


暁は二人を見る。


風が抜ける。


止まったはずの時計が、もう一度だけ鳴る。


カチ、……コチ。


――三人の探偵団が、静かに動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ