第7話 セレスティア争奪戦 ~恋のトライアングル、勃発~
魔力暴走事件から数日後。
王立魔術学園は、未曾有の危機から救われた安堵と、そして、一人の令嬢が起こした奇跡の話題で持ちきりだった。
セレスティア・ローゼンベルクは、悪役令嬢から一転、学園の英雄へと祭り上げられていた。
その名は、学園中の生徒たちの口から口へと語り継がれ、伝説となっていた。
「聞いたか?セレスティア様が、たった一人で暴走を鎮めたらしいぞ。あのフェリクス様の、制御不能な魔力をだぞ!」
「ええ!なんでも、荒れ狂う魔力の渦の中を、眉一つ動かさずに歩いて行ったとか…まるで、女神のようだったと!」
「最後は、恐怖に震えるフェリクス様を、優しく抱きしめて…きゃあ、素敵!あのセレスティア様が、あんなにも慈愛に満ちた表情をされるなんて…!」
尾ひれどころか、背びれや胸びれ、さらには七色の羽まで生えたような噂は瞬く間に学園中を駆け巡っていた。
彼女の行動は、生徒たちの間で様々な解釈を生み、その度に美化され、英雄譚として語り継がれていく。
特に、女子生徒からの人気は爆発的で、彼女の非公式ファンクラブは、学園最大規模の組織へと成長していた。彼女の「名言集」や「麗しきお姿集」は、もはや学園のバイブルと化していた。
当の本人は、そんな熱狂を他人事のように感じながら、げっそりとしていた。
彼女の脳内は、常に「どうしてこうなった」という疑問符で埋め尽くされている。
(そもそも、宝塚では後輩がトラブルを起こしたら、上級生が庇うのは当たり前じゃないの!舞台は一人で作るものじゃない、全員で作り上げるものなのよ!別に英雄になろうなんてこれっぽっちも思ってないのに!むしろ、目立たないように、空気のように生きて、断罪フラグを回避するはずだったのに…!)
どうしてこうなった。
どうして、ただ静かに卒業したいだけなのに、次から次へと面倒事が舞い込んでくるのか。
彼女の『脱破滅計画~空気のように生きる~』は、もはや塵も残さず完全に崩壊した。
いや、崩壊どころか、その残骸の上に、巨大な「英雄」という名のモニュメントが築き上げられていた。
しかし、セレスティアの心の中では、そのモニュメントは、いつ崩れ落ちるか分からない、不安定な砂の城のように感じられていた。
いつ、アレクサンダー王子が「悪役令嬢セレスティア・ローゼンベルク!貴様を断罪する!」と叫び出すか、彼女は常に怯えていたのだ。
廊下を歩けば、以前にも増して道が開けられ、生徒たちから尊敬と憧れの眼差しを一身に浴びる。
その視線は、まるで舞台の上のスポットライトのように、セレスティアを照らし出す。
彼女は、その視線の重さに、思わず息を詰めた。
食堂に行けば、彼女の周りだけが、まるで後光が差しているかのように、聖域と化す。
誰も彼女の席に近づこうとせず、遠巻きに彼女を崇拝する。
その光景は、まるで、神殿で祀られる女神のようだった。
「セレスティア様、本日もお美しい…!あの凛としたお姿、まさに我らの希望の星ですわ!」
「セレスティア様がいらっしゃるだけで、この学園の空気が清らかになりますわ!」
(もうやめて!私のライフはゼロよ!お願いだから、私を一人にして!このままじゃ、胃に穴が開いちゃうわ!断罪される前に、胃潰瘍で倒れてしまうわ!)
内心で何度叫んでも、その声は誰にも届かない。むしろ、その憂いを帯びた表情が、「英雄の苦悩」として、さらに生徒たちの心を鷲掴みにしているという、悪循環の極みにあった。
彼女の困惑は、彼らにとっては「深遠な思索」であり、彼女の疲労は「人知を超えた力を行使した代償」と解釈されていた。
悪役令嬢として断罪される未来を回避したかっただけなのに、気づけば、英雄として歴史に名を刻みそうな勢いだ。
本来のゲームシナリオでは、セレスティアはヒロインをいじめ抜き、王子から断罪され、破滅する運命だった。
しかし、今の彼女は、学園の生徒たちから絶大な支持を得ている。
王子アレクサンダーも、騎士団長子息ガブリエルも、そして天才魔術師フェリクスも、彼女に強い関心を抱き、その行動を注視している。
セレスティアは、自分の意図とは全く裏腹に、どんどん変な方へ進んでいくこの現状を、ただただ呪うことしかできないのだった。
彼女の「脱破滅計画」は、完全に失敗に終わった。
しかし、その失敗は、彼女にとって、そしてこの世界の住人にとって、最良の結果をもたらしていた。
彼女は、まだそのことに気づいていない。
そして、この学園の英雄となった彼女を巡り、新たな波乱が巻き起こることを、彼女はまだ知る由もなかった。
彼女は、今日も明日も、ひたすら空気のように、壁のように、目立たないように生きることを誓うのだった。
それが、彼女にとっての、唯一の「破滅回避」の道だと信じて。
◇
英雄となってしまったセレスティアの日常は、一変した。
特に、彼女のティータイムは、かつての平穏な時間とは似ても似つかない、奇妙な緊張感に包まれるようになっていた。
学園では、高位の貴族の子息令嬢たちが、社交の一環として頻繁にお茶会を催すのが慣例となっていた。
それは、親睦を深める場であり、同時に、自身の品格や教養を示す場でもあった。
そして、学園の英雄として、そして王子の婚約者として、セレスティアもまた、その社交の渦に巻き込まれることになったのだ。
「セレスティア、この新しい茶葉は東方から取り寄せたものだ。君のために、特別にね」
学園の美しいテラス。色とりどりの花々が咲き誇り、鳥のさえずりが聞こえる、絵画のような空間。
今日の午後も、アレクサンダーが、完璧な王子スマイルで紅茶を勧めてくる。
彼の笑顔は、周囲の女子生徒たちの熱い視線を集め、その視線は、そのままセレスティアへと注がれる。
魔力暴走事件以来、彼は「婚約者として当然の権利だ」と主張し、毎日このようにお茶会へ招待(という名の強制連行)してくるのだ。
セレスティアは、彼の行動を「婚約者としての義務」と解釈し、彼が自分を「悪役令嬢」として監視しているのだと、頑なに信じていた。
しかし、周囲の生徒たちにとっては、それは「学園の王子様と、その婚約者である学園の英雄が、優雅にお茶会を楽しんでいる」という、絵になる光景でしかなかった。
「まあ、ありがとうございます、殿下。いつもすみません」
セレスティアが、胃の痛みを感じながらも、淑女の笑みでカップに手を伸ばそうとした、その時。
彼女の脳裏には、常に「脱破滅計画」の文字がちらついていた。目立たず、空気のように。しかし、現実は、彼女の意図とは真逆の方向へと進んでいた。彼女の周りには、常に人だかりができ、その視線は、まるで舞台のスポットライトのように、彼女を照らし出す。彼女は、その視線の重さに、思わず息を詰めた。
「失礼します」
凛とした声と共に、スッと横から伸びてきた手が、そのカップを制した。
ガブリエルである。
彼は「セレスティア様がお茶を飲まれる間、俺が毒見と警護を!」と宣言して以来、必ずこのお茶会に同席するようになっていた。
彼の真剣な眼差しは、周囲の生徒たちを威圧し、彼らの熱い視線を一時的に逸らす効果があった。
セレスティアは、彼の行動を「騎士としての義務」と解釈し、彼が自分を「護るべき対象」として見ているのだと、これまた頑なに信じていた。
「ナイトレイ、君は少し過保護すぎるのではないか?」
アレクサンダーが、楽しそうに、しかし目の奥は笑っていない表情で言う。
彼の言葉には、ガブリエルへの牽制と、セレスティアへの独占欲が入り混じっていた。
彼は、セレスティアの反応を試すように、挑戦的な笑みを浮かべていた。
彼にとって、セレスティアは、まだ「謎」の存在。
その謎を解き明かしたいという好奇心と、婚約者としての「所有欲」が、彼の行動を突き動かしていた。
「万が一ということがありますので」
ガブリエルは全く動じず、真剣な顔で紅茶を一口飲むと、「問題ありません」とだけ言って、カップをセレスティアの前に恭しく戻した。彼の表情は、まるで忠実な番犬のようだ。その真剣な眼差しは、セレスティアを護るという彼の固い決意を示していた。
(この空気なんなんですわ!一体、何が起こっているの!?)
セレスティアは内心で困惑していた。アレクサンダーとガブリエルの間に流れる、ピリピリとした緊張感。
周囲の女子生徒たちの、熱狂的な視線。そして、自分に向けられる、まるで王子様を見るかのような憧れの眼差し。
彼女の「脱破滅計画」は、もはや完全に破綻している。
彼女はまだ、自分が学園のアイドルとして、そして「王子様令嬢」として、絶大な人気を博していることに、全く気づいていなかった。
この時点で、すでに彼女の平穏なティータイムは崩壊しているのだが、本当の地獄は、ここから始まるのが常だった。
彼女は、今日も明日も、ひたすら空気のように、壁のように、目立たないように生きることを誓うのだった。
それが、彼女にとっての、唯一の「破滅回避」の道だと信じて。
ガブリエルが毒見を終え、恭しくカップをセレスティアの前に戻した、その時だった。
ふわりと、甘く、しかしどこか冷たい香りがした。
いつの間にか、セレスティアの左隣の席に、天才魔術師フェリクスが音もなく座っていたのだ。
彼の銀色の髪は、窓から差し込む陽光を反射して淡く輝き、その無表情な顔は、まるで精巧な人形のようだった。
彼は、何も言わずに、しかし有無を言わせぬ圧力で、セレスティアの前に小さなマカロンの皿を差し出す。
その皿には、色とりどりのマカロンが宝石のように並べられていた。
彼の瞳は、アレクサンダーとガブリエルをちらりと見やり、微かな敵意を宿しているように見えた。
(フェリクス君まで…!)
これで、役者は揃ってしまった。
正面に王子、右に騎士、左に天才魔術師。
全員が、セレスティアだけを見つめている。
その視線は、まるで舞台のスポットライトのように、セレスティアを照らし出す。
彼女は、その視線の重さに、思わず息を詰めた。彼女の周りだけ、空気が重く、まるで粘着質な糸で絡め取られているかのようだ。
紅茶の湯気すら、その重さに耐えきれず、上へと昇るのを躊躇しているように見えた。
(なんで紅茶を飲むだけで、こんなに空気が重いの!?アレクサンダー殿下は完璧な笑顔だけど目が笑ってないし、ガブリエル様は忠犬っていうか番犬モードだし、フェリクス君は小動物の威嚇みたいで可愛いけど目が据わってるし…!私、もしかして何かの天下一武道会にでも紛れ込んじゃったの!?)
「ナイトレイ、君の忠誠心は結構だが、私の婚約者に対して無礼ではないか?彼女の隣に座る権利は、私にあるはずだが?」
アレクサンダーが、笑顔のまま、低い声でガブリエルを牽制する。
その声には、明確な独占欲が宿っている。彼の瞳は、ガブリエルを射抜くように見つめ、その奥には、わずかな怒りの色が宿っていた。
彼は、セレスティアの隣という「特等席」を、誰にも譲るつもりはなかった。
「セレスティア様の安全が最優先です。
たとえ、殿下であろうとも、彼女に不快な思いをさせることは許されません。そして、彼女の隣を護るのが、私の使命です」
ガブリエルも、一歩も引かない。
彼の声は、低く、しかし揺るぎない決意に満ちていた。
彼の瞳は、アレクサンダーをまっすぐに見つめ、その奥には、セレスティアへの絶対的な忠誠心が燃え盛っていた。
彼は、セレスティアを護るためならば、いかなる相手にも臆することはない。
「……こっちのほうが、甘い」
フェリクスが、ぼそりと呟き、マカロンの皿をさらにセレスティアに近づける。
その瞳は、アレクサンダーとガブリエルを「敵」と認識し、冷たい光を放っていた。
彼の言葉は、まるで二人の間に割って入るかのように、静かに、しかし確実に響き渡る。
彼は、セレスティアの注意を自分に向けさせようと、必死だった。
彼の心に芽生えた独占欲は、彼を突き動かす原動力となっていた。
バチバチバチッ!
三者三様の、殺気にも似た視線が、テーブルの上で激しく交錯する。
それは、まるで目に見えない剣がぶつかり合うかのような、激しい火花。
紅茶の香りも、マカロンの甘い匂いも、この重すぎる空気の前では意味をなさない。
周囲の女子生徒たちは、そのただならぬ雰囲気に、息を潜めて見守っている。
彼女たちにとっては、それはまるで、舞台の上の恋愛劇を見ているかのような、スリリングな光景だった。
(もう帰りたい…!何なのこのピリピリした空気は!まるで、私が何か悪いことをしたみたいじゃない!お願いだから、普通にお茶を飲ませてちょうだい!)
何もわかっていない悪役令嬢は、ただ一人、この地獄のようなティータイムから、どうやって無事に(そして優雅に)逃げ出すかだけを、必死に考えていたのだった。
彼女の「脱破滅計画」は、もはや完全に破綻している。
しかし、彼女はまだ、自分が学園のアイドルとして、そして「王子様令嬢」として、絶大な人気を博していることに、全く気づいていなかった。そして、この三人の攻略対象たちが、彼女を巡って、水面下で激しいバトルを繰り広げていることにも、彼女はまだ知る由もなかった。
◇
王子アレクサンダー、騎士ガブリエル、そして天才魔術師フェリクス。
三者三様の熱い視線が交錯する、ピリピリとしたお茶会の空気が日常と化した、ある日のこと。
セレスティアは、今日も胃の痛みに耐えながら、彼らの間で繰り広げられる無言の牽制合戦をやり過ごしていた。
彼女にとって、このお茶会は、もはや社交の場ではなく、精神をすり減らす苦行でしかなかった。しかし、学園の英雄として、そして王子の婚約者として、このお茶会から逃れる術はなかった。
彼女の『脱破滅計画』は、もはや完全に破綻している。
そんな日常の中、学園の掲示板に、一枚の大きなポスターが張り出された。
【王立魔術学園祭、開催決定!メインイベント:クラス対抗演劇会!】
一学期の最後には学園祭がある。一年生はそこでクラス対抗演劇会が決定したのだ。
その告知に、学園は一気にお祭りムードに包まれる。
生徒たちは、どのクラスがどんな演目をやるのか、誰が主役を演じるのか、といった話題で持ちきりだ。
そして、その熱に真っ先にあてられたのが、セレスティアの熱烈なファン、リリアだった。
「セレス様!ご覧になりましたか、学園祭です!今年のメインイベントは、クラス対抗演劇会だそうです!」
リリアは、興奮で頬を上気させながら、セレスティアの元へ駆け寄ってきた。
その瞳は、希望に満ちてキラキラと輝いている。
彼女の純粋な熱意に、セレスティアは思わずたじろいだ。
「セレス様!私、セレス様と一緒の舞台に立ちたいです!セレス様が王子様役をされるなら、私が姫役を…!いえ、セレス様が姫役をされるなら、私が王子様役を…!あ、でも、セレス様はやっぱり王子様が一番お似合いですわ!」
そのキラキラした瞳で、まっすぐに見つめられる。
リリアの言葉は、セレスティアの心に、前世の舞台への情熱を呼び起こす。
しかし、同時に、彼女の『脱破滅計画』を思い出させる。
(無理無理無理!絶対に無理!演劇など、目立つことの最たるものではないか。これ以上、悪目立ちするのは絶対に避けたい。これ以上、私の平穏を乱さないでちょうだい!)
そう断ろうと口を開きかけた、その時だった。
近くにいたクラスメイトの令嬢たちの、嘲笑うような声が聞こえてきた。
彼女たちは、リリアの言葉を鼻で笑い、蔑むような視線を向けていた。
「まあ、お聞きになりました?リリアさんったら、セレスティア様と同じ舞台に立ちたいですって。身の程知らずも甚だしいですわね。平民のあなたなんかが、セレスティア様と同じ舞台に立てるわけないでしょう?舞台は、選ばれた者だけが立つ場所。ましてや、学園祭のメインイベントともなれば、家柄も、品格も、全てが問われるのですから」
その言葉は、リリアの心を傷つけるには十分だった。
彼女の顔から、さっと血の気が引いていく。
瞳に、絶望の色が浮かぶ。
彼女は、ただ純粋に、セレスティアと同じ舞台に立ちたいと願っただけなのに。
そして、その言葉は、セレスティアの中の、決して触れてはならないスイッチを押すにも、十分すぎた。
カチン、と。セレスティアの中で、何かがはっきりと音を立てて切り替わる。
その言葉は、リリアに向けられたものだけではなかった。
それは、前世で、ただ舞台に憧れる一人の少女だった橘麗の、魂を否定する言葉でもあった。
宝塚大劇団。
そこは、家柄や血筋ではなく、ただひたすらに芸を磨き、努力を重ねた者だけが、あの夢の舞台に立つことを許される場所だった。
彼女自身、決して恵まれた環境に生まれたわけではない。
ただ、舞台への情熱と、血の滲むような努力だけで、あの頂点まで駆け上がったのだ。
そんな彼女にとって、「身の程知らず」「平民だから無理」という言葉は、自らの人生そのものを否定されたような、耐え難い侮辱だった。
才能と努力を蔑ろにし、生まれだけで全てを決めつけようとする傲慢さ。
それは、彼女が最も嫌悪する価値観だった。
彼女は、ゆっくりと立ち上がると、嘲笑う令嬢たちの方へと歩み寄った。
その足取りは、まるで舞台の上の主役が、堂々とセンターへと進み出るかのようだ。
そして、彼女たちの前に立つと、ふっ、と不敵な笑みを浮かべた。
その笑顔は、悪役令嬢のそれではなく、舞台の上のトップスターが、観客を魅了する時に見せる、自信に満ちた、そしてどこか挑戦的な笑みだった。
「――面白いことを言うじゃないか」
その声は、低く、どこまでも響く、トップスターの声だった。
その声には、舞台の上の空気を一瞬で支配するような、圧倒的な力があった。
学園の英雄として、生徒たちの絶大な支持を得ている彼女の言葉は、もはや絶対的な力を持っていた。
彼女のカリスマ性は、単なる噂話ではなく、生徒たちの心を掴む確かな「舞台掌握力」として、この学園に浸透していたのだ。
「誰が舞台に立つか、それを決めるのは観客と…この私だ。そして、私は、才能と努力を惜しまない者に、舞台の扉を開くことを躊躇わない」
セレスティアの圧倒的なオーラに、令嬢たちは「ひっ」と息を呑む。
彼女たちの顔から、さっと血の気が引いていく。
彼女たちは、自分たちが触れてはならないものに触れてしまったことを、今、ようやく理解したのだ。
彼女の瞳には、再び、あの舞台の上で輝いていた、情熱の炎が燃え上がっていた。
それは、彼女が「脱破滅計画」のために封印しようとしていた、舞台人としての魂。
しかし、その魂は、リリアの純粋な願いと、令嬢たちの傲慢な言葉によって、再び呼び覚まされたのだ。
恋のアドリブは、もう終わり。、次なる舞台の幕は、今、静かに上がろうとしていた。
学園祭の演劇という新たな舞台で、セレスティアがどのような輝きを放つのか。
そして、彼女を巡る攻略対象たちの恋の行方は。
物語は、いよいよクライマックスへと向かう。セレスティアの新たな「舞台」が、今、始まる。
平日の朝7時に1話ずつ投稿していきますので、よろしくお願いします。
一応全12話で完結しようと思っていますが、ご好評いただけたらもっと続けていこうと思っているので、
リアクションをいただけると嬉しいです。