二人で囲む食卓
昼休みに友達に連絡した。
あったことを全てLINEで伝えた。
高校の時からの親友の正岡麗華にも、そして同期の田島真麻、谷口陽菜、川村花蓮にもメッセージを送った。
「こんにちは。
昨日、北斗さんに会いました。
偶然だよ。偶然に会ったの。
それで、色々話せました。
全て納得できたかどうかって聞かれたら、う~~ん?ってのが本音。
それでも、会えたこと自体が嬉しかったの。
今日も仕事が終わったら会いに行きます。
これからのことを話したいって言ってくれてるから……。
今は会いたい気持ちが勝ってるので、会いに行きます。
それから後の事は今は分からないです。
また連絡します。
いつも心配掛けてばっかで、ほんとゴメンなさい。
では、またね~。」
「莉子が決めたことは応援するからね。頑張れ!←何に対してかな?
自分でも分かんないや。でも、頑張れ! from麗華」
麗華に送ったものと同じ内容のメッセージを同期にも送った。
「莉子が後悔しないことを望んでる。」
「私も同じだよぉ~。」
「以下同文!……但し、上原さんには言っといて!
『莉子をまた泣かせたら、絶対に許さない!』って!
必ず、言っといて!」
「禿同!」
「おお―――っ! 『絶対に! 絶対に!』って!
幸せにして欲しいって伝えてよね。」
「まだ、戻るって決まった訳じゃないよ。」
「そなの?」
「戻るに決まってるわ。莉子、上原さん一筋だったじゃない。」
「そよね。まぁ後悔しないようにね。今度こそ!」
「ありがと。また連絡するね。」
「おお! 待ってるよ。」
「じゃあ、それまでは仕事に専念すべし!」
「佳き連絡を待っておりまするぞ。」
莉子はスマホの画面を見つめた。
⦅両親には……何もかも心を決めてから伝えよう。⦆と思いながら、目線を前に向けてパソコンと向き合った。
仕事を終えて、莉子は北斗の家に行った。
インターフォンを鳴らしても北斗の返事が無かった。
莉子は北斗から預かった鍵で開けて北斗の家に入った。
北斗の家に向かう途中でスーパーにより食材を買った。
その食材で北斗の家のキッチンに立った。
不思議な気持ちだった。
23歳から付き合って25歳で別れるまで、北斗の家のキッチンで何度も料理を作った。
二人で作ったことも多かった。
北斗が作ってくれたことも多かった。
そんな風に感じながら料理を作って、北斗の帰りを待っていた。
玄関ドアが開く音がした。
玄関から「莉子?」と北斗の声がした。
莉子は懐かしくて涙が出てきた。
泣きながら玄関に向かっていた。
「莉子! どうしたんだ?」と北斗が言って、莉子を抱き締めた。
莉子をリビングのソファーに座らせた北斗は、莉子が落ち着くまで優しく抱き締めてくれていた。
「ごめんなさい。なんか……若かった頃みたいで……涙が……
何故だか分かんないの……。」
「うん。俺も泣きそうなんだ。
昔みたいに莉子が俺の家に居るんだ。
……分かれたことが嘘みたいに思えた。」
「………あ……ご飯作ったんだけど、食べてきた?」
「ううん。食べてない。
………えっ? 作ってくれた? ほんとに?」
「うん、作ったよ。
北斗さんが好きだったブリ大根だけど……。」
「ブリ大根!」
「いいかな?」
「もう! 最高! ありがとう。ほんとにありがとう。
俺……莉子が来てくれただけで、もう、めっちゃ嬉しいのに……。
莉子の手料理まで食べられるなんて……。」
「そんな大袈裟だよ。」
「大袈裟じゃない。本音だ。
ケニアでも夢に見たんだ。莉子の手料理……。」
「嘘っ! 奥様が居る人が言う言葉じゃないわ。」
「今はもう居ないよ……ってか、離婚してから女っけ無いんですけどぉ。」
「そうなの?」
「そうだよ。」
「……ねぇ、食べてくれる?」
「もちのろんよ。頂きます。」
二人でゆっくり話しながら夕食を終えて、紅茶を飲みながら「これからのこと」を話し合った。




