初対面で『愛する事は無い』と言われたので……
「最初に言っておくがこれは家同士の繋がりの為の婚約だ、私はお前を愛する事は無い」
……いきなりお見合いの場でこんな事を言われました。
私を含めて隣にいた両親、更に相手側の両親も固まっています。
さて、こんな時私が取るべき対応は?
お父様に視線で合図を送った。
『やってよし!』とのサインをくれた。
バッチーーーン!!
渾身の力で振り被りビンタが綺麗に決まりました。
そりゃあもう相手が綺麗に倒れるぐらいに。
「リザード様、初対面でまだどういう人物かわからないのにそういう事を言うのは良くありませんわ」
手がヒリヒリするけど私エリアーヌ・ウェイン侯爵令嬢は笑顔で言った。
「な、なんでいきなり……」
ビンタされて真っ赤に腫れ上がった頬を抑えながらお見合い相手であるリザード・レイスン候爵令息は涙ながらに言った。
「ビンタされる様な事を仰ったからです、まだ私達は婚約もしていないんですよ、今日はお見合いの場で上手くいけば婚約を結ぶ、そういう日なんです」
「えっ……、既に婚約は決定しているのではないのか?」
「リザード、私はお見合いだとちゃんと話した筈だが?」
「昔から貴方は人の話を聞いていなかったけど、まさか今回も聞いてなかったなんて……」
リザード様のご両親は呆れている。
そう、今日は数あるお見合いの日の1つでしかないのだ。
「いや、私は既に決まっているものと……」
「決まっていませんし、貴方と婚約するつもりなんて全くございません」
「なんでっ!?」
「たった今やらかしたからだろうが馬鹿者っ!!」
候爵様がリザード様の頭にゲンコツを喰らわせていた。
頭を抱えて倒れるリザード様を見ても私は何とも思わなかった。
「エリアーヌ嬢、ウェイン侯爵並びに婦人誠に申し訳無かった! 今回の話は無かった事にしてこの馬鹿は再教育するので」
「まぁ実害は無かったので……」
お父様も頷くしかなかった。
リザード様はズルズルと引きずられながらその場を去っていった。
「……どうしてあんな事を言ったんですかね?」
「さぁ、今どきの若者の考えはわからんな」
お見合いの場は嵐の去った後の静けさとなっていた。
後日、レイスン候爵が謝罪の為訪れてリザード様があんな事を言った理由がわかった。
「どうも友人達に悪い知恵を入れられたみたいで……、『こういうのは最初にどっちが上かわからせておいた方が良い』と言われたそうです……」
汗をかきながら話したレイスン候爵は苦い顔をしていた。
「……その友人方も恋愛経験が無いのかしら?」
少なくとも絶対に言ってはいけない台詞の1つだと思う。
「息子は全寮制の騎士学院に叩き入れましたので2度と顔は見せないようにしますのでご安心ください」
「まぁ、これからもそれなりに良い関係を築いていきましょう」
隣同士ですからね、なるべく穏便な関係にするのは大事です。
その後、私は別の方とお見合いして意気投合して婚約、結婚しました。
で、この時の事を旦那様に話したら
「そういえば、そういう考え方をする令息が確かにいたよ」
「そうなんですか?」
「うん、まぁ大体上手くいかなくて親から怒られたり悪い時は勘当されたりした奴もいたよ」
たった一言で運命が変わる、言葉の重みて大事なんだなぁ、と思いました。




