変わらない日常
恋は気付いたら落ちてしまい、その終わりは人によって違う。
ただ告げられた方にとっては突然だと感じる場合もあるようだ。
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今年35歳になった莉子は、出産して復帰した後輩を先に帰らせて残業をしている。
彼女、山下穂香は莉子よりも10歳若い25歳の新米ママ。
子育てが大変だということを友人知人から聞いている莉子は、穂香が復帰したら出来る限りサポートしようと決めていた。
一秒でも早く保育園に迎えに行って貰いたいと思い、今日も穂香の仕事で莉子が出来る分を手伝っている。
残業は手伝うから、残るしかないのだ。
周囲から見れば「やることない!」と思われてもいいと思っている。
⦅そうよ。残業したら手当も貰える。
誰かがやらないと終わらないだけなんだから……。
…………………それに、家の帰るのが辛いから……残業出来ていいの。
仕事している間は何も考えなくていいから……寂しさを感じずに済むもの。⦆
「足立さん、まだ……帰らないんですか?」
「ええ、まだ終わらなくって……。」
「それ、山下さんの仕事ですよね。」
「うん。そうだけど……。」
「しなくても……いいんじゃ……。」
「誰かがしないと終わらないからね。」
「でも……。」
「大丈夫よ。私はお一人様だから、さ。
こうして残業代を稼ぐのよ。」
「………………。」
「気にしないで! それよりも気をつけて帰ってね。」
「はい。お先に失礼します。」
「お疲れ様。」
「お疲れ様でした。」
「お先! まだ残るのか?」
「はい。もう少し……。」
「無理するなよ。」
何人かに声を掛けられて、係長にも声を掛けられて、気が付くと、フロアには誰も居なくなった。
一人きりのフロアで仕事をした。
静けさの中に莉子一人がパソコンの前に座っている。
どれくらい経っただろうか……やっと仕事を終えて時間を見れば10時になっていた。
⦅帰ったら、直ぐに寝ちゃうかな?
今日はシャワーでいいや。
ご飯は……もう食べなくてもいいかな……面倒だわ。
あぁ……疲れた。
このまま寝てしまいたいなぁ……。⦆
会社を出て電車の乗り家路を急ぐ。
玄関の鍵を開けて「ただいま。」と言う。
誰も返事などしない。
居ないのだから……。
それでも、誰も居ない家に「ただいま。」と言うと、莉子は我が家に帰って来たのだと実感するような気がするのだ。
真っ暗な家に灯りを点ける。
冷蔵庫を開けると「あれっ? 何も無い? 仕方ないか……今日は冷食のパスタにでもしよう。」と冷凍食品のパスタを取り出して電子レンジで解凍した。
「レンチンは楽でいいわぁ~。
でも、いつからレンチンって言うようになったのかな?」
そう一人きりの家で誰も聞いてくれる人が居ないのに声に出して言ってしまう。
そして、食事を終えてシャワーを浴びベッドに倒れるように横になった。
「疲れた。………おやすみ……。」
瞼は直ぐに重くなって、莉子は夢の中へ入った。




