第二話☆鉄男、入団志願?
第二話 ☆ 鉄男、入団志願?
放課後、宮本時計店の戸が勢いよく開いた。
「おい、宮本!」
田中鉄男だった。
「この前の三毛猫の件だ。譲渡会でおばさんに聞いたぞ。お前が見つけたんだってな」
「たまたまだよ」
「たまたまで黒猫の動きまで読むかよ!」
鉄男は腕を組んだ。
「探偵団を作ろうぜ。商店街専属だ」
「探偵団……」
そのとき、入口で小さな咳払いがした。
「……あの」
二人が振り向く。
そこに立っていたのは、三つ編みの女の子。
「時計、止まってるのに、音だけするんです」
鉄男は眉をひそめる。
「なんだよ、子どもは帰れよ」
「同い年です」
女の子はきっぱり言った。
「それに、わたし、ちゃんと見たんです」
暁がやわらかくたずねる。
「きみ、名前は?」
「小鳥です」
鉄男は小さく鼻を鳴らす。
「女は探偵団に入れねぇからな」
小鳥は目を細めた。
「まだ作ってないですよね?」
暁は、思わず吹き出しそうになる。
「……時計の話、聞こう」
「止まってるのに、音だけするんです」
小鳥は、宮本時計店の奥に置かれた古い振り子時計を指さした。
振り子は動いていない。
針も、止まっている。
でも——
カチ、……コチ。
微かに音がする。
鉄男は腕を組んだ。
「壊れてんだろ」
「でもね」
小鳥は首をかしげる。
「音、ずっとじゃないの。風が吹いたときだけ」
暁が目を上げる。
「風?」
「さっき窓が開いたときも、鳴りました」
鉄男は鼻で笑う。
「偶然だろ」
小鳥は静かに首を振った。
「振り子は止まってるけど、ガラスは揺れてるの」
暁は偏光フィルターを取り出した。
光の反射を消して見る。
確かに、時計の前面ガラスがわずかに震えている。
店の横の路地から、風が抜ける。
その風が、ガラスを震わせて、内部の金属と触れて音を出していた。
カチ、……コチ。
鉄男が目を丸くする。
「……そんなこと、気づくか?」
小鳥は言った。
「おばあちゃんが、障子が鳴るときも同じだって言ってました」
暁は、にこりと笑う。
「見えないものを見る目、だね」
鉄男は腕を組んだまま、ふいっと横を向いた。
「……まあ、悪くねぇ」
小鳥が小さく笑う。
「入団、不合格ですか?」
鉄男はしばらく黙っていたが——
「仮入団だ」
鉄男が少し不機嫌そうに言う。
「……仮入団だ」
小鳥はにっこり笑う。
暁は二人を見る。
風が抜ける。
止まったはずの時計が、もう一度だけ鳴る。
カチ、……コチ。
――三人の探偵団が、静かに動き出した。




