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二人の時間

北斗も莉子も年齢を重ねて変わってしまった。

外見も変わったが、内面も変わった。

北斗が帰国してからの再会は三度目である。

再会の度に莉子の心は揺れた。

その都度、「執着」なのか「恋の残り火」なのか自問して来た。

その答えは出なかった。

ただ一つ分かったことがあった。

莉子には北斗しか居なかったこと、そして、それは今も続いていることだった。

あの別れの日の悪夢は、今も見ることがある。

それが、答えなのだと莉子は思った。

食事をしている間、まるで付き合っていた頃のような感覚に陥った。

食事を終えて帰る時、莉子は⦅帰りたくない。⦆と思った。


「足立さん、前に『莉子って呼ばないで!』って言われてたのに

 今日『莉子』って呼んでしまって申し訳なかった。

 ……もし………否、何でも無い。」

「なぁに? もし……何なの?」

「何でも無いよ。ごめん、気にしないで。」

「またなのね。」

「何が?」

「勝手に決めること……違うな……話してくれないこと。

 そう、話してくれないこと。」

「そうだったか?」

「うん。私、何?って聞いたのに……。」

「それは……悪かった。」

「もし……の後の言葉を聞かせて。」

「あ………………。」

「何? 言えないようなこと?」

「違う! 違うけど勇気が無い。」

「勇気を振り絞らないといけないの?」

「……なんか変わったね。」

「えっ?」

「いい意味で強くなった。」

「……そりゃ、色々あったから……。

 でも、決めたのよ。

 聞きたい時はちゃんと聞こうって……。」

「俺は変わってないのかな?」

「変わった所もあるわ。」

「そうか?」

「うん。」

「変わらないとな。俺も………。

 足立さん、LINEでメッセージを送ってもいいかな?」

「……ブロック解除したの?」

「ブロックしてないままだけど……。」

「じゃあ、なんで?

 なんで、私のメッセージを読んでくれなかったの?」

「俺、読む勇気が無かった。ごめん。」

「本当?」

「本当だよ。情けないことに…今も臆病だ。ビビってる。」

「そう……いつも自信たっぷりだと思ってた。違うのね。」

「足立さんの前では無理してたから……。」

「そうだったの?」

「そうだったんだ。今もだけど……。」

「あの………私のメッセージだけど…… 

 ケニアに行っても読んでくれなかったのね。」

「あちらでは、仕事用のスマホを主に使ってたから……。

 個人のスマホは、ほとんど見なかったんだ。

 親も居ないし……施設の時の友達も、大学の時の友達も……行く前に連絡した後

 は、連絡しなかったから。

 それに……余裕が全く無かった。忙しくて……。

 ごめん、本音を言うよ。

 り……足立さんのメッセージは読めなかった。

 詠む勇気が無かった。」

「奥様とは?」

「会社のスマホだったな。

 なんとなく、仕事で出会った最初のままだったな。」

「そうだったんだ。」

「……あの……いいかな? LINE……。」

「いいわ。北斗さん。」

「えっ? 北斗って呼んでくれるのか?」

「あ………なんで、呼んだんだろう?」

「嬉しいよ! ありがとう。

 ……莉子って呼んでもいいか?」

「……うん、いいよ。」


北斗は「しゃぁ―――っ。」と小さな声で言った。

声と同時にコッソリと拳を握りしめていた。

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