再会
2年間が長いのか短いのか莉子には分からない。
「恋愛脳」だと陽菜は言った。
⦅私の頭も、真麻と同じだわ。恋愛脳だわ。⦆と莉子は思った。
懐かしい声、姿……胸が苦しくなるほど聞きたかった声、見たかった姿だった。
これから会社で北斗に会う。
仕事で会う時は必ずやって来る。
それも早々のことだろう。
辛くとも日々を難なく過ごしたいと莉子は思った。
⦅もう二度と転職はしたくない。⦆それが莉子の想いだ。
それから直ぐだった。
仕事ではない所で、上原北斗に声を掛けられたのだ。
「莉子!」
それは懐かしい声だった。
懐かしい言葉だった。
振り向いて上原北斗の姿を認めた莉子は硬直してしまった。
⦅うそ……なんで………。⦆
「莉子。」と再度呼びかけられた時には、北斗は莉子の目の前だった。
走って来たのだろう……北斗は息を切らせていた。
息を整えながら、北斗は言った。
「ちょっと待って……息、切れたから………。」
息が整ったのか……北斗は言葉を続けた。
「莉子、元気だったか?
残業が多いけど、身体は大丈夫か?」
まるで、何も無かったかのように話し掛ける北斗が、莉子には信じられなかった。
それでも嬉しく思う気持ちが莉子には残っていた。
涙が出ても呆然として立ち尽くしていると、北斗が莉子のその涙を拭った。
「泣くなよ……莉子……頼むから……。」
⦅何を言ってるの?⦆
「莉子と会えて話せて、俺は嬉しい。」
⦅……あの時、話してもくれなかったのに……なんで、今……。⦆
「莉子、歩こう。どこかの店に入らないか?」
⦅…………なんで、なんで……なのよ……。⦆
北斗が莉子の手を取った。
そして、莉子と手を繋ぎながら歩いていく。
⦅どこへ行くの? どこへ連れてくの?⦆と思っても、何故だか莉子は言葉が出ない。
まるで、昔に戻ったかのように、恋人同士のように、北斗は莉子を連れて歩いた。
そして、電車に乗った。
⦅どこへ行くの? どこへ?⦆「……どこへ?」
「やっと声が聞けた。」
⦅何を…………。⦆「……………………。」
「……行けば、着いたら分かるから……。
………莉子、会社を辞めたの……俺のせいだよな。」
⦅!…………何を………今更………。⦆「………………。」
「もう、俺とは話したくない?」
「……………………なんて……言ったら……いいの?」
「莉子の気持ちを知りたい。」
「…………なんで?…………今更…………。」
「そうだよな。今更……だよな。
でも、知りたいんだ。
もうすぐ着くから……今から3つ先の駅で降りるよ。」
「えっ?」
それから、二人は言葉を交わさず車窓の流れる景色を眺めていた。
北斗は莉子の手を離さなかった。
離さずに景色を眺めていた。
莉子は北斗の手に左手を委ねたままだった。




